山崎 豊子
不毛地帯 (4)

勝手に採点 ☆☆☆☆

太平洋戦争において大本営参謀として数々の作戦策定に

携わり、陸士、陸大と超エリート街道を驀進した壱岐正。


終戦に際して停戦命令書携え中国に赴き、自身の意思で

そのまま現地に残った故に10年を超えるシベリア抑留の

辛酸を舐める。


帰国後、関西の繊維系老舗商社「近畿商事」に入社し、

持ち前の冷静な戦略眼と巧みな組織作りによって異例の

昇進を果たし、日本を代表する商社へと変貌させる。

山崎氏得意の実在のモデルをテーマとして、そこへ巧み

にフィクションを織り込むことで一級のエンターテイメント

に仕上げている。


一般には瀬島龍三氏がモデルといわれているが、当人と小説

の人物では全くの別物に仕上がっていることだろう。


また、特に注意しなければならないことは、白い巨塔や沈まぬ

太陽にも共通する人物像の単純化。


それと善悪の対決の構図があまりにシンプルであること。

虚構としてはとても楽しめるが、現実はこうも単純じゃない。


このあたりがなまじ膨大な取材に基づいた事実を散りばめ

ながら物語を構築しているので常に賛否両論が巻き起こる

所以。


しかし、当時と現在の経済情勢では隔世の感。


特にアメリカ自動車産業の日本進出に強烈なアレルギーを

起こす政府、役所、経済界。


今ではトヨタ、日産、ホンダがアメリカをはじめ海外進出で

大成功をおさめ、凋落したGM再建のため、トヨタが手を貸

すような構図に。


一方、石油開発は相変わらず。先日もこんなニュースが。


「新日本石油と石油資源開発、帝国石油、国際石油開発、

三菱商事の5社は3日、リビアで行われた石油・天然ガス

鉱区の国際入札で採掘権を落札したとそれぞれ発表した。

日本企業が同国で権益を獲得したのは初めて」


石油資源の乏しい日本がアメリカのメジャー相手に石油鉱区

を獲得するのは今でも厳しいらしい。