お久しぶりです、またもや久々の更新です(笑)
その更新の内容ですが、志乃さんプレゼンツの
夏(6、7、8月)にまつわる小説で萌えを補給して、暑い夏をやり過ごそうぜ!っていう企画
に参加させていただきました!
詳しくは志乃さんの【小説リンク集】3つな小説企画【夏】 ページまで
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
08/29 泉璃さんの挿絵追加
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
誰か泣いている?
アレは誰?
暗くてよく見えない
そっとツナヨシが近くに寄ろうとすると壁が、目に見えない壁が邪魔をする
これ以上近くにいけないのならばせめてあの泣いている人が少しでも安心できるように遠いけど一番近いここにいてあげよう
暫くすると暗闇にも目が慣れてきたようで段々見えてきた
あそこにいるのは誰?
服も、顔も、背丈も同じ
アレは俺?
いや違う、あれは――――綱吉だ!
「綱吉!ねぇ、どうして泣いてるの?今そっちに行く!」
そういいたいのに空気が震えない、震えたとしても壁で届かない
――泣かないで、おねがい!
どんなに伝えたくても伝わらない、声がなくても近くにいけば伝える方法はたくさんあるのにこの壁がそれを許さない
――そう、この壁があるからいけないんだ!
気付いたツナヨシは直ぐに炎を灯し壁に向かってイクスバーナーを放った
壁はそれに耐えた
甘かったか、そう思い壊れるまで炎を放ち続けた
しかし壁は傷1つ付かない
壁の向こうではいまなお綱吉が泣き続けている
――このままの炎じゃダメだ
今までとは比べ物にならないくらい炎圧を上げて綱吉と自分の間にある邪魔な壁にイクスバーナーを放った
今までびくともしなかった壁はついに最大の炎によって破られた
イクスバーナーの炎は勢いそのままにその先にいた綱吉にまで襲い掛かった
「え…綱吉っ!?」
やっと壊れた壁をくぐると声が戻ってきた
声が戻ったことにも気付かずにツナヨシは己の半身に駆けた
ツナヨシ渾身のイクスバーナーを直接受けた綱吉は虫の息
――オレの炎で綱吉を傷つけた?いやその前にこのままだと綱吉は…
その先を考えてしまったツナヨシは必死に綱吉の身体を抱えて揺さぶる
「いや、綱吉!いかないで。オレをおいてかないでっ」
「―ナ、ツナ!」
「ん…あれリボーン?ここは?」
ツナヨシが目を開けるとそこには見慣れた家庭教師に天井が写った。
「なに寝ぼけてんだ?ここはお前の部屋だろうが」
リボーンは息を吐きながらツナヨシの勉強机にもたれかかった。
「このくそ熱い夏に風邪を引いたバカが大人しく寝ているか見に来たらうなされていたから起こしたんだよ」
「そっか、そういやオレ風邪引いてたんだっけ」
「夏風邪は長引きやすいっていうが本当にその通りだな」
風邪を引いて既に6日もたっているのになかなか治らずにいた。
ツナヨシは頭にあったぬるくなってしまったタオルをどけて上半身をベッドから起こすと同時に部屋のドアが開いた。
「綱吉!!…よかった」
小さな鍋、水の入ったコップにコーヒーがのったお盆を持った綱吉が入るとツナヨシの目からは涙が流れた。
入って直ぐに大事な人が泣きだした状況に綱吉は慌ててお盆を机の上に置きベッドの傍に寄った。
「どうしたんだ、ツナ?リボーンに何かされたのか?」
「おい、綱吉。なんでそこで俺が出て来るんだ?」
綱吉が入ってきて泣き出したツナヨシを見て先ほどうなされていた夢の内容がおおまか分かったと思った矢先に綱吉からの言葉。
「え、いやだってリボーンしか部屋に居なかったから」
「失礼なやつだな、そこのバカは熱のせいでお前に関する悪い夢をみたんだろうよ。それでお前を見て安心した、そんなとこだろ」
「そうなのか、ツナ?」
確認のためにベッドの方を見ると涙を拭いながらツナヨシは小さく頷いた。
