著者: 吉田 修一
タイトル: パレード

勝手に採点 ☆☆☆☆
 
第15回山本周五郎賞受賞作。

奇妙な共同生活を送る若い男女5人の日常と生き方。
それぞれが悩みを抱えながらも、現実に折り合わせをつけ
暮らしている中で起きるある事件・・・。

自分もかつて味わったせつなさやほろ苦さを再体験できる
懐かしい感じとうらやましさが複雑に交錯。

それぞれの視点で物語が進行するというメリハリの効いた、
分かりやすい構成に好印象。

特に「真実という言葉に真実を感じない」と言い切る頼りな
さげな大学生には親近感を感じる。

ストーリー的には、ラストに用意された落とし穴には全く気
づかなかった。突然サイコホラーに急転するあたりは、なか
なかうまい持っていき方。

ただ、日常に潜む狂気に薄ら寒いものが走るものの、あまり
に唐突すぎて容易に飲み込めない。

長い道のりを旅した終着駅で電車が脱線した感じ。あれって?

でも、それが不自然とか、受け入れられない訳でないから不
思議な感覚にとらわれる。

一見和気藹々とした中にも、決して一線を越えない目に見え
ない壁の存在。

彼らの無関心さが故意にやってるの?との疑念から、事件の
前後で不気味なコントラストを醸し出す。

それがラストに彼が感じた疎外感か?

核家族化が進み、テレビゲームに熱中し、個人が尊重されて育
ったせいか、一人でいることに苦痛よりもむしろ幸福を感じる
世代。

チャットやブログのように表面的なつき合いだけで、心を通わ
せた交流や他人を思いやる倫理観、優しさが欠如した世代。

この世代が誰でも抱えて生きる寂寥感や焦燥感をリアルに浮かび
上がらせ、スポットをあてた功績は大きい。

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