著者: 京極 夏彦
タイトル: 豆腐小僧双六道中ふりだし

勝手に採点 ☆☆

江戸時代の妖怪「豆腐小僧」が様々な妖怪たちとの出会いを経て成長
していく自分探しの旅を描く異色作

まず驚かされるのが本の形。スクエアに近く分厚いため、ちっとした
箱のようなユニークさ。

そして、それに負ていないのが主人公の「豆腐小僧」
キャラや容姿が脳天気で微笑ましく憎めない。

すぐに忘れる鳥頭のくせに以外と鋭いところもある。
よこしまな考えがない天真爛漫、無垢な性格に敵はいない。

著者の妖怪に関する造詣の深さには改めて驚嘆させられるが、
いつものような重苦しさとは無縁のおふざけ半分の語り口、
人間くさい妖怪たちに肩肘を張らずに気楽に楽しめる。

語り手は現代、舞台を幕末に据え、時にツッコミやジョークを
交えながら、軽妙なタッチでミョーに明るい展開。

宇宙人やエステなど説明に使う喩えが今風で面食らう場面も多々
あるが、ユーモアたっぷりでそこはご愛敬。

これまでの京極先品にはないコミカルな作風に驚かされる。

ただし、前半部分の新鮮さとを通り越してしまうと、後半に訪れる
狐軍団vs狸軍団の争いあたりから、ページをめくるペースが鈍って
しまう。

挿し絵や画像がないので、妖怪の容姿や密談の様子が掴めず、
登場人物の多さから誰が話してるのか理解できなくなる。

それと妖怪が語る出自などの蘊蓄のオンパレードにバテ気味に。
終盤はまだこんなにページが残ってるの?と思いたくなる。

唯一納得できた蘊蓄が「幽霊から個性をなくしたものが妖怪」とのこと。
確かにお岩さんには強烈な個性・名前があり、河童や一つ目小僧には
太郎とか固有の名前がない相対的概念。

しかし、それだけ知るにはちっと長すぎる分量である。
マンガにした方が絶対おもしろい。

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