「一流カウンセラーの技」と言うテーマで連載しています。
今回は3回目
『無我』です。
Don’t think , feel !
もう15年ほど前のこと。
私の尊敬するカウンセラー（Mさん）の
ワークショップに参加した時の
ある参加者さんからの質問に対する
Mさんの受け答え。
「Mさんは、どうやって見立てをしているのですか？」
「僕は見立てをしていない」
「見立てをしないと、
カウンセリングの方向性が
分からないと思うのですが」
「見立てなんかするから、
先入観ができて、見当違いのところに
行っちゃうんだよ」
「見立て」とは
「これは、父親との関係が原因だな」
「否定的な言葉づかいに問題があるな」
などと、カウンセリングの方向性を
いったん決めて、そこを探っていくことです。
見立てをしないと、
カウンセリングの方向性が決まらず
途方に暮れてしまうのが普通です。
ですから、ほとんどのカウンセラーは
見立てをします。
なのに、Mさんは見立てをしないと。
やりとりは続きます。
「見立てをしないで、
Mさんは、どうやってカウンセリングの
方向性を決めているんですか？」
「方向性なんて決めない。
無駄だから」
Mさんは、カウンセリング業界の長嶋茂雄
のような感覚派の天才で、
技術的なことを言葉で他者に教える
ことが得意でないのです。
当時の私には
「なぜMさんは、見立てをしないで、
こんな見事なカウンセリングができるのか？」
分かりませんでした。
でも、今のわたしには分かります。
Mさんが伝えたかったのは、
Don’t think , feel .
考えるな、感じろ！
ということだったのです。
では、なぜ、
「考えないで感じる」
ことで、天才的なカウンセリング
ができるのでしょうか？
相手を観ながら、自分の身体の感覚を探る
瞑想をしたことがある人なら
分かると思いますが、
「考えない」って
とーても難しいです。
そこで、矢野ブログを読んでくださっている
あなたに特別サービス！
考えないようにする秘訣を
お教えしましょう。
それは「感じる」こと。
「感じろって言ったって
いったい何を感じればいいの？」
そうなんです。
私もブルース・リーの言葉を聞いたとき
そう思いました。
で、カウンセラーとして経験を
積んでいくうちに分かったのです。
「自分の身体の感覚」
を感じればいいのだ、
ということに。
「カウンセリング中に、
そんなことしたら
自分の中に閉じこもってしまって
クライアントの話を
まともに聴けないんじゃないの？」
疑問ごもっともです。
そうならないようにするために
どうしたらいいか？ というと
クライアントを観察する
のです。
クライアントをよく見て
クライアントの声に耳を傾ける。
言葉の意味に気を取られると、
考えてしまうのでダメです。
話の内容ではなく、
声のトーンや口調を聴く。
そう、虫の声や
小鳥のさえずりを
聴くように。
目と耳はクライアントに集中しつつ、
自分の身体の感覚を探る。
外側の意識はクライアントに向け、
内側の意識は自分に向ける。
つまり、クライアントと自分
両者に意識を向ける。
相手と自分 両者に意識が向いているので
クライアントと自分が繋がるのです。
そうなると何が起きるか？
自分が消える のです。
そう、無我の境地です。
自分でない
高次の存在が降りてきて
そいつがカウンセリングを始める。
小説家は、執筆に集中すると、
登場人物が勝手に動き出す
といいますが
それと同じ感覚だと思います。
私は、カウンセリングをしている
ときに降りてくる人格のことを
敬愛するミルトン・エリクソンにちなんで
ミルトン君と呼んでいます。
残念ながら、経験したことがある人しか
分からない感覚なんだよな。
あなたの身にも
降りてきますように
３回にわたって
「一流カウンセラーの技」
をお伝えしてきました。
はっきり言って、今回お話した
「無我の境地」は、かなり難しいです。
けれど、
「観察眼」
「多彩なアプローチ」
は、意識すれば身につけることができます。
精進あるのみ！
私もまだまだ精進します。
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