胸が少し苦しくて
でも幸せな気持ちになれる小説6選
毎日一冊ずつ解説していきます。
まずは一冊目
主人公の貴瑚は、祖母が暮らしていた漁師町の古家に一人越してきます。
そこで貴瑚は、親から虐待され学校にも通わせてもらえていない『ムシ』と呼ばれる少年と出会います。
ムシとの関わりの中で、貴瑚は自分が親から受けていた虐待と向き合うことになります。
そして、ムシを虐待する親から離し、
彼の幸せに尽力すること、
つまり愛を注ぐことで、
本当の癒やしが起こり、成長していきます。
タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、
他のクジラが聞き取れない周波数で鳴くクジラのことです。
他人と気持ちを通じ合わせることができない主人公を象徴しています。
しかし、タイトルは「クジラ『たち』」なのです。
一匹ではないのです。
「あなたは、決して一人ぼっちじゃありませんよ。
あなたの声は、きっと誰かに届きます。
気持ちが通じ会える人が必ずいます。
あなたは、きっとその人に出会えますよ」
という著者のメッセージが込められているように思います。
親から虐待を受けて育った主人公が、
人との出会いの中で癒やされ、
やがて自分が人を癒やす立場になったことで、
本当の癒やしが起こり成長していく姿が
感動的に描かれています。
まるでそれは、心の傷を克服し
今度は自分が人を癒やす立場になった
心理カウンセラーをはじめ対人援助職の人たち
が辿る道のようです。
それでは、この本で矢野が感銘を受けた箇所と
それに対する矢野の感想を書いていきます。
引用文中の赤字は、矢野がつけたものです。
「あそこでああしないと、結局どこかでわたしは自殺していたと思うんだ。罪悪感に潰れて、生きていられなかった。でも、一度死にかけたことで、『死ななくてはならない』っていう強迫観念みたいなものが嘘みたいに消えたの」
一瞬死を間近に感じたせいなのだろうか。目が覚めて病院の天井を見上げた時には、死への欲求はどこにもなかった。ただ、感情のどこかが死んだ感覚があった。
カウンセラーの世界で、
自殺念慮にかられているクライアントに、
言ってみるといいと言われている言葉があります。
「どんな方法で死のうか、具体的な方法を考えたことがありますか?」
その質問によってクライアントは、自分の死に直面するので、
「死ななくてはならない」という強迫観念が消えるのだといいます。
でも、かつて自殺念慮にかられたことがある身としては、これに違和感を覚えていました。
その違和感の答えがここにありました。
『死への欲求はどこにもなかった。
ただ、感情のどこかが死んだ感覚があった」
では、感情のどこかが死ぬことなく
死への欲求をなくすにはどうしたらいいのか?
その答えがこれのような気がします。
「全部出しな。全部ぼくが聞いてるから。ぼくに、聞こえてるから」
大丈夫、ぼくが全部聞いてる。キナコの思いはお母さんには届かなかったけれど、ぼくには届いたよ。
死のうと思って街を彷徨っていたとき、貴瑚は安吾と出会います。
安吾が貴瑚に言った言葉が上記。
素晴らしい。カウンセリングの見本です。
もちろんカウンセラーは家族や友人や恋人ではないから、
クライアントと苦しみを分かち合うことはできないし、してはいけないです。
でも、思いはこうありたい。
「わたしは一人じゃない。
わたしの話を聞いてくれる人がいる。
わたしの気持ちが通じる人がいる」
この思いが、人を癒やすのです。
そのことで、感情が死ぬことなく
死への欲求が消え、
生への希望が出てくるのだと思います。
親から虐待を受けていた人。
心理カウンセラーなど対人援助職に就いている人。
に是非、読んでもらいたい本です。
胸が少し苦しくて
でも幸せな気持ちになれる小説6選
明日は『ライオンのおやつ』小川糸 著です。
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