世紀が変わった頃の、お話・・・
私は偏屈で時代を憎む丸刈りの青年だった
ファッションなど知らず、せいぜい背広しか着ない
感覚の世界を軽蔑し、ただ理論理屈で生きる人間だった
好きなゲームが「アドバンスド大戦略」だったりして、戦闘機や戦車の形式が空で言えた。
例えば 今、「スイーツ(笑)」という、
女性文化に対するネガティヴなスラングが流れているけど
あのころ私はむしろ、それを生み出した場所にいた。
口を開けば時代への憎悪だった
まさか
その私が
「それ」を
志すとは思ってなかった・・・
本当に人生は、わからない
そんなころ、ある女性に私はネットで拾われた
そして私は「メフィスト」と名乗っていたのに
「めふぃ~」という呼び名を、付けられてしまった
「そんなカッコ悪い名を名乗れるか」
・・・と反発していた
だけどこの名の響きが私の人生を
直ちに変えてしまった
どこへ行っても受け入れられるものだから
警戒心も凍り付いた心も溶かすしかなかった
私は気付かされた。
罵っていたものが、本当は最も「望んでいた」もの。
私は自らの過去の性的トラウマと憎悪から
逃れる術を探した果ての、女装だった
私は20代の頃、心と体に傷を持つ女性に共感しすぎた故に
それがオーバーフローして嫌悪するようになった
二度と近づくまいと思い、そして運命の赤い糸に引かれ
出会うまでに相手を無事でいさせてくれない自由な「時代」を呪った
だったらこの苛酷な時代、果たして女性当人は何に癒されているのだろうか・・・
いきなり髪を染めてファッションに興味を持ち、
飛び込んだ神コレで、女性の文化が、
女性の持つ第二次性徴以降の不快感による不条理さと、
各個人が持つ、トラウマを癒すことに気付いた
私は男性でありながら女性の為の「それ」を得るかわりに、
女性への性的欲望の視点を捨てた。
肉体は変えられなくても、修行僧ではないけど、
たとえばこの女を落としてやろうとか
そういったゲスな欲は断ち切る事が出来た
最初は・・・それが男であることの重圧を捨てつつ
女のメリットを得ようとする者の最低限の「礼儀」だと思っていた
だけど実際は礼儀というのは建前で、「望み」だった。
それがのみが私自身が生き抜く正解の方法だった
性欲というか支配欲が無ければ
あれだけ愛憎を重ねても理解できなかった
女性の人間としての本当の姿が見えてきた
美人が「性格が悪い」と男が思ってしまう理由、
女性が街を歩いて「なにに」不快を持つかということ。
男の性的欲望と視線、クラブではマナーの無いナンパ、街ではキャッチ・・・
頼れる事を言いながら口だけで同棲したら暴力・・・
思春期からコッチ、オンナであることを維持するには
毎月の苦痛と、メイクの手間と、服飾にコストが掛かる。
それを容易に掻っ攫いに来ようとする無責任な一部の男・・・
そうか、綺麗な子は・・・ウンザリしてるんだな。
私は、いろんなことを教わりながら美人と街を歩き続けた
お笑い芸人さん、お嬢からスタイリスト、女優・・・
街ゆく人は驚いていた
「トンでも」な女装が
すっごい美人を連れているんだから無理も無い・・・
最高のシティライフを見せてもらった事もあった
男では来れない場所、触れられない世界
男でありながら両面を見る事が出来た
最高だ、最高の人生だった・・・
だけどまだ叶わぬ、私の夢があった
それは多くの女性には普通のことかもしれないけれど
女性向けのショップでほんの一日でもいいから雇ってもらえる事
こんな女装は使いづらい、それはわかってる
もう、街ですれ違う人100人いれば100人が何とも思わない「ただの人」ではない
受け入れやすさが命のコスメ・アパレル店員は、まず難しい
だけど、私は・・・女性に恩がある
ファッションにも時代にも、街にも恩がある
ほんの僅かなネイルのグッズだとかラインストーンとか
女性の持ち物にときめいていた日々、
それが手に入ると、次第に日常になった
様々な出会いが私を育ててくれた
アロマサロンではあれほど軽薄だと嫌ってた「女性」に癒され
芸能人の方々との出会い、女の格好で女性専用のレッスンを受け、
憧れのお嬢が友達に・・
全てが、日常に組み込まれていった
そしてなんでも言い合える「女同士」の親友ができた
パーティーでいつも手を繋いでたりする
これは駆け出しの女装子にとって憧れともいえるらしい・・・
そして私は声高に、
思想やなにかを主張する事も減っていったから
ブログの更新が滞った
承認欲求は満たされていたからだ
親友と電話でガールズトークをするヤツの押し入れには
昔の戦車や車のプラモが山積みという、面白い状態になった
そうか、
ガールズトークといっても
男同士と比べて、実はテーマが変わっただけで
さほど違った感覚で話をしているものでもない
男のもの、
女のもの、
オタクのもの、
そうでないもの
その「文化的垣根」の無意味さを思い知っていた
そういや同人誌即売会にいく朝の感覚と
神コレにいく日の感覚、そう違わない?
アニメにしろファッションにしろ、どっちもマニアだよね。
もう、「めふぃ~らいふ」が動いていた・・・
名前がめふぃ~で、性別が、めふぃ~。
だけどひとつだけ、有り得ない事だとわかっていたんだけど・・・
たった1日でいい!
