「ん…あれ?」
目が覚めたら恭一は白い部屋のベッドの上にいた。
「真っ白…。…薬の匂い」
そこで恭一は悟った。
「俺、人体改造されたのか…!?」
恭一に衝撃が走る!!
「んなわけないじゃん、馬鹿じゃないの」
恭一はつっこまれた!!
「ですよねー。て、誰!?」
恭一は声のした方向を見る。そこには
「あぁ…。自己紹介してなかったね、生徒会長だ」
真っ赤な髪をポニーテールにし、切れ長な目で、いかにも八重歯をのぞかせてそうな、美少女が。
「生徒会長…?なんかイメージと違うなぁ」
しかし恭一のイメージしてた生徒会長というものは、もっとおっとりした完全超人の年上お姉さん、という感じだったので違和感が大きすぎる。
「むぅ。なんだよ。幼い容姿だからか。だれが幼い容姿やーー!!」
「いや、君が言ったんじゃないか…」
いきなり騒ぎ出した彼女に恭一はつっこむ。
「んー?君って言ったかい?私は二年生で、生徒会長だよ?」
「あははは。それはないって。からかってるんだろ」
恭一がそう言うと、彼女は、むっとしながら胸ポケットからなにかを取り出した。
黒色の革のカバーに包まれ、表紙に山中高等学校という文字。その下に六角形の模様があるそれは
「生徒手帳?」
「うん。ほら見なさい。二年でしょ」
「あぁ、はい。…というか俺の生徒手帳は赤いし、革じゃないんですが」
恭一の言うとおり、一般生徒の生徒手帳は赤く、革のカバーでもない。
「この黒い生徒手帳こそ生徒会役員の証。そして」
「革のカバーは生徒会長の証、ですか」
「人の台詞を取るなーー!!」
彼女はまた叫ぶ。
「すまんすまん。許せチビっこ」
「チビっこ言うな!!敬語使え!!」
「あははは。すまんすまん」
「うーーっ。いい加減にしろっ!!」
彼女は拳を振り上げる。その小さい拳の最終落下地点はもちろん恭一の左腕。
「ちょ…やめ!?そこは今やばいから!?」
彼はそういいながら右腕で防ぐ。
「うるさいっ!!からかった罰じゃ!!」
すると別の角度から別の拳が飛んでくる。それを彼は左足で防ぐ。
「やめろって!!いや、やめてください!!」
そんな感じで生徒会長と取っ組み合いをしてると、ガララと保健室のドアが開く。
「あれ、椿。いたのかい」
入ってきたのは生徒会役員でありながら、つい数時間前に恭一と入部試験として、模擬戦をした人物である。
「あ…。恭一くん起きたんだね」
「あぁ、はい。おかげさまで」
「紗織か。いや、こいつが新しい生徒会役員というだからな。話にきた」
その言葉に恭一は自分の立場を再確認した。
「…そうか。俺、生徒会に入るのか」
「そうだよ。恭一くんの役職は副会長さ」
「え…と、副会長?」
「まぁ、会長の補佐が専らな仕事になるかな」
「はぁ…。このちびっ子もとい生徒会長の補佐ですか」
「うん。そのちびっ子の補佐」
「ちびっ子言うな!!」
彼女はすまし顔で生徒会長の叫びを無視して続ける。
「そういえば、その腕は大丈夫なのかい?」
「あぁ…まぁ、すぐ治りますよ」
彼女の問いに歯切れ悪く彼は返した。
「えぇ?なんで?中道恭一、お前紗織のをもろに食らってんだぞ」
それを指摘したのは生徒会長の方だった。
「中道か、恭一か、どっちかでお願いします」
「じゃあ中道。なんですぐ治るんだ?」
「えー…と、干渉系体質って知ってますよね?」
「しっているよ。周囲に対し、干渉する特殊体質だろう?通常の特殊体質が自分一人にしか効果が無いのと違って、干渉系は周囲の人間や物に効果を及ぼす。そこの椿もそうだね」
「そうです。まぁ、超能力とも呼ばれてるアレです」
特殊体質と呼ばれる異能が普通に存在するこの世界で超能力と呼ばれる程の能力。それが干渉系体質なのだ。
「で、それがどうしたんだい?」
「はい。…その干渉系の身内がいまして」
「君にかい?こんな小さな区域に干渉系が二人もいるとはね」
「そいつが治癒とか得意なんで…」
「またそれは珍しい能力だね」
「はい。だから、まぁ二週間もすれば治りますよ」
