自分を偽ったまま、僕は高校生になった。



これといって、将来の夢や目標はハッキリしていなかったし、特に真剣に勉強をしてきたわけでもなかったので

近所の友達が志望する高校に、ついて行くように受験をして、テキトーに選んだ学校に、テキトーに受かってしまった。



今考えれば、もっと先のことを考えるべきだったと思うが、高校3年間はとてもいい経験になったし、後悔はしていない。



今こうして、僕が僕として生きているのは

高校時代の経験や、友達のおかげだと思っている。









僕はかなり人見知りをするタイプで

友達はすぐにできなかったし、必死に作ろうとも思っていなかった。


なんとなく、そのうち友達はできるだろう

そのくらいの心持ちで話かけた女の子(ヒヨちゃん)と、3年間同じ部活で共に過ごすことになった。







きっかけは一年生の時に課せられる

1週間の部活動の仮入部。


部活に入る気がなくても、必ずどこかのクラブに体験に行かなければならなかった。




僕はクラブには入らず、バイトをするつもりだったから、教室から近い部活や、あまり動き回らない楽な所を選んで、ダラダラと練り歩いていた。



しばらくして、初めての中間テストを終えると

一年生が本格的に部活動を始める時期になった。




僕と違って真面目なヒヨちゃんは

1週間ずっと、演劇部の体験に行き続けたらしく

先生にも勧められて、入部したらしい。


だけど、ひとりぼっちで部活に行くのも寂しいし

同期と話す機会があまりなくて、友達になれていないんだと言った。





この時、僕はもうすでにバイトを始めていたけど

それが結構ブラックなバイトで、入って3日目辺りから、辞めたくて仕方がなかった。




タイミングよく、僕を演劇部に誘ってくれたヒヨちゃんには感謝しかない。





ただ、仮入部に1回も来ていない初対面の1年生が

突然やってきて体験もせずに入部するなんて、

先輩や先生はビックリしただろうなと、今でも思う。



でも、そんな僕を嫌な顔せず迎えてくれて

のびのびと自由に過ごさせてくれた先生、先輩たちには、本当に頭が上がらない。







演劇部は身体を動かすので、嫌な制服を着ていなくていいし、なにより1番嬉しかったのは「男役」をやらせてもらえるということ。


もちろん、オーディションで勝ち取ればの話だが。





嬉しいことに、何度か経験させて貰えたし、

性別を問わない役にも挑戦できて楽しかった。


スカートを履いて、コソコソと生きている普段の自分と比べると、舞台で男役として立っている時の自分の方が落ち着くし、気持ちが楽だった。



男役をやり始めてから、わざと伸ばした髪を切り、中学生の頃より「自分らしく」居られるようになった。



中学の終わり頃には

「僕はきっと男の子になりたいんだろうな」と

ふんわり考えていたけど、その考えが少しずつ、頭の中で固まり始めていた。