「はら、俺は大丈夫だ」
安心させるために優しい手つきでツナヨシの頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。
「おかゆ作ってきたから食べるか?」
「綱吉がつくったの?」
「あぁ、作ってる最中に骸が来て手伝ってくれたんだけどな」
あーん、と綱吉に食べさせてもらっていたツナヨシだったが聞き捨てならない単語がいくつか聞こえて食べていた口の動きを完全にとめてしまった。
「ねぇ、綱吉?ムクロってあのムクロ?」
禍々しいオーラを発しながらツナヨシはムクロについて質問する。
傍観に入っていたリボーンは泣いたり笑ったり鬼のようになったり忙しい奴だなと思いながら綱吉に持ってこさせたコーヒーをすすりながら再び教え子二人を眺める。
「あの、っていうのがわからないけどこんな珍しい名前なんてそうそういないだろ?」
綱吉が言うとおり“ムクロ”なんて名前は珍しい。そしてツナヨシが思い浮かべる“ムクロ”という名前が付く人物は燃やしたいモノNo.2の六道骸しかいない。ちなみにNo.1はぶっちぎりで白蘭なのだがここでは関係ないだろうとおもい心の中で無視をする。
再び綱吉におかゆを食べさせてもらいながら心の中で骸と次に合ったときに勝手に家に入って綱吉とご飯を作ったことに対してこらしめてやろうかと考えていると燃やしたい人物No.2が部屋に入ってきた。
「パイナップ…じゃなかった、骸」
「貴方、わざとでしょう?」
「何のこと(☆ω☆)」
綱吉にばれない角度で骸にどや顔を決めてみると骸が何か言うために口を広いたが綱吉の言葉によって遮られた。
「骸!ツナはそんなひどい事わざとするような奴じゃないって知ってるだろ?きっとちょっと口が滑っただけだ!」
「綱吉、貴方も結構ひどい事言っていることに気付いてますか?」
ツナヨシのフォローに回ったために起きた骸への二次災害。勿論綱吉が気付くはずがなく、逆にツナヨシはフォローしてくれたことに対して満面の笑みを浮かべる。
「そうだよ、オレがそんなひどい事するわけ無いだろ?不法侵入のパイナップルはさっさと出て行け!」
「仮にも貴方が今食べ終わったソレは綱吉二人で作ったとはいえ半分以上僕が作ったから食べれるものになっているんですよ?」
確かに料理が出来ない綱吉一人では食べ物になっていなかっただろうがそれとこれは別問題。
そしてツナヨシは骸の口から綱吉と二人で作ったという事実が分かったので、すっと立ち上がり病人とは思えないほど大きな炎を出していた。
「ちょ、どうしてこちらに手を向けてイクスバーナーを撃とうとしているんですか?その前にツナくん本当に風邪引いているんですか!?」
「骸の分際で綱吉と料理を作るなんて許されることじゃないでしょ?それに風邪だって引いてるよ、それの所為で最悪な夢見だったんだし」
ふん、と可愛く起こって焼きパイナップルを完成させるために目を開けておくのも一苦労なほどに炎圧をあげた瞬間、部屋からオレンジの炎が消えた。
急に電灯だけの光に戻ったために目を慣らすのに時間がかかったが全員がもとの光になれツナヨシのほうに目を向けるとツナヨシはベッドの上に倒れていた。
「おい、ツナ!」
「落ち着け。熱があるのにはっちゃけすぎただけだ、そのままそっとしといてやれ」
抱き起こそうとする綱吉に的確な指示を出してこうなったある意味での元凶の方に身体をむけた。
「骸、お前はこのバカが倒れている間にさっさと帰っちまえ。あんな炎を家の中でぶっ放されたらこの家がもたねーからな」
「僕より家の心配ですか?」
「ったり前だ。お前は殺しても死なねーだろ?」
「貴方には言われたくない言葉ですがね」
皮肉を皮肉で返した骸に今度は思い人からの声。
「今はあんまりツナに無茶させたくないから悪いけど今日のところは帰ってくれないか?」
