北朝鮮が暴れると儲かるアメリカ
「ロシア政治経済ジャーナル」というメールマガジンから
正直正しいかどうかはわかりませんが、なんだか納得しちゃいました。
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北朝鮮は10月9日、核実験を行いました。
理由は、アメリカが05年9月から実施している金融制裁により、北朝鮮が追い詰められたこと。
ミサイル発射・核実験の目的は、米朝協議をすること。
そして、短期的には、体制を脅かしている金融制裁を解除してもらうこと。(北は金融制裁を解除してくれれば、6カ国協議に復帰してもいいとしている。)
長期的には、核兵器を廃絶するかわりに、体制を保証してもらうこと。
▼金さんが騒ぐと儲かるアメリカ
前号で、北がミサイル発射と核実験に踏み切ったのは、05年9月からつづく、金融制裁が原因だと書きました。
そして、アメリカは北朝鮮との2国間協議に応じない。
この不可解な動きは一体なんなのでしょうか?
実は、北が暴れるとアメリカは非常に儲かる仕組みになっているのです。
7月5日、ミサイル事件後の出来事を見るとよくわかります。
7月8日付読売新聞。
「ミサイル防衛PAC3、配備前倒し…来年中に4基体制
政府は7日、2008年3月末をめどとしているミサイル防衛(MD)システムの地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)3基の配備を前倒しし、07年中にも実施する方針を固めた。
●北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、迎撃体制のシステム整備を急ぐ
必要があると判断した。」
前倒しは金正日のおかげとはっきり書いてありますね。
「防衛庁はPAC3の最初の1基を、06年度末までに航空自衛隊第1高射群の本部がある入間基地(埼玉県)に配備する予定だ。
その後、07年度末までに同高射群の霞ヶ浦(茨城県)、習志野(千葉県)、武山(神奈川県)の3基地に1基ずつ配備する計画だったが、●これを前倒しし、07年中に完了させたい考えだ。」(同上)
「PAC3は1基でも迎撃能力を持つが、4基がセットになると穴のない迎撃体制をとることができる。
政府は配備の前倒しにより、まず首都圏の防御体制を整えることにした。10年度末までには、浜松基地(静岡県)のほか、中部・近畿、九州の両地域にも順次、配備する方針だ。」(同上)
全国にMDシステムが配置される。
大儲けです。(^▽^)
「しかし、北朝鮮のミサイル発射を受け、国民に日本のミサイル防衛体
制への不安が広がっていることから、07年度分だけでも配備を早める
ことにした。」(同上)
まったく金正日さまさまです。(^▽^)
風が吹けば桶屋が儲かる。(^▽^)
北が暴れるとアメリカが儲かる。(^▽^)
7月13日読売。
「北朝鮮から拡散懸念、NATOがミサイル防衛検討加速
【ブリュッセル=林路郎】北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、北大西洋条約機構(NATO)が「北朝鮮から(欧州の懸念する)中東諸国へのミサイル拡散の脅威がさらに高まった」として欧州全体を防衛できるミサイル防衛システムの導入について検討を加速させたことが明らかになった。」
おわかりでしょうか?
極東で北朝鮮がミサイルをぶっ放したことで、ユーラシアの正反対にある欧州でMD導入論議が加速されている。
今回の核実験後も動きが出ています。↓
「ミサイル迎撃計画、前倒しで整備する考え=久間防衛庁長官
[東京 12日 ロイター] 久間章生防衛庁長官は、参院予算委員会で北朝鮮核実験に関連して、ミサイル迎撃のための「弾道ミサイル防衛システム」計画について、前倒しする意向を示した。」(ロイター) - 10月12日
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もう少し具体的に語っていただきましょう。
「イージス艦からの迎撃ミサイルについて「2004年度から予算化し、8年間で整備する計画となっている。PAC─3では、一番早い導入は07年度末となっているが、●こういう状況なので06年度末までに入れるようにと言っている。予算と製造能力の関係もあるため、どれだけ早めにできるか検討したいが、少し前倒しを考えなければいけない」と述べた。」(同上)
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このようにアメリカが金融制裁を継続し、米朝協議に応じず、暴発へ誘導している理由は、儲かるからなのです。
しかし。。。
▼米中情報戦
国連安保理は10月14日、北朝鮮に対し経済制裁を規定した国連憲章7章
41条に基づく制裁決議案を全会一致で採択しました。
「全会一致」というのが非常に気になります。
中国とロシアは今回、どうしてアメリカ・日本の主張に同意したのでしょうか?
