- 天童 荒太
- あふれた愛
勝手に採点 ☆☆☆
心に病を負った人たちをめぐる短編集。
天童氏の文章は何か圧迫感、閉塞感のようなものを
感じるが本書も同様。
育児ノイローゼに陥った妻をフォローできず、突然に別れを
切り出される夫。
本書では幼児虐待、自殺未遂といった深刻なケースだが、
同じようなシチュエーションに遭遇した経験をお持ちの方は
数多くいるはず。
それでも最悪の事態を免れ、ラストにはかすかな光が差し込む。
もっと複雑なのは、架空のボーイフレンドとのデートに生きる
若い女性の話。
ここまで深刻かつ異常な精神状況に陥った原因は不明だが、
無理やり心を開かせるのは無謀なこと。
それも自らの欲望を満たすために・・・。
本編のラストは物悲しく絶望感が漂う。
彼女の心の平穏は一体いつ訪れるのだろうか。