好きなヒトから少し頭を斜めにしてお願いされて断れるほど大人ではなかった骸はしぶしぶ帰ろうとすると横で楽しそうにリボーンが笑っていたのでそれに一睨み入れてから部屋を出て行った。
災難だった、と思いながら家をでると上から声が降ってきた。
「今日は手伝ってくれてありがとな、骸!」
ブルーだった気持ちもたった一言で飛んでいき骸は帰っていった。
ツナヨシが倒れて寝ている間に、と綱吉は食べさせ終えたおかゆの鍋を持って降りることにし、部屋から出て行った。
綱吉が部屋に戻るとリボーンは携帯で誰かと話しているようだったので邪魔をしないようにそっと歩きベッドの横に移動しツナヨシの様子を見ることにした。
「綱吉、そこの窓あけとけ」
いつの間にか電話が終わっていたようで窓に近かった理由も分からないままに綱吉がしっかり窓を開けられたことを確認してからひとつ欠伸をして机にもたれかかった。
「やぁ、見舞いにきてあげたよ」
開けたばかりの窓から大きなバスケットを持った雲雀が入ってきた。
「ヒバリ!なぁ、いつも思ってたんだけどここ二階だぞ?」
「それがどうしたの?僕には関係ないよ」
今まで疑問に思っていたことを一瞬で返され返答に困っているとリボーンが雲雀の方に寄っていった。
「感謝しろよ、ヒバリ?さっきお前から電話がかかってきて、どうせ窓から来るだろうと思ったから窓を開けさせといたんだからな」
「そのためだったのかよ」
綱吉のツッコミは両方にむなしくスルーされるに終わった。
「わざわざありがとね。で、肝心のツナヨシは夢の中かい?」
窓枠に掴まったままであった雲雀は丁寧にクツを脱いでから部屋に入りベッドで横になっているツナヨシに目をやった。
「あぁ、お前が来る前に変態パイナップルを燃やそうと炎出してぶっ倒れたんだ」
「あいつの方が先にきたってこと?」
「まぁ、本人はツナが風邪引いてたことをしったのはここに来てからだろうけどな」
要らない情報を吹き込まれた雲雀は苛立ちをあらわにし、それをみてリボーンがクツクツと笑いながら楽しんでいるとツナヨシがもぞもぞとうごいて目を覚ました。
「起きたかい、ツナヨシ?」
「うん、…ってあれヒバリしゃん?どうしてここに?」
「君が風邪を引いたって聞いたから見舞いに来てあげたんだよ」
起きたてで呂律が回らないツナヨシに手に持っていたバスケットをツナヨシに差し出しちゃっかりツナヨシの横に座る。
「えへへー、ありがとうございます!やっぱりヒバリさんは優しいですね」
何かな?と首をかしげながら楽しそうにバスケットの上にかぶさっていた布を取るツナヨシを横目にヒバリは予想外のツナヨシからの可愛いく、そして嬉しい攻撃にやられないように努力していた。
「わぁ、いっぱいの果物が入ってる!リンゴ、バナナにブドウそれにメロンまで!オレ、メロン大好きなんですよ♪」
「それ食べて安静にしとくんだよ」
はい!と大きな返事に一瞬だけ微笑んで雲雀は再び窓から帰っていった。
「ヒバリの腰抜け、逃げたな」
「逃げたって誰から?」
雲雀が去ってからのリボーンの呟きが聞こえていた綱吉がリボーンに問いかける。
「寝起きツナからに決まってるだろ」
更に訳が分からなくなり首をかしげた綱吉だったがリボーンはそれに気付きながらも答えようとせず、色とりどりのフルーツバスケットを見つめながらはしゃぐツナヨシからバスケットを取り上げた。
「あ、何するの!リボーン」
急に雲雀からのお見舞いの品を取り上げられてむくれるツナヨシにリボーンはため息をつきながらドアを開く。
「オレが剥いてきてやるから大人しくしとけ」
それでもツナヨシが抵抗してきたので、
「炎出したらぶっ倒れるくらいに体力おちてんだろ」
といってツナヨシがうなだれたのを確認して階段を下りていった。
リボーンが部屋から居なくなって直ぐにツナヨシがベッドから起きようとしたので綱吉が注意する。
「大人しくって言われただろ?」
