私は先輩が嫌いだ。
頭が良くて、ルックスも良くて、評判も良くて、いつも落ち着いていてetc…。全てが完璧だから、嫌いだ。自分が見下されてるような気がして。いや、視界にすら入ってない-文字通り眼中にない、って感じだから。
だから私は先輩に刃向かった。喧嘩を売り続けた。でも先輩はなにを言っても完璧な答えで返してくるから、売り残り続けたわけだが。
そんな先輩は明日、卒業式。その一日前の今日、私は先輩に呼び出されて生徒会室の片づけをしていた。なぜか私だけ呼び出されたのだ。好感度が2下がった。
そんなことをボンヤリと考えながら書類を整理する私に、先輩は話しかけてきた。
「君とこの部屋で話せるのは、今日で終わりか」
「そうですね。先輩が私を呼び出さなければ、今日も話しませんでしたね」
わざと苦々しい顔で返してみる。卒業式前日だろうと、私はこいつが嫌いだ。
「呼び出して正解だったよ」
しかし先輩はサラリと受け流す。
「そもそもなんで私だけ呼び出すんですか。他に手伝ってくれる人いなかったんですか。友達いないんですか」
私は嘲るように先輩に返す。やはり嫌いだからだ。
「一年生は明日来ないだろう。だから今日中に会いたかったんだ。君一人なのは、一年生の知り合いが私には君しかいないからだよ」
でもでもやっぱりサラリと返される。
この余裕がなんかいらつくのだ。

そのまま仕事は終わり、私と会長は対面になるように椅子に座る。

「お疲れさん」

そう言いながら先輩は私に緑茶を渡してくる。

疲れていた私は緑茶を受け取って一口含む。そしてすぐに後悔した。

この緑茶は、私の忌み嫌う先輩が買ったものだということに気づいたからだ。しかし口を付けてしまったから返すわけにもいかない。

仕方なく私は渋々お礼を言う。

すると先輩はニコリと笑って「せっかくの休日に呼び出したのは私だからね。むしろこちらがお礼を言うくらいさ」と完璧すぎる言葉を返してきて、お礼一つろくに言えなかったことが恥ずかしくなった。

そんな葛藤を知ってか知らずか、先輩はこんなことを聞いてきた。

「君は私が嫌いかい?」

私は少し戸惑う。何を今さらそんなことを聞いてくるのだろう。

「嫌いですね」

「なんでだい?」

「完璧なところです」

「へぇ……」

「それに先輩も私のこと嫌いでしょう」

こんな休日に私だけを呼び出した本当の理由なんて、嫌がらせのほかないだろう。

でも先輩の答えは意外なものだった。

「私は君のこと好きだよ」



「私はこの君といるこの空間が好きだったよ」

「何事にも突っかかってくる。そんなことをされたのは初めてだったからね」

「だから君を今日呼び出した。私は君と一日でも長く話していたかった」

「毎日ここに来るのを楽しみにしていたし、、、。」

「、、、。。。、、、。。。。。。、、、、、、、。」

私は途中から聞こえてなかった。

先輩がそんなように自分を思っていたことへの驚きが大きかった。

同時に私は考えていた。



私は先輩のこと嫌いだったのだろうか



Q、今日呼び出しされた時なんで応じたんだろう。

A、生徒会長の呼び出しだったから

Q、私は呼び出されたのが自分一人だったとき、内心喜んでいなかったか。

A、そんなことはない

Q、私はこの先輩といる日常が嫌だった?

A、嫌い

Q、むしろ好んでいなかっただろうか

A、そんなことない

Q、私は明日卒業式ということから目をそらしていなかっただろうか

A、そんなことない

Q、なら先輩が卒業することを喜んでいたか

A、当然

Q、なら目から流れ出る涙はなにか

A、……

Q、この空虚感はなにか

A、………

Q、私は先輩が嫌いなのだろうか

A、……………………

何度となく繰り返される無数の自問自答。

終わりのない自問自答。

しかしこれを終わらせたのは

やっぱり先輩。

「君にはずっと私を嫌いでいて欲しい」





「君にはずっと私を嫌いでいて欲しい」

私は顔を上げる。

「君が私に敵対しようとするのは私を嫌いだからなんだろう?」

私は涙を拭う。

「なら君には私を嫌いでいて欲しい」

私は呼吸を落ち着ける。

「決して私を肯定してはいけない」

私は緑茶のペットボトルで目頭を冷やす。

「私に刃向かい続けて欲しい」

私は立ち上がって窓を開ける。外はもう暗く、入ってくる風が少し冷たかった。

「生徒会長のたった一つの我侭だ」

私は火照った体を風で冷ます。

「君にはずっと私を嫌いでいて欲しい」

私は振り返って笑いながら先輩に言った。

頭が良くて、ルックスも良くて、評判も良くて、いつも落ち着いていて、全てが完璧なところ。

だからやっぱり


私は先輩が嫌いだ。