著者: 福井 晴敏
タイトル: 終戦のローレライ 上

勝手に採点 ☆☆

太平洋戦争終結間際、一隻の潜水艦が敗戦国ドイツから引き渡
された。

それは、連合国軍から「シーゴースト」と恐れられ、ローレライ
と名付けられた特殊防御システムを装備した秘密兵器。

日本名「イ507」に与えられた特殊任務とは一体何か?
終戦を秒読みに控えた戦局に奇跡を起こすことが出来るか?

はっきり言わせてもらうと長すぎる!

難解で不可解な修飾語のオンパレードにうんざりすると同時に、
全体に流れているはずのスピード感、リアル感が希釈され、
インパクトが薄れてしまったのが残念でならない。

戦闘シーンや艦内の緊迫した状況描写に注力し、ボリュームを
1/4程度に抑えた方が良かったのではないか。2段書きの上下巻
という文量に甚だ疑問を感じる。

内容的には、「亡国のイージス」に「Twelve Y.O」をミックス
させ、太平洋戦争で味付けをしたと言ったら言い過ぎか。

ローレライ収容における折笠上工の奇跡的活躍、完璧な日本語を操る
日系ドイツ人将校とその妹、敵の猛攻を退け、駆逐する艦長の悪魔的
な繰艦技術など、どれをとってもいささかご都合主義が目立つ。

そして、その長さとともに決定的な違和感は、反乱の動機。
日本国家の切腹?なんだそれって感じでどうにも理解できない。

確かにエリート将校の翻意にもっともらしい理屈が必要なのは
分かるが・・・。

と批判ばかりしたが、南方戦線でのカニバリズムを描いた悲惨さ、
悲壮さには思わず心を打たれる。

実際に同じ経験をせざるを得なかった方々もいたに違いない。

潜水艦の戦闘行為という文章表現が困難である部分でも、迫力ある
スリリングな展開に引き込まれる部分も多い。

特にラストの「イ507」は圧巻。切なさと悲しみが心に深く沁み入る。

この分野での第一人者である著者の才能を実感できるとともに、
その欠点にも直面せざるを得ない複雑な作品である。

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