「だって朝からずっと寝てるんだよ?もう寝れない」
「ダメだ」
綱吉の短くも強い威力を持った一言でしぶしぶツナヨシはベッドに戻った。
「じゃ、大人しくしとくからいっぱい話そうよ」
それくらいならいいか、と綱吉は思い何か会話のネタになるものを考えてふと部屋に入ってきたときの事を思い出した。
「そういや俺が入ってきたせいで泣いただろ?リボーンはあぁ言っていた本当のところはどうなんだ?」
思い出させるのは悪いかな、と思いつつも自分で改善できるところがあるのならば、と考えた。
「ん、アレねー。半分正解で半分外れかな」
そういって夢の内容――壁を壊そうとイクスバーナーを放つとその先に居た綱吉に当たり重症を負った事――を全部ではないが語った。
「…俺はツナを残していくなんて事なんて絶対にしない。二人はいつも一緒だ!」
話し終わり思い出し泣きをしそうになっているツナヨシを抱きしめながら静かに、しかし力強く言い放つ。
「ありがと、綱吉。もう大丈夫だよ。これ以上引っ付いてたら綱吉にまで風邪が移っちゃうよ」
いつもなら自分から離れようとはしないのだが今日はツナヨシが本気で移ることを心配しているようであったので綱吉は大人しく抱きしめることをやめた。
「別に俺に移ってツナの風邪が治るならそれでもいいけどな」
「それは絶対にダメ!もしそうなったら許さないからね?」
綱吉の方を真っ直ぐに見据えて本気で許さない、という雰囲気をまとう。
「絶対に風邪引けないな」
そうだよ、とツナヨシが笑ってつられて綱吉も笑っているとリボーンがうさぎりんごを乗せたお皿を持って入ってきた。
「これリボーンが作ったの?」
ツナヨシがお皿をのぞくと耳の部分にまで細かいデザインが入れられておりうさぎだけではなくどう作ったのか分からない白鳥を象ったりんごまであった。
「当たり前だろ?今日はママンも皆出かけてこの家には三人しかいねーんだから」
「そうだけど…」
じっとお皿に乗ったりんごを見つめているとリボーンがその中のひとつを手に取った。
「いらねーんなら食わなくていいんだぞ?オレが食うからな」
「食べる!オレ、りんご大好きだもん!ただもったいないって思っただけだもん」
「こんなもんいつでも作ってやるからさっさと食って寝ろ」
リボーンには逆らえないので綱吉の時とは違いはーい、と大人しくりんごを食べ終わるとベッドに横になった。
先程のおかゆにリンゴ、そして二人が傍にいるという安心感からかツナヨシは直ぐに眠りに落ちていった。
「遅くなっちまったがオレ達も昼飯でも食うか」
完全に眠りに入ったことを確認したリボーンは綱吉を連れてリビングへ行くために部屋を後にする。
「早く治るといいな」
「これ以上長引いたらシャレになんねーからな。治ったらもう夏風邪なんてひかねーようにねっちょり鍛えなおしてやらないとな。ほら、さっさと行くぞ」
「…ツナ、早く治すんだぞ!」
ツナヨシが聞こえていないと分かっていても応援せずにはいられない綱吉だった。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
エンテロウイルス:
夏風邪の代表的なウイルス
主な症状としては発熱、のどの痛み、胃炎や下痢などの消化器症状、目の充血、目やに、発疹
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
長い、グダグダ、オチなしで完全なる不完全燃焼で申し訳ないorz
完全に夏風邪をテーマじゃなくてもただの風邪でも良かったんじゃないか、とか書き終わってから思ったことは内緒です(°∀°)
そして挿絵を描いてくださった泉璃様ありがとうございます!!
ツナが目茶苦茶いいどや顔で惚れ惚れしました!
まとまりのない文でしたがここまでお付き合いくださった方、少しでも楽しんでくださった方
ありがとうございました!
