徐々に痛みが頭から冷静さを奪っていくからだ。本当なら恭一が今喋れてるのもおかしいレベルなのだ。
左腕一本で彼女の拳を止めたかわりに、左腕の感覚がなくなり、ただ「痛い」という感覚が鋭くなっていく。
脳内のキャパシティがほぼ埋められた状態の彼は、それでも顔は歪まない。しかし小さくギリギリと聞こえる歯軋りの音から痛みを我慢していることは明らかだった。
そんな彼からの言葉に彼女は返す。
「…目を覚ます?目を覚ましたから、化け物と認めたんじゃないか!!」
彼女は認めるわけにはいかなかった。
「今更、私が女の子だ、だなんて言われたって…!!」
彼女は一年生の時から生徒会にいた。そして、何度も力を振るった。それは不審者、他校の生徒、学内の生徒、時には教師にまで。
それを彼女はいつも「化け物だから」と割り切っていた。
だからこそやってこれた。
「今更、言われたって…遅い…。私はもう普通じゃない」
「女の子だなんて認めたら、私は力を使えなくなる…」
「でも、もう私にはこの場所しかないんだ。私は目立ちすぎた。敵も作りすぎた」
「そんな私を怯える人間も多い。私のような異常は異常の中でしか-」
彼女の言葉は最後まで続かなかった。彼が遮った。
「俺から見たらあんたは女の子だ。それは事実だ。だってあんたは俺を殴るとき顔をしかめてるじゃないか」
「…!?」
「それであんたの居場所がなくなるんなら」
「俺のハーレムが居場所になるよ」
彼は精一杯の力を使って笑った。痛みで引きつった笑みで、なんとも気持ちの悪い笑み。
彼女はクスリと吹き出してしまった。
「…くすっ。なんだい、その打ち止めになったラブコメの主人公のようなセリフは」
「まじかよ…。そんなに駄目だったか…」
「ふふふ。言ったからには責任をとれよ?」
「責任…?え…?」
「なんでもないさ。君には参ったよ」
彼女が言ったその言葉に彼は驚く。
「今…参った、て言いました!?」
「あぁ」
その言葉と彼女の笑みで気が抜けた彼はそのまま、彼女に倒れ込んだ。
「ちょ…!?恭一くん!?」
「あぁ、寝ちゃってる。相当疲れたんだろうな」
「……保健室に運ぶか」
彼女はため息をついた。男子高校生を運ぶのはやはり面倒だった。
しかし彼女の顔はため息をつきながらもどこか嬉しそうだった。