「セコいなぁ!男の子なら女相手に逃げんなよぉ」彼は電話番号を打ち終わる。「あ、そうえば、君は特殊体質無かったんだっけ?!」彼は通話ボタンを押す。「だったら、逃げてもしょーがないよねぇ?誰からも責められないね!!」彼はトゥルルルというコール一回で繋がった相手に言う。「逃げちゃえ逃げちゃえ!平凡なチキンクン?」彼は静かな声で言う。「もしもし、生徒会ですか?」『はい。こちら山中高等学校生徒会です。用件は?』「僕、不審者ですけども」『…っ!?』彼は静かに言葉を紡ぐ。「そちらに所属している笠井黒羽さん…」彼はあくまで静かに言う。「今から」『…!?なにを!?』「壊すから」彼は機械のように冷たい声でそういって、終話ボタンを押す。「そうだ!かかってこいよぉ。男の子~!?私に殺人の感覚をぉお」それには応えず、彼は自らの携帯電話を彼女に投げつける。バッ、とそれに彼女が反応して破壊瞬間、彼はその隙をついて彼女の腹に膝蹴りをいれる。「かハッ…」さらに、まともに喰らい、体をくの字に曲げてよろめいた彼女に対し、彼は彼女の右腕を掴み、背中の方へと捻りあげる。「ぐぁ!!ぎ
…ぃ」そんな呻き声など気にもとめず、彼はさらにグイッと、彼女の腕を捻る。そしてついに、ゴキッという音と共に彼女の悲鳴があがった時、彼は手を離し、彼女はその隙に彼との距離をとる。「ハァハァ。許さねえぞ?私に殺されるためだけの存在が!!痛みはもう知ってんだよ!?」右腕を押さえながら声を荒げる彼女。しかし、彼はそれを聞きもせず、彼女に向かって歩く。一歩一歩距離をつめる彼から彼女は全速力で逃げ出し、放送室や校長室を連ねる西棟一階の廊下の突き当たり。保健室というプレートをかけた薬臭い教室に入る。そこから窓を通って外の通路へ出て、体育館に彼女は向かった。そして、彼女が体育館に着いて、30秒程してから彼も体育館に入ってきた。彼女は彼を確認した瞬間、体育館の中にある倉庫からバスケットボールを思い切り、彼に向かって投げつけた。間をあけず、第二投、第三投と投げ、結局ボールかごが空になるまで投げた。が、彼には一つも当たらなかった。これは別に彼の回避スキルが凄いわけではなく、ただ彼女の利き腕が左ではなく、狙いにくく、避けやすかったのだ。「あ…ぅ!?」しかし、今まで一度たりとも
攻撃が当たらず、それどころか腕を折られたことから、彼女は向かってくる彼に恐怖をおぼえた。立ち向かっても勝てない。左腕も折られてしまう。全身砕かれる。そんな思考に絡め捕られ、彼女はただでさえ精度の低い左腕で倉庫の物を投擲する。そんなパニックに陥った彼女の攻撃は当たるはずがなく、彼はゆっくりと彼女との距離を縮める。そしてついに、彼女は投げるものを無くして、その場にへたれ込んでしまう。「来ないで!!来るな!!来るな来るな来るな!!」彼女は怯えた声で叫ぶ。すると、今まで何にも反応しなかった彼が口を開いた。「特殊体質が無い奴は、逃げ出してもしょうがないんだよな」「っひ…」彼女は俯いたまま情けない声をあげる。彼女には彼の顔を見る事が出来なかった。本能的に、体がそれをさせなかった。「じゃあ逆に、特殊体質がある奴は逃げ出しちゃ、駄目なんだよな」彼は言いながら彼女の方へゆっくりと歩く。定期的なリズムで近付いてくる彼のスニーカーを見ながら、彼女は恐怖から立つことができなくなっていた。そしてついに「なら、僕になにされても、文句は無いよな?」彼女の目の前でスニーカーがピタリと止ま
った。この時、彼女は確信した。戦っても勝てないどころじゃない。左腕も折られてしまうどころじゃない。全身砕かれるどころじゃない。自分は、死ぬのだ。目の前の年下の少年に殺されるのだ。殴殺。絞殺。撲殺。斬殺。圧殺。殺。殺。殺、殺。殺、殺殺、殺殺殺殺殺殺。「死……ぬ…」彼女は呟いた。小さく呟いた。狂気的な彼女は正気的にそう呟いた。「そうだ。お前は死ぬんだ。殺されるんだ」彼はどんな顔をして、言っているのだろうか。笑っているのか。はたまた、悲しい顔か。いや、多分違うだろう。彼はただ普通に、発狂している。気が狂う程に無感動に私を殺す。あくまで作業のように。「…なんでお前は私を殺す?」彼は胸ポケットに入っている小さめのペンを取り出し、キャップを外す。彼はそれを持つ腕を持ち上げて、応える。「お前が嫌いだから」ドスッ。

私は死んだ。死んだ。死んだはずだった。彼女はいつまでたっても痛みを感じない事から、そうっと目を開いた。ピタリと。彼女の背中の上3センチで、先の尖った黒のゲルインキのペンが止まっていた。「あ……れ…?」彼女はおそるおそるゆっくりと顔をあげる。彼はそんな彼女など眼中にも入れず、目を細くしながら横目で体育館の入り口を睨んでいる。その視線の先には彼女の良く知る、金髪で長めの髪。目は閉じられ、常に微笑を浮かべている人物。「…麻華……か?」麻華薫。三年A組1番。山中高等学校生徒会「生徒会長のおでましだよ?」生徒会長。「麻華……生徒会長」「そうだよ。新入生兼不審者の中道君?」「とりあえずそのペンどけてあげてくれないかな?」彼はそれに素直に応じ、元々の胸ポケットにペンをしまい、まだその場に座っている黒羽の耳元に口を近づけ「二回目はないですよ?先輩」と小さく告げて麻華のいる体育館の入り口に歩いていく。そして、ちょうど彼が麻華の隣を通り過ぎようとした時、麻華は腕をあげ、通行止めを宣言する。「中道君。君のおかげで色々と、面倒なんだ」「下校時間近いんで帰らせてください」「門を閉めたり、部屋を
破壊したり」「それ、僕じゃないんですが…」「というわけで生徒会に入ろうか」「話を聞け!?」「OK?そうか、快い返事、感謝するよ」「明らかに四文字だろーが!!どう聞いたら、半分の二文字になるんだ!!」「不満かい?」「不満です」すると麻華はスラッとした目を小さく開き、言う。「殺人未遂だよ?」パカッと携帯を開き、動画フォルダを彼は開き、最新のやつを再生し始める。この男は説得させるという行為が苦手なのだ。極端に。の、くせしてNOを受け入れない。大変面倒である。「…………は…」「は?」「…入りますよ」「ん?」「入りますよ!!!!」「そうかい。それはよかった」中道恭一は、キレると怖いが、やっぱり、目の前にある携帯をへし折れるほど、度胸はないへたれだった。このようにして中道恭一庶務が出来たのだ。
~続く~