その更新の内容ですが、志乃さんプレゼンツの
夏(6、7、8月)にまつわる小説で萌えを補給して、暑い夏をやり過ごそうぜ!っていう企画
に参加させていただきました!
詳しくは志乃さんの【小説リンク集】3つな小説企画【夏】 ページまで
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
08/29 泉璃さんの挿絵追加
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
誰か泣いている?
アレは誰?
暗くてよく見えない
そっとツナヨシが近くに寄ろうとすると壁が、目に見えない壁が邪魔をする
これ以上近くにいけないのならばせめてあの泣いている人が少しでも安心できるように遠いけど一番近いここにいてあげよう
暫くすると暗闇にも目が慣れてきたようで段々見えてきた
あそこにいるのは誰?
服も、顔も、背丈も同じ
アレは俺?
いや違う、あれは――――綱吉だ!
「綱吉!ねぇ、どうして泣いてるの?今そっちに行く!」
そういいたいのに空気が震えない、震えたとしても壁で届かない
――泣かないで、おねがい!
どんなに伝えたくても伝わらない、声がなくても近くにいけば伝える方法はたくさんあるのにこの壁がそれを許さない
――そう、この壁があるからいけないんだ!
気付いたツナヨシは直ぐに炎を灯し壁に向かってイクスバーナーを放った
壁はそれに耐えた
甘かったか、そう思い壊れるまで炎を放ち続けた
しかし壁は傷1つ付かない
壁の向こうではいまなお綱吉が泣き続けている
――このままの炎じゃダメだ
今までとは比べ物にならないくらい炎圧を上げて綱吉と自分の間にある邪魔な壁にイクスバーナーを放った
今までびくともしなかった壁はついに最大の炎によって破られた
イクスバーナーの炎は勢いそのままにその先にいた綱吉にまで襲い掛かった
「え…綱吉っ!?」
やっと壊れた壁をくぐると声が戻ってきた
声が戻ったことにも気付かずにツナヨシは己の半身に駆けた
ツナヨシ渾身のイクスバーナーを直接受けた綱吉は虫の息
――オレの炎で綱吉を傷つけた?いやその前にこのままだと綱吉は…
その先を考えてしまったツナヨシは必死に綱吉の身体を抱えて揺さぶる
「いや、綱吉!いかないで。オレをおいてかないでっ」
「―ナ、ツナ!」
「ん…あれリボーン?ここは?」
ツナヨシが目を開けるとそこには見慣れた家庭教師に天井が写った。
「なに寝ぼけてんだ?ここはお前の部屋だろうが」
リボーンは息を吐きながらツナヨシの勉強机にもたれかかった。
「このくそ熱い夏に風邪を引いたバカが大人しく寝ているか見に来たらうなされていたから起こしたんだよ」
「そっか、そういやオレ風邪引いてたんだっけ」
「夏風邪は長引きやすいっていうが本当にその通りだな」
風邪を引いて既に6日もたっているのになかなか治らずにいた。
ツナヨシは頭にあったぬるくなってしまったタオルをどけて上半身をベッドから起こすと同時に部屋のドアが開いた。
「綱吉!!…よかった」
小さな鍋、水の入ったコップにコーヒーがのったお盆を持った綱吉が入るとツナヨシの目からは涙が流れた。
入って直ぐに大事な人が泣きだした状況に綱吉は慌ててお盆を机の上に置きベッドの傍に寄った。
「どうしたんだ、ツナ?リボーンに何かされたのか?」
「おい、綱吉。なんでそこで俺が出て来るんだ?」
綱吉が入ってきて泣き出したツナヨシを見て先ほどうなされていた夢の内容がおおまか分かったと思った矢先に綱吉からの言葉。
「え、いやだってリボーンしか部屋に居なかったから」
「失礼なやつだな、そこのバカは熱のせいでお前に関する悪い夢をみたんだろうよ。それでお前を見て安心した、そんなとこだろ」
「そうなのか、ツナ?」
確認のためにベッドの方を見ると涙を拭いながらツナヨシは小さく頷いた。