「二週間…!?相当早いな。名前はなんて言うんだい?」
「…五木結衣(いつきゆい)。俺の従姉妹です」
「五木結衣?だれだ?それ」
「ちびっ…生徒会長は知らないですか」
「おい、お前、ちびっ子言い掛けただろ」
恭一の左腕めがけて、拳が振り下ろされる。それを間一髪恭一は右腕で受け止める。
「まぁまぁ椿。椿は病院とか行かないから、知らないかもしれないね。えーと、多分年は恭一くんの一つ下くらいかな?」
「なんだ。しってるのか紗織は。知らないのは私だけか」
「拗ねるなよ、椿。…あまり話したくないかとだったかな?」
紗織は彼に聞いた。彼が一度も顔をあげてないからだ。
「いえ、ただ、あんまり家のことは、話したくないんですよ」
彼は寂しげに笑って言った。
「そんなことより、俺に用があるんじゃないんですか?」
「ん?いや、まぁ副会長にするっていうことを伝えにきただけなんだがな」
「椿…。まだ、これを渡してないだろ。…恭一くん。これが今から君の生徒手帳。身分証とかを移動させておいて」
紗織は恭一に黒い生徒手帳のカバーを手渡す。
「じゃあ、改めまして。藤咲紗織、生徒会会計だ」
「高坂椿。生徒会長だっ!!」
恭一はこうして山中生徒会に正式入部(?)したのだ。

入学式翌日。恭一の周りには沢山のクラスメートが集まっていた。
「大丈夫か!?て、腕折ったのかよ!?」
「なぁ、あの藤咲先輩を口説いたんだって!?」
「ハーレムって本当!?」
エトセトラエトセトラ。
「あはは……。みんなちょっと落ち着いて…」
恭一が困惑していると、教室のドアが開いた。
「おら、座れ。HR始めんぞ」
名前すら名乗らなかった例の教師が入ってきたのだ。
彼の登場により恭一の周りに群がっていたクラスメートは離れていき、恭一は少しだけ教師に感謝した。
皆と同じように席に戻ろうとする恭一を、教師は呼び止めた。
「あ、中道、お前は生徒会室に行け。呼び出しだ」
教師のその言葉に恭一は首を傾げる。
「え…?授業あるじゃないですか」
恭一がそう聞き返すと、教師は一瞬怪訝そうな顔をして、すぐ笑い始めた。
「なんだ。お前副会長なのに、生徒会を全く知らないのか」
「あ…はい。すいません」
教師は笑うのをやめて、恭一に説明しはじめた。
「いいか中道。生徒会は命の危険すらある、危ない役職だろ。ではなぜ、命の危険まである仕事を生徒にさせるか」
「え…、なんででしょう」
恭一はそんなこと考えていなかった。そう言われると、苦情がでないのが不思議である。我が子が死んでしまったら、と考える人もいるだろう。
「特殊体質がある今じゃ、大人が子供を守る意味がないからだ。子供が大人より強いなんて、普通の時代だからだ」
「はぁ…」
「だから、生徒の中から使える奴を選びだす。それが生徒会と言うものだ」
「…で、なぜ授業中なのに呼び出しをくらってるんですかね」
「でそこなんだが、中道、危ない仕事を生徒にやらせてるんだ。見返りは当然ある」
「金ですか!?汚い!!」
「落ち着けよ…。まぁ、見返りというか特権だな。この呼び出しもその一つだ」
彼の話を要約すると、生徒会は危ない仕事なので、その見返りとして様々な特権が生徒会に与えられているということだ。
「はぁ…まぁ分かりました。生徒会室ですね?」
そう言って、恭一は教師とすれ違いで教室を出た。

「よく来たな、中道恭一!!」
生徒会室のドアを開いた恭一を、生徒会長-高坂椿は持ち前のロリータボイスで出迎えた。
「よく来たなって…会長が呼んだんじゃないですか」
「うん。まぁ、そうだが」
悪びれもなく肯定する彼女を見て、彼は怒る気力を失った。
「で、用ってなんです?」
「いやぁ、せっかく生徒会に入ったんだから面子紹介でもしようかなっと」
「それ、放課後じゃ駄目なんですか…」
「授業中に呼ばれた方がいいだろ?授業サボれるぜ?」
「放課後に補修として繰り上げなんですけど…」
「あっはっはっ。仕方ないよ、うん」
「…会長がどんな人か分かってきました」
