自分はテレビをそんなに観ない。

時間をもて遊ぶほどの手術前の入院でもテレビはあまり観ようと思えなかった。

暇なのに。

時事ネタは押さえようとニュースは気になるので観るようにはしているが、

こんな時もお笑いでも観ようかという気にはならなかった。

入院や心臓手術という経験できない事へ、客観的に事実をしっかり見つめたいと思った。

窓からの真冬の風景を見ながら季節感の無い部屋に、現実味がない自分の入院着姿に、何も変化しないように感じるゆっくりとした時間を、噛み締めるように過ごした。

この部屋の窓はどっち向きかな?

少し方向音痴な自分は住んでいる市の街並みが新鮮だった。

ここは4階で、ここからの眺めは勿論初めてだ。

朝、昼、夕と表情を変える景色は物思いに耽るにはとても心地いい。

特に冬の晴天は気持ちいい。朝日の日差しや夕焼けは、これから向かえる手術を現実離れさせてくれた。

 

楽しみなのは食事だ。

入院が初めてなら当然病院食も初めてだ。

美味しくない、味がない等噂では聞いて来たが、こちらの食事は美味しい。

消化器系の病院ではないからか、食事が美味い。

自分は薄味が好きで、丁度いい薄さの味で、旨味も出してくれている。

メメニューも好き嫌いのない自分には全て美味しくいただけた。

ちょっと量が足りないな、と思いながら看護士さんに尋ねた。

1階にあるパンの自販機で買って食べてもいいですか?ちょっと足りないんですけど。

それはダメです。食事で管理しているので他のものは食べないで下さい、と。

腹八分目には届かず腹7分目というところか。

自分は50歳代でこの数年は食べる量が減ったと実感している。

妻からは、よく食べるね、といつも言われていた。

が、体重、体型は20歳代の時とほとんど変わらない。

ジーンズも同じサイズで穿けている。

痩せてはいないが標準体重には達していない。

これが三十年以上変わらない。

体も筋力的には身軽に動けて同年代の者よりは動ける感じだ。

これも又不安要素にもなる。

隠れ肥満というか、検査でしか発見できない疾患が隠れているかもと妻からよく言われたものだ。

でも、大丈夫。

手術前の検査では体は問題無いとお墨付きをもらったし。

足りないけどこれくらいは我慢できるかなと思うようにした。

食事は看護士さんが決まった時間に持って来てもらい、いただける。

食事後は片付けに来てくれる。

至れり尽くせりだ。

食事後、部屋を出て水をくみに出た際に年配の患者さんが自分で食事を下げて廊下にある配膳棚に戻されていた。

そうか、そうするのか、次回から自分でやろう。

自分は術前で動ける。

少しでも動ける機会があるのならやろう。

ちょっと恥ずかしい気持ちを持ちになりながら、そう思った。

 

筋トレも無理のない範囲で続けた。

部屋でできるのは自重筋トレだ。

無理は超えない。

術後、早く立てるように下半身を重点に筋トレには励んだ。

自分は元気じゃないかと思えるほど気持ち良くできた。

1週間寝たきりになるという未知の領域だ。

一体どういう感覚になるのか。

大丈夫、年配の方や後期高齢者の方も元気になり、家に帰っている。

自分は比べたら相当若い。

体力、筋力も早くに回復するに違いない。

 

 

こんな術前の入院生活を送る日々であった。