「はら、俺は大丈夫だ」
安心させるために優しい手つきでツナヨシの頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。
「おかゆ作ってきたから食べるか?」
「綱吉がつくったの?」
「あぁ、作ってる最中に骸が来て手伝ってくれたんだけどな」
あーん、と綱吉に食べさせてもらっていたツナヨシだったが聞き捨てならない単語がいくつか聞こえて食べていた口の動きを完全にとめてしまった。
「ねぇ、綱吉?ムクロってあのムクロ?」
禍々しいオーラを発しながらツナヨシはムクロについて質問する。
傍観に入っていたリボーンは泣いたり笑ったり鬼のようになったり忙しい奴だなと思いながら綱吉に持ってこさせたコーヒーをすすりながら再び教え子二人を眺める。
「あの、っていうのがわからないけどこんな珍しい名前なんてそうそういないだろ?」
綱吉が言うとおり“ムクロ”なんて名前は珍しい。そしてツナヨシが思い浮かべる“ムクロ”という名前が付く人物は燃やしたいモノNo.2の六道骸しかいない。ちなみにNo.1はぶっちぎりで白蘭なのだがここでは関係ないだろうとおもい心の中で無視をする。
再び綱吉におかゆを食べさせてもらいながら心の中で骸と次に合ったときに勝手に家に入って綱吉とご飯を作ったことに対してこらしめてやろうかと考えていると燃やしたい人物No.2が部屋に入ってきた。
「パイナップ…じゃなかった、骸」
「貴方、わざとでしょう?」
「何のこと(☆ω☆)」
綱吉にばれない角度で骸にどや顔を決めてみると骸が何か言うために口を広いたが綱吉の言葉によって遮られた。
「骸!ツナはそんなひどい事わざとするような奴じゃないって知ってるだろ?きっとちょっと口が滑っただけだ!」
「綱吉、貴方も結構ひどい事言っていることに気付いてますか?」
ツナヨシのフォローに回ったために起きた骸への二次災害。勿論綱吉が気付くはずがなく、逆にツナヨシはフォローしてくれたことに対して満面の笑みを浮かべる。
「そうだよ、オレがそんなひどい事するわけ無いだろ?不法侵入のパイナップルはさっさと出て行け!」
「仮にも貴方が今食べ終わったソレは綱吉二人で作ったとはいえ半分以上僕が作ったから食べれるものになっているんですよ?」
確かに料理が出来ない綱吉一人では食べ物になっていなかっただろうがそれとこれは別問題。
そしてツナヨシは骸の口から綱吉と二人で作ったという事実が分かったので、すっと立ち上がり病人とは思えないほど大きな炎を出していた。
「ちょ、どうしてこちらに手を向けてイクスバーナーを撃とうとしているんですか?その前にツナくん本当に風邪引いているんですか!?」
「骸の分際で綱吉と料理を作るなんて許されることじゃないでしょ?それに風邪だって引いてるよ、それの所為で最悪な夢見だったんだし」
ふん、と可愛く起こって焼きパイナップルを完成させるために目を開けておくのも一苦労なほどに炎圧をあげた瞬間、部屋からオレンジの炎が消えた。
急に電灯だけの光に戻ったために目を慣らすのに時間がかかったが全員がもとの光になれツナヨシのほうに目を向けるとツナヨシはベッドの上に倒れていた。
「おい、ツナ!」
「落ち着け。熱があるのにはっちゃけすぎただけだ、そのままそっとしといてやれ」
抱き起こそうとする綱吉に的確な指示を出してこうなったある意味での元凶の方に身体をむけた。
「骸、お前はこのバカが倒れている間にさっさと帰っちまえ。あんな炎を家の中でぶっ放されたらこの家がもたねーからな」
「僕より家の心配ですか?」
「ったり前だ。お前は殺しても死なねーだろ?」
「貴方には言われたくない言葉ですがね」
皮肉を皮肉で返した骸に今度は思い人からの声。
「今はあんまりツナに無茶させたくないから悪いけど今日のところは帰ってくれないか?」
