母が入院して最初の週末、面会の予定を入れていた日だ。
家族の運転で母の好きな甘いおやつの差し入れを持って出かけた。
自宅からクルマで約1時間の距離にある市外の精神科の病院だ。
今まで精神科の病院には自宅から約20分の距離にある病院には家族と自分が療養中に相談に行った事がある。
地域包括支援センターから勧められ、市と連携して対応してもらえると紹介され伺った。
だが、この病院は救急の患者を受け入れてない。
この時の相談以来、精神科の病院はここが2回目だ。
敷地、建物はどちらも大きい。
クルマ1台分の幅しかない道を抜けると、その病院はある。
受付に面会予約の名前を伝え、母の入院している階へ上がった。
その階のナースステーションに行き声をかけた。
中から看護士さしき方が出て来られ、名前を伝え、面会をお願いした。
その方はナースステーションに鍵をかけ、病棟入り口のドアまで歩き、また鍵を出しドアを開けた。
ここはドアの出入りに鍵をかけるようになっているのだ。
ちょっと物々しいというか、緊張感がある。
ふとターミネーター2のサラ・コナーが入院しているシーンを思い出した。
そんなにヤバいのか。
母はここに入院しているのか。
母の病室まで案内してもらい、15分程度の面会を許された。
ノックして病室に入ると母はベッドに横になり本を読んでいた。
家を出た時と同じ服で。
テレビもない部屋で時間を潰せるものはない。
6畳くらいの標準的な広さだ。
どうしてる、と家族が母に声をかけた。
母は、何もない、コップもタオルもない、と静かに怒っている様子。
そうか、精神科という事で、そういった物品も置かない決まりなのか。
家族みんな直感しただろうが、誰も何も言わない。
母は色々不満を言い出し、言いながら泣き出した。
情けない、情けない、と家族を責めた。
おやつを出して機嫌をとろうとしたが、大して効果はない。
それでも少し食べてくれたが、機嫌は直らない。
悔しそうに膝の上に両手握り拳を置き、泣く母。
家族もどうする事も出来ない。
母は、先生も診に来ないし薬もない、何をする為に来たのか、と。
そうなのか、診てもらってないのか、と思ったが、少し冷静になり、今の母の発する話は、どこまで正確かは分からない。
話半分くらいに聞いておいた方がいいか。
あと病院の人に確認するようにしよう。
予定の時間より10分程オーバーしたが、面会をそのまま続けていると、スタッフさんが顔を出してくれた。
スタッフさんに尋ねたい事や確認したい事を話しているが、母は不機嫌そうなまま黙っている。
時間も随分過ぎたし、会話や場の空気がもたず、そろそろ帰るよ、と病室を母と一緒に出た。
病棟の出入り口付近で母と別れ際に話していると、すたすたと歩き自らドアから出る真似をした。
本気で出る勢いではなかったが、おい、と母の腕を掴んで止めた。
こんな感じで最後までお騒がせな母だったが、色々と考えさせられる面会だった。
人と話をする事が大好きで、積極的に人と交流し、行動していたのに。
認知症、予防は出来るのだろうか。
認知機能もだが、精神的な病気もあるように感じる。