自然に溺れていた日本人
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自然に溺れていた日本人
宮本 それから最近気づいたことですが、日本人くらい白然を粗末に、おろそかに、無茶につかった民族はいないと思いますね。白然を愛しているなんてもってのほかなんです。日本では木を伐っても、すぐあとからはえるので、育てるということを知らないで過してきたんですね。
秋元 それはいえますね。
宮本 日本の都会で、ほんとうにすばらしい森を持っている町はない。考えてみると白然を愛したのじゃなくて自然に溺れていたのです。昔から白然を破壊してきたのですが、今とちがって昔は破壊してもすぐ復興があったけれど、今は破壊の仕方がひど過ぎるから復興のしようがない。
秋元 そうですね、奈良なんかもひどくなっておりますね。
宮本 近ごろ行っていないのですが、そうでございましょうね。
秋元 たとえば御陵のまわりの濠がございますね。あれをみな下水の排水溝に使っているのです。もうとても見られないくらいに汚れております。
宮本 それともう一つ、日本の町で一番気にくわない、しゃくにさわることは広場をなくすことですね。東京にだっていくつも広場はあったわけでしょう。
秋元 そうですね。
ーー(旅の民俗学 宮元常一)
そんなことはない、と言いたいですが、今の日本の状況を見ると否定できません。
何処の町も同じ様な町並みになってしまいました。名所と呼ばれるところから少しでも離れるとビルばっかり。せめて黄色や赤の派手な薄汚い建物や、パチンコ屋なんつー下品な建物はつぶしたい。