著者: 横山 秀夫
タイトル: 出口のない海
勝手に採点 ☆☆
時代は太平洋戦争末期。
かつて甲子園の優勝投手として活躍し、大学時代はヒジの故障に
悩まされながらも、魔球を完成するべく苦闘する主人公。
しかし、時代の荒波は容赦なく押し寄せ、彼は海軍が開発した
人間魚雷兵器「回天」へ特攻隊員として乗り込むが・・・。
学徒出陣兵のあまりに短すぎた青春・・・。
日本の軍部が如何に無能で、犠牲を無理強いした精神論を振り
かざしていたかを痛感させる。
主人公が語っているように、敗色濃い戦局をちっぽけな魚雷特攻
で変えられるわけがないはず。それでもやらざるをえなかった悲劇・・・。
これまであまり明らかにされていなかった「回天」にスポットを
あて、軍部の行った愚策を後世に伝える功績は認められる。
それと題名のマッチングはお見事というしかない。
だが、小説としてはいつもの迫力に欠け、薄っぺらい印象でいささか
物足りない。野球部や軍隊仲間の描写が中途半端で真に迫って
いない。恋い模様もいたってありきたり。
主人公が固執する「魔球」と「戦争や特攻」というテーマの結びつきが
希薄すぎて、感情移入がしづらい。女房役の剛原が早々に退場してしま
うのも肩すかしの感。
何より落胆してしまうのは主人公の結末。
いくら何でもこりゃー可哀想すぎる!
ご都合主義の犠牲になったラストもいただけない。
影があり渋い北は魅力的だったが、これではただのいいお爺ちゃん。
ところで沖田はどうなったの!?
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