どこかのお店に呼んで欲しい
なんなら掃除だけでもいい
アパレルかコスメなど女性向けの店で
もはや親近感として大好きな女性の為に働く事、
それが、膨らみ続ける私の夢だった
そして2008年春
以前の神戸コレクションで私を見たと仰る方からの
一本の電話が・・・
願いは、思わぬ形で叶うことになる。
・・・(続く)
私は偏屈で時代を憎む丸刈りの青年だった
ファッションなど知らず、せいぜい背広しか着ない
感覚の世界を軽蔑し、ただ理論理屈で生きる人間だった
好きなゲームが「アドバンスド大戦略」だったりして、戦闘機や戦車の形式が空で言えた。
例えば 今、「スイーツ(笑)」という、
女性文化に対するネガティヴなスラングが流れているけど
あのころ私はむしろ、それを生み出した場所にいた。
口を開けば時代への憎悪だった
まさか
その私が
「それ」を
志すとは思ってなかった・・・
本当に人生は、わからない
そんなころ、ある女性に私はネットで拾われた
そして私は「メフィスト」と名乗っていたのに
「めふぃ~」という呼び名を、付けられてしまった
「そんなカッコ悪い名を名乗れるか」
・・・と反発していた
だけどこの名の響きが私の人生を
直ちに変えてしまった
どこへ行っても受け入れられるものだから
警戒心も凍り付いた心も溶かすしかなかった
私は気付かされた。
罵っていたものが、本当は最も「望んでいた」もの。
私は自らの過去の性的トラウマと憎悪から
逃れる術を探した果ての、女装だった
私は20代の頃、心と体に傷を持つ女性に共感しすぎた故に
それがオーバーフローして嫌悪するようになった
二度と近づくまいと思い、そして運命の赤い糸に引かれ
出会うまでに相手を無事でいさせてくれない自由な「時代」を呪った
だったらこの苛酷な時代、果たして女性当人は何に癒されているのだろうか・・・
いきなり髪を染めてファッションに興味を持ち、
飛び込んだ神コレで、女性の文化が、
女性の持つ第二次性徴以降の不快感による不条理さと、
各個人が持つ、トラウマを癒すことに気付いた
私は男性でありながら女性の為の「それ」を得るかわりに、
女性への性的欲望の視点を捨てた。
肉体は変えられなくても、修行僧ではないけど、
たとえばこの女を落としてやろうとか
そういったゲスな欲は断ち切る事が出来た
最初は・・・それが男であることの重圧を捨てつつ
女のメリットを得ようとする者の最低限の「礼儀」だと思っていた
だけど実際は礼儀というのは建前で、「望み」だった。
それがのみが私自身が生き抜く正解の方法だった
性欲というか支配欲が無ければ
あれだけ愛憎を重ねても理解できなかった
女性の人間としての本当の姿が見えてきた
美人が「性格が悪い」と男が思ってしまう理由、
女性が街を歩いて「なにに」不快を持つかということ。
男の性的欲望と視線、クラブではマナーの無いナンパ、街ではキャッチ・・・
頼れる事を言いながら口だけで同棲したら暴力・・・
思春期からコッチ、オンナであることを維持するには
毎月の苦痛と、メイクの手間と、服飾にコストが掛かる。
それを容易に掻っ攫いに来ようとする無責任な一部の男・・・
そうか、綺麗な子は・・・ウンザリしてるんだな。
私は、いろんなことを教わりながら美人と街を歩き続けた
お笑い芸人さん、お嬢からスタイリスト、女優・・・
街ゆく人は驚いていた
「トンでも」な女装が
すっごい美人を連れているんだから無理も無い・・・
最高のシティライフを見せてもらった事もあった
男では来れない場所、触れられない世界
男でありながら両面を見る事が出来た
最高だ、最高の人生だった・・・
だけどまだ叶わぬ、私の夢があった
それは多くの女性には普通のことかもしれないけれど
女性向けのショップでほんの一日でもいいから雇ってもらえる事
こんな女装は使いづらい、それはわかってる
もう、街ですれ違う人100人いれば100人が何とも思わない「ただの人」ではない
受け入れやすさが命のコスメ・アパレル店員は、まず難しい
だけど、私は・・・女性に恩がある
ファッションにも時代にも、街にも恩がある
ほんの僅かなネイルのグッズだとかラインストーンとか
女性の持ち物にときめいていた日々、
それが手に入ると、次第に日常になった
様々な出会いが私を育ててくれた
アロマサロンではあれほど軽薄だと嫌ってた「女性」に癒され
芸能人の方々との出会い、女の格好で女性専用のレッスンを受け、
憧れのお嬢が友達に・・
全てが、日常に組み込まれていった
そしてなんでも言い合える「女同士」の親友ができた
パーティーでいつも手を繋いでたりする
これは駆け出しの女装子にとって憧れともいえるらしい・・・
そして私は声高に、
思想やなにかを主張する事も減っていったから
ブログの更新が滞った
承認欲求は満たされていたからだ
親友と電話でガールズトークをするヤツの押し入れには
昔の戦車や車のプラモが山積みという、面白い状態になった
そうか、
ガールズトークといっても
男同士と比べて、実はテーマが変わっただけで
さほど違った感覚で話をしているものでもない
男のもの、
女のもの、
オタクのもの、
そうでないもの
その「文化的垣根」の無意味さを思い知っていた
そういや同人誌即売会にいく朝の感覚と
神コレにいく日の感覚、そう違わない?
アニメにしろファッションにしろ、どっちもマニアだよね。
もう、「めふぃ~らいふ」が動いていた・・・
名前がめふぃ~で、性別が、めふぃ~。
だけどひとつだけ、有り得ない事だとわかっていたんだけど・・・
たった1日でいい!
どこかのお店に呼んで欲しい
なんなら掃除だけでもいい
アパレルかコスメなど女性向けの店で
もはや親近感として大好きな女性の為に働く事、
それが、膨らみ続ける私の夢だった
そして2008年春
以前の神戸コレクションで私を見たと仰る方からの
一本の電話が・・・
願いは、思わぬ形で叶うことになる。
・・・(続く)