これは、北朝鮮を巨悪にすることで、イランを守るため。
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考えてみましょう。
二つの国を見比べてみれば明らかです。
北朝鮮=核兵器保有を自ら宣言し、実験をしたと公言している。
イラン=核兵器を保有していないことは、世界の常識。「核開発は、原子力発電などの平和目的だ!」と一貫して主張している。
どっちが脅威なのか一目瞭然。
しかし、ここが複雑なのですが。。。
イランは「核問題では脅威ではないが、他の問題ではアメリカの脅威」なのです。
皆さんご存知ですね。
「<イラン>石油取引所を開設 ★ユーロ建てで米国に挑戦か
【テヘラン春日孝之】石油大国のイランが石油取引所の国内開設を目指している。取引の通貨が★ユーロになるとの情報が流れ、オイルダラーに依存する
★米国の「ドル支配体制」への挑戦ではないかと観測を呼んでいる。」
(毎日新聞4月17日)」
しかし、アメリカはこの理由を口にできないのです。
イラクは00年11月から石油をユーロで売りはじめ、アメリカに攻撃されました。
しかし、アメリカはその理由について「アルカイダ・大量破壊兵器」と苦しいウソをついていましたね。
公言したら、投機筋がドルを投売り、ドルは暴落し、アメリカは没落するでしょう。
また、アメリカのアキレス腱がばれて、反米諸国が一斉にドル売りユーロ買いに走るに違いありません。
これをアメリカ一極主義対多極主義という観点から見れば、戦術は明らかです。
アメリカは「北朝鮮の脅威はたいしたことない。イランが脅威だ!」とプロパガンダする。
多極主義の首領中国は、「北朝鮮が一番の脅威であり、イランは脅威ではない」とプロパガンダする。
まず、アメリカは実験直後から、「ブラフだ!」「失敗だ!」との情報を流し続けてきました。
例↓
●「<北朝鮮核実験>「ミサイル搭載数年かかる」 米専門家分析」
(毎日新聞) - 10月10日
●「米情報機関、北の核実験に疑い=「典型的爆発ではない」」
(時事通信) - 10月10日
●「北朝鮮の「核実験」失敗か=予告規模、大幅に下回る-CNN」
(時事通信) - 10月11日
●「米政府、北朝鮮の核開発能力を疑問視」
(ロイター) - 10月11日
●米国務長官「米国に北朝鮮進攻の意思はない」
(読売新聞) - 10月11日
● <北朝鮮核実験>ブッシュ大統領「米国は攻撃意思ない」
(毎日新聞) - 10月12日
●「北の核実験実施を確認=1キロトン未満、失敗濃厚に-米」
(時事通信) - 10月17日
逆にイランについて、
例↓
「国連の対北朝鮮制裁、イランの説得に役立つ=米国連大使
[ワシントン 15日 ロイター] ボルトン米国連大使は15日、CNNの番組に出演し、国連の厳しい対北朝鮮制裁が、イランに対して実施が疑われている核兵器開発を取りやめるよう説得する上で役立つ、との考えを示した。
同大使は「今回のことで、★核兵器開発を続ければ現在の北朝鮮と同様
の孤立と摩擦に直面するということを学んでくれればと期待している」と語った。」
(ロイター) - 10月16日14時12分更新
ボルトンさんの、「(イランが)核兵器開発を続ければ現在の北朝鮮と同様~」という発言。
これは、明白にアメリカと世界の人々を洗脳しているのです。
(ウソも100回いえばホントになる)(^▽^)
これは私がいっているのではなく、新聞にも書いてあること。
↓
「 <北朝鮮核実験>イランに「主張訴える」絶好の機会
北朝鮮の核実験はイランにとって自国の主張を訴える絶好の機会となりそうだ。NPTからの脱退を表明して核実験に踏み切った北朝鮮に対して、イランは★NPTとIAEAの傘下での★平和的な核技術開発★を主張している。
イランへの制裁論議は近く本格化する見通しだが、北朝鮮問題を反論の
強力な材料に利用するとみられる。
(毎日新聞) - 10月10日」
多極主義陣営の先兵たるイランは、北の核実験を即座に自国の利益のために利用しています。
↓
「イランが核兵器の所有を非難、北朝鮮の地下核実験で
[テヘラン 10日 ロイター] イラン政府のエルハム報道官は10日、北朝鮮の地下核実験発表に関し、イランはいかなる国の核兵器所有にも反対すると述べた。」(ロイター) - 10月10日
↑
アメリカは、都合の悪い情報なので、思いっきり無視。(涙)
次。
多極主義の首領中国はどう動いたか?
