偉い! 仙台市長、「わが故郷に中華街は作らせない」 | 忘れないようにメモメモ(日本の歴史、近代史)

偉い! 仙台市長、「わが故郷に中華街は作らせない」

「市民の生活と安全のために」中国資本進出を拒否した仙台市長梅原克彦氏の〝英断〟
「わが故郷に中華街は作らせない」



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文=山村明義(ジャーナリスト)

 「オンブズマン制度日本発祥の地」といわれる仙台市。この地に、日本の保守の孤塁を守り、現在も一人、気を吐き続けている首長がいる。

 05年8月に仙台市長に初当選した梅原克彦。06年2月、当時仙台市内に計画中だった「仙台空中中華街構想」に反対し、白紙に戻す「英断」を下した人物として、梅原は全国的に知名度を上げた。

 一方、自民党国家戦略本部は、外国人の「1000万人移民計画」を打ち出した。中川秀直元幹事長らが推進し、少子高齢化で悩む日本の労働力不足を外国人労働者によって穴埋めしようという計画だ。それと呼応するように、中国では共産党指導部が、03年の全国人民代表大会(全人代)で、中国企業や資本の海外進出を奨励する「走出去」政策を打ち出した。日本国内に大量のチャイナ・マネーと中国人が流れ込み、特にバブル経済崩壊から立ち直れずに疲弊していた日本の地方経済は、積極的にこれを受け入れている。

 仙台市以外でも札幌、神戸、福岡、東京といった大都市で、「新中華街構想」が続々と立ち上げられ、現在も計画が進行中のものもある。

 そんな中、一見して時代の流れに逆行する決断を下した梅原。その真意に迫った。

 まず、中国資本による「仙台中華街構想」の概要と経緯を振り返る。

 中国側が最初に仙台市に目をつけたのは01年である。横浜の華僑系企業コンサルタントが仙台空港のある名取市に農業用地4万6000㎡を取得し、「仙台中華街」を作る構想を打ち立てたが、その時は誇大な計画が批判され、いったんは中止に追い込まれた。 しかし03年頃から、今度は前回と全く別の中国の投資グループである「中瑞財団」が、仙台市太白区の新副都心「あすと長町」で、藤井黎前市長時代から計画していた「空中中華街構想」の実現に動いた。

 今回、本誌のインタビューで梅原は、その計画の端緒をこう振り返っている。

 「05年秋頃、市の担当部局から報告が上がってきました。浙江省温州市の中瑞財団が、あすと長町再開発の目玉として、その土地を購入し、あたかも竜宮城のような外観を持つ派手な複合商業施設を建設する構想を進めているというのです」


 1万6000平方メートルの土地に、地上9階建てのビルを建設、中華料理店や商店を運営するという計画だった。

 「こういうケースは、前例がなかった。横浜や神戸に昔からある中華街とは別に、東京の立川市の駅ビルやお台場のように、ビルの中でテナント方式の中華街を作るというケースは、全国にいくつかありました。しかし、中国の投資集団が、新規に日本国内の土地を購入し、一つの建物丸ごと中華街を作る、という例は他にない。だから判断は難しかったのですが、市内に一大繁華街・歓楽街が出来るわけですから、市長として慎重な判断が必要だと思いました」

 最初に梅原は、仙台中華街の派手な景観に疑問を呈した。「美的価値観は人それぞれだから主観を押しつけるつもりはないが、このような派手な施設は長町の景観にそぐわないと思う」と周囲の市議などに対して見解を述べ、〝反対闘争〟の狼煙を上げた。

 仙台中華街構想では700人から800人の中国人が新たに就業・居住する計画だった。むろん、中国人が投資話を持ち込むこと自体に問題があるわけではない。市長として民間レベルのビジネスに介入することは大変な賭けでもあったが、梅原はいまも、「チャイニーズコミュニティに土地の所有権が移れば、その人脈でテナントが回り始める。そうなると手がつけられなくなる可能性が高い」と、なかば〝中国人進出は市にとって良くない〟と公言する。

 梅原の念頭には、増加する中国人犯罪があった。

 その頃、仙台周辺では、04年に起きた偽造クレジットカード詐欺事件、05年のドラッグストア集団強盗事件や偽造クレジットカードの原版密輸事件など、中国人が絡む事件が頻発していた。05年、宮城県内で犯罪検挙された外国人122人のうち、中国国籍は89人に上り、全体の約7割を占めていたのである。

 梅原は当時の心境をこう振り返る。

 「これは全国平均の約4割から見ても高い数字です。県外から来た中国人が犯罪を起こしているケースも少なくない。このような時に中華街が出来たら、どんな影響を及ぼすのか。市長には、街づくりを考える上で、現在の、あるいは将来生まれてくる子供たちを含めた、市民の生活や生命を守る使命と責任がある。これが大事な視点だと思いました」

 しかし当時、構想を好意的に受け止めた関係者のなかには、「長町に賑わいを取り戻してくれる良いプロジェクトなのに、なぜ梅原市長は反対するのか」という声も少なくなかった。梅原はこう語る。

 「日本の地方経済は、どこも疲弊していますから、海外からの投資話にすぐに飛びついてしまう傾向がある。私も他の首長から〝投資をしてくれるのだから、アメリカでも中国でもいいじゃないか〟と言われました」