著者: 宮部 みゆき
タイトル: 本所深川ふしぎ草紙

勝手に採点 ☆☆☆☆

回向院の旦那こと岡っ引きの茂七親分が本所深川七不思議に
まつわる難事件を解決する痛快時代小説。

作品の完成度としては申し分ない出世作。

「初ものがたり」の前作になるようだが、短編の上、一話完結なので
後から読んでも全く違和感を感じさせない。

七不思議から着想した物語は、ミステリータッチで展開しながら、
意外性・独創性に溢れ、終盤は人間性の本質を衝く情愛
で爽やかな感動を誘う。

江戸庶民の悲喜交々が散りばめられ、うまいなぁ~と唸らせる
筆致が冴えわたる。

印象に残ったのは「片葉の芦」と「落葉なしの椎」
どちらも父と娘の運命的な対立が生んだ悲劇。

「片方にしか葉が付かない芦」と「落ち葉が見あたらない椎の木」
という謎からここまで練り上げられたストーリーに発展させる
才能には感服。

さらに特筆すべきなのは、悲劇に見舞われながらも、前向きに
逞しく生き抜く下町庶民の力強さを瑞々しく浮き立たせる手腕。

また読みたくなってしまうのは、こうした希望が照らす作品自体
の聡明さ明るさに起因するのだろう。

義理人情に厚く正義感の強い茂七の人柄はやはり魅力満点。
ただ、それぞれの事件の主役を主体に描かれるため、内心が掴み
にくく、少々物足りなさが残るのが唯一の不満

やはり本シリーズの続編が強く待たれるところ。

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