私は、一つの

 

新たに宿った命を守ることもできず

 

中絶することに本日サインをしました。

 

2020年11月29日

愛した女性と結婚し、共に暮らし始めました

 

嫁となった彼女との間に2021年1月4日お腹に新たな命を授かることができました。

 

私は泣きながら喜びました。

 

初めての子供、新しい家族、夫婦の結晶

 

しかし、この時から

いや、出会った以前から運命は狂っていたのでしょう。

 

産婦人科での検査も2回目、その後母子手帳をもらいました。

 

1回目の時よりサイズも2倍程度大きくなり子供の成長の早さに驚きと喜びが掻き立てられます。

とても元気ですくすく育っていると聞いたとき飛び上がりました。

 

しかし、喜んでいるのは自分だけでした。

 

その時には私が数日の出張の関係で妻はその間自宅に帰ると言い、何かにつけて帰ってきませんでした。

あったのも診察の時だけで結婚生活も、ひと月程度

 

一緒にいた日だけではもっと短いでしょう

 

そして運命の2021年2月6日

 

突然、離婚してほしいと嫁より電話

理由を言う前に「赤ちゃんはおろす」

 

何を言っているのか頭が追いつきませんでした。

しかし、あまりにもたんぱくな言い方に怒りも、悲しみもなく冷静に話を聞くことができました。

 

曰く、出会ったころからいい友達感覚であったが特別好きなわけではなかった

曰く、告白も、プロポーズも、赤ちゃんができたことさえもうれしくなかった

曰く、家や式の準備しているのもどこか他人事でやってるなーという気持ちしかなかった

曰く、ドレスを着て式をする夢はかなった

 

まだまだあるが結論、付き合ったのも結婚したのも、子供ができたのもすべて流れ

あまつさえ、本当に好きな人と式と子供を作りたいと言い運命の人と出会うために今の子供は

 

邪魔

 

そう言い切りました。

 

その言葉を聞いた時点で、気持ちは一気になくなりました。

 

命を何だと思っているの?自分のお腹にいる子を少しでも愛してあげれないの?

 

生んでほしい、懇願しました。

その子は生涯を持って俺が必ず育て上げると

 

生むのは確かに女性、リスクもあるのは承知してます。

 

しかし、彼女にとってお腹の子は邪魔な存在でしかなく生む気はさらさらないみたいです。

 

もともと俺に気持ちがなく、別れてしまうのはいい

 

ならばなぜ子供を作ることを自分から提案した?

こんな簡単にできるとは思わなかった?ふざけるな

 

そして彼女は最後まで私にも、ましてやお腹の子に対しても謝罪をすることはなかった

ただ時間がないから早く決断してとだけ伝えてきました。

 

次の日予約をしていた産婦人科に行ったみたいですが、そこで撮ったエコー写真はもらってきませんでした。

私は言葉通り病院に泣きつき、最後になるかもしれない我が子の姿を見せてほしいと言いましたが、病院から断れました

個人間のやり取りのため、夫であっても答えられないと

 

今までの2回の写真は私がアルバムにしています。

 

少しでも愛情があったのであるのであれば自身の子の姿を残したいと思うはず

思ってほしかった

 

私は泣きました。33歳になって、3日間泣き続けました。

何度も懇願し、何度も説得をしましたが、彼女が残り半年その子を育ててくれるとは思えません

生まれても、その子を愛してくれるかわかりません。

 

彼女は妊娠初期にも隠れて自身で車を運転し、遊びや旅行をしてました。

 

現在は妊娠16週、中期です。人の形になってきています。

 

本日私はサインをする代わりに合意書を作成しました。

条件は3つ

1.中絶することは不本意ながら認める

2.手術が終わるまで婚姻関係は継続し社会保険証からも外さない

3.費用に対し、病院からの見積提示の半分15万は出すが、それ以外の費用は彼女持ち

4.手術後の変化は自己責任、そして子供の引き取りと供養は俺に一任する

 

彼女は細かい条件を書いてあるにもかかわらず、よく読まずにサインをしました。

引き取りの話をした時も「助かる」そういわれました

 

そして母子手帳を供養用に欲しいと言い受け取りました。

中には何も書いてない母子手帳

母となるはずだった彼女の名前も何も書いてありません

 

俺だけでも、この子を、生まれてくるはずだったこの子を愛し続けようと決意しました

 

しかし、俺はサインしました

この子の命を奪うことに合意してしまいました。

あきらめてしまったのです。

父親なのに

 

今でもこの子はお腹の中で元気に育っています。

沢山いろんな場所に連れて行ってあげたかった

沢山のことを、世界はこんなにきれいなんだと

 

そんな我が子に光を見せてあげることなく、俺はこの子の手を取ることもせず

 

サインをしてしまいました。

 

空の青さも、太陽の温かさも知らぬその子の手を取ることなく

 

いくらお寺に話を聞きに行っても、葬儀場に話を聞きに行っても、この子を愛すといっても

 

命を奪ったのは俺自身の決断なのですから

 

お金なんていらない

俺への謝罪なんていらない

 

俺は彼女に言いました

せめて、たとえ失ってしまう命だとしても

その時まではお腹の子を愛してほしいと

 

彼女にその言葉が届いたかわかりません。

書類を持って立ち去る彼女を私は見ることしかできません。

 

私は、自分が許せません

いくら謝っても涙が出ます

 

この子は人の意思で、自身の親の意志でその生涯を終わらせてしまうのだから

 

予定日は2月18日

 

祈ることしかできない私を、守ることのできなかった私を、何もできない私を、許されるのであれば祈らせてほしい

 

せめて罪も穢れもない我が子が安らかに眠れることを祈ります。