好きなヒトから少し頭を斜めにしてお願いされて断れるほど大人ではなかった骸はしぶしぶ帰ろうとすると横で楽しそうにリボーンが笑っていたのでそれに一睨み入れてから部屋を出て行った。
災難だった、と思いながら家をでると上から声が降ってきた。
「今日は手伝ってくれてありがとな、骸!」
ブルーだった気持ちもたった一言で飛んでいき骸は帰っていった。
ツナヨシが倒れて寝ている間に、と綱吉は食べさせ終えたおかゆの鍋を持って降りることにし、部屋から出て行った。
綱吉が部屋に戻るとリボーンは携帯で誰かと話しているようだったので邪魔をしないようにそっと歩きベッドの横に移動しツナヨシの様子を見ることにした。
「綱吉、そこの窓あけとけ」
いつの間にか電話が終わっていたようで窓に近かった理由も分からないままに綱吉がしっかり窓を開けられたことを確認してからひとつ欠伸をして机にもたれかかった。
「やぁ、見舞いにきてあげたよ」
開けたばかりの窓から大きなバスケットを持った雲雀が入ってきた。
「ヒバリ!なぁ、いつも思ってたんだけどここ二階だぞ?」
「それがどうしたの?僕には関係ないよ」
今まで疑問に思っていたことを一瞬で返され返答に困っているとリボーンが雲雀の方に寄っていった。
「感謝しろよ、ヒバリ?さっきお前から電話がかかってきて、どうせ窓から来るだろうと思ったから窓を開けさせといたんだからな」
「そのためだったのかよ」
綱吉のツッコミは両方にむなしくスルーされるに終わった。
「わざわざありがとね。で、肝心のツナヨシは夢の中かい?」
窓枠に掴まったままであった雲雀は丁寧にクツを脱いでから部屋に入りベッドで横になっているツナヨシに目をやった。
「あぁ、お前が来る前に変態パイナップルを燃やそうと炎出してぶっ倒れたんだ」
「あいつの方が先にきたってこと?」
「まぁ、本人はツナが風邪引いてたことをしったのはここに来てからだろうけどな」
要らない情報を吹き込まれた雲雀は苛立ちをあらわにし、それをみてリボーンがクツクツと笑いながら楽しんでいるとツナヨシがもぞもぞとうごいて目を覚ました。
「起きたかい、ツナヨシ?」
「うん、…ってあれヒバリしゃん?どうしてここに?」
「君が風邪を引いたって聞いたから見舞いに来てあげたんだよ」
起きたてで呂律が回らないツナヨシに手に持っていたバスケットをツナヨシに差し出しちゃっかりツナヨシの横に座る。
「えへへー、ありがとうございます!やっぱりヒバリさんは優しいですね」
何かな?と首をかしげながら楽しそうにバスケットの上にかぶさっていた布を取るツナヨシを横目にヒバリは予想外のツナヨシからの可愛いく、そして嬉しい攻撃にやられないように努力していた。
「わぁ、いっぱいの果物が入ってる!リンゴ、バナナにブドウそれにメロンまで!オレ、メロン大好きなんですよ♪」
「それ食べて安静にしとくんだよ」
はい!と大きな返事に一瞬だけ微笑んで雲雀は再び窓から帰っていった。
「ヒバリの腰抜け、逃げたな」
「逃げたって誰から?」
雲雀が去ってからのリボーンの呟きが聞こえていた綱吉がリボーンに問いかける。
「寝起きツナからに決まってるだろ」
更に訳が分からなくなり首をかしげた綱吉だったがリボーンはそれに気付きながらも答えようとせず、色とりどりのフルーツバスケットを見つめながらはしゃぐツナヨシからバスケットを取り上げた。
「あ、何するの!リボーン」
急に雲雀からのお見舞いの品を取り上げられてむくれるツナヨシにリボーンはため息をつきながらドアを開く。
「オレが剥いてきてやるから大人しくしとけ」
それでもツナヨシが抵抗してきたので、
「炎出したらぶっ倒れるくらいに体力おちてんだろ」
といってツナヨシがうなだれたのを確認して階段を下りていった。
リボーンが部屋から居なくなって直ぐにツナヨシがベッドから起きようとしたので綱吉が注意する。
「大人しくって言われただろ?」