中国は10月9日、核実験直後、北朝鮮の行為を「横暴だ!」と最初から強く非難しました。
10月11日、中国の王光亜国連大使は10月10日、アメリカが9日提示した裁決議案について「適切な内容でなければならないが、何らかの懲罰的措置を取る必要がある」と述べ、制裁決議の採択を容認する考えを示します。
中国が、自国の植民地北朝鮮への「懲罰措置」を支持する。
これは、今までにないことで、世界中がびっくりしたのです。
胡錦濤国家主席は10月17日日、訪中した扇参院議長と会談します。
その時、北朝鮮の核実験について、「北朝鮮に対しては、
国際社会の強烈な反応を知らしめる必要がある」 と述べました。
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さらに、
「胡氏はまた、核実験前、中国がさまざまなチャンネルを通じて北朝鮮に自制を求めた経緯を紹介。
その上で、「遺憾なことに、北朝鮮は我々の勧告を聞かなかった」と語り、北朝鮮が中国の立場を無視したことへの強い不快感を表明した。」
(読売新聞) - 10月17日」
世界を動かすお二人の言葉を比較してみましょう。
胡錦濤国家主席、「北朝鮮に対しては、国際社会の強烈な反応を知らしめる必要がある」(10月17日)
ライスさん「我々はこの危機がこれ以上エスカレートすることを望んでいない。実際、我々が目指すのはこの危機の回避だ」
「米国が北朝鮮を攻撃、侵攻する意図は一切ない」(10月17日)
↑
どうです?
私は、ライスさんの顔を見て、「ああ、マザーテレサのような心の広い人だ」とほれなおしてしまいました。(^▽^)
あたかもアメリカと中国が完全に入れ替わったような印象。(^▽^)
このように流れを追ってみると
1、アメリカは、「北の脅威はたいしたことない」とし、イラン問題に焦点をあてたい。
2、中国は、「北は最悪だ!(イランは全然脅威でない!)」
という、情報戦が行われていることがわかるでしょう。
ロシアについてですが、プーチンさんは10月9日、核実験について、「無条件に非難する。これは朝鮮半島だけでなく、大量破壊兵器不拡散体制に対する重大な打撃となる」と北を痛烈に非難しました。
しかし、その後は中国に追随していただけで、積極的な外交は行っていません。
詳細は省略しますが、ロシアの最重要課題はNATO加盟を目指す旧ソ連国ウクライナとグルジア。
特に、グルジア問題は深刻で、北問題は中国に任せっぱなしなのです。
▼ということは?
ということは、これから?
1、アメリカは、中東・イラン問題に世界の関心をむけるように動く
2、中国は、イランは脅威ではないという世論つくりに動く
(そういえば、
北のミサイル発射は7月5日(北が世界の最重要問題)、
イスラエルがレバノン空爆を開始したのは7月13日。(中東が世界の最重要課題)
これを偶然と確信できる人がいれば、その人は「究極の平和ボケ」とよばれても仕方ないでしょう。)
前回の北ミサイル発射→イスラエル・レバノンに侵攻という流れを見ると、今回も中東で何かが起こる(例、イスラエルが暴れ出す)可能性が高いですね。
そして、北は一時はおさまっても、まだまだ暴れる。
これは世界の注意を中東に向ける(アメリカの利益)、北朝鮮に向ける(中国の利益)情報戦なのであります。
まあ、日本は金さんを「ダシ」にして、憲法改正の世論つくりを進めていきましょう。
しかし、実際の改正は「中東情勢の行方」を見極めた後。
(おわり)
○メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」
発行者 北野 幸伯
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