私の友達に、せんせーという人がいる。
その人は、なんというかなんでも知ってて、いうなれば人間Googleなのだ。
しかし、それだけでなく、せんせーは色々秘密とかも知ってる。
例えばせんせーが現国の教師がカツラだとうっかり言ってしまったときは、その教師は二週間休んだ。
その他諸々。せんせーは完璧だから、畏怖と尊敬の念をこめてせんせーと呼ばれている。
最後のは言ってみたかっただけです、すみません。
畏怖と尊敬の念をこめてって言いたくならない?「世は、大海賊時代」と並んで言いたい言葉ランキング五位だよ。
閑話休題。
その私の友達「せんせー」について、実は私、全く知らないのだ。
せんせーは私のこと良く知ってるのに、私は知らない。
例えばせんせーは私のはとこの名前を知っているけど、私はせんせーの本名を知らない。
名簿を見ても、せんせーの顔写真の下には、ワープロ文字で
せんせー
と書いてあるのだ。
本人に聞いても答えてくれないし、誰も知らないし、だから、せんせーは昔からせんせーなのだ。
友達なのに本名さえ知らないという事実が私の心の中でモヤモヤしてモヤモヤしてモヤモヤして、ついに今日破裂!
我慢できない!
…という訳で、今日一日せんせーを調べてみることにする。
まずは聞き込み。
一人目、ツンデレ
「え?せんせーについて?」
「うん。ツンデレ、私よりもせんせーとの付き合い長いし、なんか知ってるかなって」
「ツンデレじゃないし!…で、えーとせんせーについてかぁ」
ツンデレが上を向きながら頬を掻く。
上を見ながら何かを思い出そうとする人は、視覚タイプ、、聴覚?触覚だっけ?うーん、そう、五感タイプらしい。
五感を使って説明したり、何かを感じたり…あれ、普通じゃない?それ。
「私、実はせんせーの名前すら知らなくて、調べてみようかなって」
「せんせー……ごめんミィ」
「え…!?」
ここで謝るってことはつまり
「私も、せんせーの名前知らないわ」
やっぱりいいいいい!
「ほんとっっ?」
私の知る限り、ツンデレとせんせーは三年の付き合いだったはずなんだけど…。
「うん。あいつ、自分のことなんにも喋んないんだよ」
せんせー、、、。どんだけ防備凄いんだ。プライバシーの保護しすぎで逮捕されるレベルだよ。
「分かった。ありがとツンデレ。。。。。…使えねえ奴」
「あぁん!?ミィなんつった?」
「ツンデレは可愛いなって。じゃ、またねー」
怒るツンデレはさておき、私は次の聞き込みに向かった。
しかし
「ごめん知らねーわ」「人間Googleのこと?知らないわ」「ポッター、ヴォルデモートがそこまで迫っております。ドビーは(略)」「もっと熱くなれよ!お米食べろよ!」
と、みんな知らなくてなんの収穫も得られなかった。
「しょうがない。聞き込みはやめて、次のステップに入ろうワトソン君」
「ほぉぉむず。ほぉぉむず(裏声)」
と、一人でやってる私の目の前を、タイミングよくせんせーが通った。
「あ、せんせー」
「あら。ミィさん。奇遇ですね」
せんせーはニコッと笑いながら、挨拶をしてくれる。
ステップ2ではせんせーと話す必要があるので、好都合。
「ステップ2、オペレーションスタート」
小声で私はぼそっ、と呟く。ホームズとワトソン(自称)の一人芝居や今のは、テンションを上げるためにやってる。
特に意味はない。あ、あと「オペレーションスタート」は言いたい言葉ランキング三位。
「ねぇねぇ、今占いやってるんだけどやんない?」
この言葉がステップ2の最初の一手。
説明しよう!ステップ2とはずばり誘導尋問である。自然な流れで名前を明かさせようという作戦なのだ。
ふふ、我ながら妙案。これならどっかの隋の国の参謀になれちゃう。
「へぇ、面白そうですし、一度やりましょうか」
食いついたああああ!私の勝ちだあああ
私はにやける口元を抑えながら、言った。
「名前占いなんだけど…」
「ああ、もう時間です。教室に戻りましょう」
言い終わる前に被せてきたっ!ノートンみたいなセキュリティの高さだ。本当。
この反射神経ならボクシングもできるだろう、せんせー。
「ステップ3、尾行!」
てなわけで私は今、電柱に張り付いている。
せんせーを尾行しているのだ。
「尾行は探偵の基本だぜ、とっつぁん」
また、よくわからない自演をしてみる。何となくである。
そんなことをして、笑ってたら
「せんせー!どこーー!」
見失った。
「なんだと…!?」
なんという阿保。こんなに早く尾行が終わったのは全人類で私がトップだろう。
ギネス記録樹立である。
「あーぁ。なにやってんだ私」
目標を見失ったので、尾行は終わり。私は帰るために後ろに向き直った。
と、その時、一瞬だけ視界にせんせーを見つけた。
「!!!!」
私はすぐさま電柱に身を隠す。
ある程度動悸がおさまったので、電柱からそろー、とせんせーの様子を伺ってみる。
せんせーは、軽い服装に着替えていて、何かを引き連れていた。
私は首輪をつけたそれを凝視してみる。
足が短く、毛深い。顔は細長く、、、なんというか気持ち悪い格好のそれは、せんせーのすぐあとをついてきている。
せんせーもニコニコとソレを連れていて、その様子から、ペットとの散歩だと分かった。
て、落ち着いた感じで実況しているが、実はものすごく動揺している。
実は言葉が出ない位驚いているから、こうやって地の文を長ーーく使っているのだ。
私の知る限り、それはペットではなかった。
とりあえず、首輪をつけてニコニコと散歩する動物ではなかった。
彼女の引き連れていたそれは
「ありくい…!?」
「おはようミィ」
「あ、ツンデレ…」
「?どうしたん。元気ないじゃん」
「いや、世の中は不思議だらけだなって」
「?」
「でもその中で私達は生きてかなきゃいけないんだ」
「えーと、ミィ?」
「せんせー。私にはあなたがわからないよ…。なんで、、、なんでアリクイなんだ…」
「え?せんせー?」
「でも私達は友達さ。そんなことで友情は揺るがないわ」
「は?大丈夫ミィ?」
「せんせーが、アリクイ散歩、最上川。ミィ」
「はぁぁあ????」
世は小説より奇なり。その言葉の意味が分かった。
私はおとなの階段を昇ったのだった。おしまい