「だって朝からずっと寝てるんだよ?もう寝れない」
「ダメだ」
綱吉の短くも強い威力を持った一言でしぶしぶツナヨシはベッドに戻った。
「じゃ、大人しくしとくからいっぱい話そうよ」
それくらいならいいか、と綱吉は思い何か会話のネタになるものを考えてふと部屋に入ってきたときの事を思い出した。
「そういや俺が入ってきたせいで泣いただろ?リボーンはあぁ言っていた本当のところはどうなんだ?」
思い出させるのは悪いかな、と思いつつも自分で改善できるところがあるのならば、と考えた。
「ん、アレねー。半分正解で半分外れかな」
そういって夢の内容――壁を壊そうとイクスバーナーを放つとその先に居た綱吉に当たり重症を負った事――を全部ではないが語った。
「…俺はツナを残していくなんて事なんて絶対にしない。二人はいつも一緒だ!」
話し終わり思い出し泣きをしそうになっているツナヨシを抱きしめながら静かに、しかし力強く言い放つ。
「ありがと、綱吉。もう大丈夫だよ。これ以上引っ付いてたら綱吉にまで風邪が移っちゃうよ」
いつもなら自分から離れようとはしないのだが今日はツナヨシが本気で移ることを心配しているようであったので綱吉は大人しく抱きしめることをやめた。
「別に俺に移ってツナの風邪が治るならそれでもいいけどな」
「それは絶対にダメ!もしそうなったら許さないからね?」
綱吉の方を真っ直ぐに見据えて本気で許さない、という雰囲気をまとう。
「絶対に風邪引けないな」
そうだよ、とツナヨシが笑ってつられて綱吉も笑っているとリボーンがうさぎりんごを乗せたお皿を持って入ってきた。
「これリボーンが作ったの?」
ツナヨシがお皿をのぞくと耳の部分にまで細かいデザインが入れられておりうさぎだけではなくどう作ったのか分からない白鳥を象ったりんごまであった。
「当たり前だろ?今日はママンも皆出かけてこの家には三人しかいねーんだから」
「そうだけど…」
じっとお皿に乗ったりんごを見つめているとリボーンがその中のひとつを手に取った。
「いらねーんなら食わなくていいんだぞ?オレが食うからな」
「食べる!オレ、りんご大好きだもん!ただもったいないって思っただけだもん」
「こんなもんいつでも作ってやるからさっさと食って寝ろ」
リボーンには逆らえないので綱吉の時とは違いはーい、と大人しくりんごを食べ終わるとベッドに横になった。
先程のおかゆにリンゴ、そして二人が傍にいるという安心感からかツナヨシは直ぐに眠りに落ちていった。
「遅くなっちまったがオレ達も昼飯でも食うか」
完全に眠りに入ったことを確認したリボーンは綱吉を連れてリビングへ行くために部屋を後にする。
「早く治るといいな」
「これ以上長引いたらシャレになんねーからな。治ったらもう夏風邪なんてひかねーようにねっちょり鍛えなおしてやらないとな。ほら、さっさと行くぞ」
「…ツナ、早く治すんだぞ!」
ツナヨシが聞こえていないと分かっていても応援せずにはいられない綱吉だった。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
エンテロウイルス:
夏風邪の代表的なウイルス
主な症状としては発熱、のどの痛み、胃炎や下痢などの消化器症状、目の充血、目やに、発疹
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
長い、グダグダ、オチなしで完全なる不完全燃焼で申し訳ないorz
完全に夏風邪をテーマじゃなくてもただの風邪でも良かったんじゃないか、とか書き終わってから思ったことは内緒です(°∀°)
そして挿絵を描いてくださった泉璃様ありがとうございます!!
ツナが目茶苦茶いいどや顔で惚れ惚れしました!
まとまりのない文でしたがここまでお付き合いくださった方、少しでも楽しんでくださった方
ありがとうございました!