風流産業 | 忘れないようにメモメモ(日本の歴史、近代史)

風流産業

引用ーー

くだらない問題やくだらない権力者から逃げるのは「風流人」といって日本の伝統である。したがって、昨今の風流な若者はきっと今にいいことをすると思っている。日本中の産業が非常に風流になってきたからである。
 日本は芸術国家であり、もともと日本人は一人ひとりが芸術家なのだと「そして日本が勝つ」で詳しく述べた。その日本人の「芸術力」をアメリカ人が感心して、日本の自動車は風流だ、ハイテクではなく芸術だ、工業製品を一段超えているというようになった。
 これから日本は風流産業で景気が直る。と、そう思ってみると、なるほどという話が出てくる。ソフト化経済センターが、そういう風流な例を集めて来た中の、一例を紹介すれば、徳島県の山奥に上勝町という町がある。こんな山奥の小さな町ではなにもすることがないと村民はあきらめて、することはすることは県庁にいって陳情して、補助金をもらうだけの生活をしたので、あきれた息子と娘は大阪へ行って帰ってこなくなる。それでますます過疎になる。
 そこへ一人の男がやってきて、「ここにはすばらしい資源がある。これを東京、大阪へ売って儲けよう」と言った。すばらしい資源とは葉っぱである。モミジやイチョウ、カキの葉っぱや落ち葉やらを集めて、料理屋へ刺身を飾る付け合せに売ろうじゃないかとやったら、これが大成功。「つまもの」と呼ぶが、年間2億5千万円の売り上げになっている。
 
 葉っぱを集めてお金になるとはアッと驚くが、それもまた日本の底力である。

 調査にソフト経済センターの若い人が行くと、農家のおばあさんが「見なさい。この庭先に木が一本立っている。あの木一本で去年五十万円稼いでくれた。それに比べりゃ、うちの息子は何の役にも立たないから、うどの大木」と言ったそうである(笑)
 これに解釈をつけると、おじいさん、おばあさん一人ひとりが、「この落ち葉は美しい」「これは美しくない」と、全員がそういう風流の心を持っている。
 それを透明なパックの中へきれいに並べて、クロネコヤマトの宅急便に渡すと、徳島空港というほとんどムダだった空港が今や生きてきて、一日で東京・大阪に届く。飛ぶように売れる。

この国の美しい風土は、
他国にはマネができない素晴らしい資源

 面白いと思うのは、村の人に芸術の心があり、輸送に関する社会資本が世界一整備されていて、それから、料亭、レストランが「これはよい、お皿の横に並べたら高く売れる」と思うことである。さらにはお客さんが「いいね」といって、その風流さを買う。アメリカ人にこの話をしたら、「食べられない葉っぱに何で高く金を出すのか」と言われたが、しかし、そういうお客さんが日本中にたくさんいる。
 私はこれを風流産業と呼ぶ。
ーー(「質の経済」が始まった 日下公人 P86)



また日下さんからのメモになってしまった。しかし日下さんみたいな人が、政府の人に意見を言える立場であることはすごくいいと思う。(あんまり意見が通ることはないそうですが)
なにより悲観的じゃない所がいい。アイデアを即効で口に出せる。なんか読んでると元気出る。
しかし実際日本はすごいと思う。十数年の不況の間もODA一兆円以上を毎年出し続けていた(良し悪しは別だが)し、年間GDPは五百兆で横ばい。ほんとじいちゃんばあちゃん祖先の方々は頑張ってくれたなあ。感謝。