「すげー格好いい偉い人、だろ?」
「お子様という事です」
「お子様言うなぁぁぁぁあ」
会長が胸を狙って、ペンを投げてきた。ありえない速度だった。胸ポケットに入れておいた生徒手帳が役に立った。せっかくの黒いカバーが赤にもどらなくてよかった。
「心臓狙わないでくださいよ!!特殊体質使わないでくださいよ!!」
恭一と椿がそんなやり取りをしていると、ガラッと生徒会室のドアが開いた。
入ってきたのは、黒髪でツンツン、目つきが悪い、ボーイッシュな女子生徒だった。
「会長。何や、呼び出しなんて」
「おぉ、きたか佳奈。あと、一年生なんだから会長様に敬語を使え」
「関西弁の活用法を、よう知らん作者が悪いんや」
「作者って誰だよ」
「うちらの世界を作ってる、根暗な変態暇人よ」
このままだと自分が空気になってしまうと感じた恭一は、二人の会話に割り込む、もとい会話をぶった斬る。
「えーと、会長。この人は?」
「ん…あぁ。こいつは赤坂佳奈(あかさかかな)お前とタメだ。仕事は庶務」
「赤坂さんも試験を?」
「そうだぞ。お前らが終わった後にやった」
彼がそう思ったのは無理もなかった。先程恭一が佳奈を見たとき。恭一が左腕を包帯とギプスでぐるぐる巻きなのに対し、彼女にはなんの傷も無かったのだ。
「んーと、あんたが例の中道恭一君?」
「あ、うん。えーと、例のって?」
「特殊体質ないんやろ?それなんに生徒会入ったて今、有名人やん」
「特殊体質が無いのは関係ないだろ」
彼は、少し怒気を孕んだ口調で言った。
「あ、あぁ、まぁそうやな」
「神聖な生徒会室で喧嘩するなよ?一年生」
「別にしてませんよ?会長」
「ならいいけどなー」椿がそう言った瞬間、また生徒会室のドアが開いた。
「いやー、ごめんね椿。遅れてしまった」
「お、紗織。…よし、全員揃ったな」
佳奈は彼女の言葉に違和感を感じる。
「庶務はいるのに書記とか居らへんの?」
しかし彼女の問いに答えたのは、椿ではなく恭一だった。
「赤坂さん?なに言ってんの、そこにいるだろ」
彼は誰も居ないはずの-否、佳奈が一回も見なかった場所を指差した。その指が指す場所には、確かに人がいた。
「えっ!?あれ!?」
彼女が驚愕の声を上げる中、驚かせた当の本人も驚いた様子で口を開いた。
「なっ、私が見える!?完璧に消えてたのに!!」
「あれぇ?中道恭一気づいてたのかよ」
「恭一くん、よく見つけたね」
更には椿、紗織の二人まで驚嘆したため恭一は首を傾げた。
「見つけるも何も、最初からそこにいたじゃないですか」
「いやまぁ、そりゃそうなんだが…」
「すごいな、君は」
「えぇ!?」
恭一を除いた全員が奇異の目で見てきて、恭一はなんとなく居心地が悪くなって、トイレを言い訳に生徒会室をでた。

その娘の名前は九重咲(ここのえさき)というらしい。名前が考えられなくて、中二っぽくしたわけではない。
時間が有り余った恭一達は、なぜか生徒会室に置いてあった麻雀で時間を潰していた。トランプもあったが椿が授業妨害にならないとか子供っぽいことを言ってやめた。
「そういえばそろそろ一限終わるな」
「そうですねぇ。放課後一人で、初めての生物って考えると嫌ですね(一限だった)」
「大丈夫。先公の自己紹介とかだから」
「余計嫌ですよ!!」
「私に言われても困る」
「それはそうで…ってあんたが呼び出したんだろ!!」
「敬語を使え、中道恭一!!」
「あぁ…はいはい。で、一限終わるとなんかあるんですか?」
「いや、誰か来るかなってさ」
「誰か?依頼ですか?早くないですか?…あ、先輩それポンです」
「恭一くん悪いね。ロンだ」
「なっ!?万貫12000…ですか…」
自分の手牌をパタっと倒して、ジャラジャラとけたたましく牌を混ぜながら、二人は話の続きをする。
「うちの生徒会は割とパシりに使われたりするしな」
「マジですか!?」
「それでも依頼料はかかるから、購買のアレが出たときくらいだがな」
「アレってなんですか?」