うつくしいもの

          八木重吉


 わたしみづからのなかでもいい
 わたしの外の せかいでも いい
 どこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのか
 それが 敵であつても かまわない
 及びがたくても よい
 ただ 在るといふことが 分りさへすれば、
 ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ

 

この詩を初めて読んだのは、
中学の国語の教科書。

 

早熟だった僕は
「俺の求めているのは、これだ!」

と、すぐに本屋で詩集を買い求めた。

 

 

重吉は夭逝したので
一冊の本にできるほど作品数が多くない。

 

その詩集には、同じく夭逝した
詩人の作品も載っていた。

 

それが中原中也との出会いだった。

 

 

汚れつちまつた悲しみに…… 

      中原中也

 

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる


汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる


汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む


汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

 

 

 

還暦を迎えた今読んでも
中学生のときに読んだときと同じく
胸にじーんと滲みてきて、
心の滋養になるのがわかる。

 

人の心は思春期に完成しているんだな。

 

人生経験を積んで
ネガティブな感情には耐性ができ、
ポジティブな感情には慣れてしまって
感じにくくはなるけれど、

 

基本的に感性は、
中学生のときも60歳の今も同じ。

 

 

今でも「うつくしいもの」を
追い求めている。

 

そして「うつくしいもの」を
人の心の中に見つけた。

 

だから、心理カウンセラーを続けている。

 

「うつくしいもの」を追い求めて
人の心を探求し続けている。

 

 

 

ときには人の心の中の
「汚れちまった悲しみ」
に出会うこともある。

 

そんなときは、
汚れちまった悲しみに
静かに寄り添う。

 

これ以上、汚れてしまわないように。

 

そして、古い茶碗のように
その汚れが味になって
より「うつくしいもの」になれる
ように。

 

 

ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ

 

 

 

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