先日の日本列島の特に日本海側を襲った大雪。
自分の住む地域でも積雪があり、あいにくの朝の通勤となった。
積雪の恐れがある予報の時は、前夜から落ち着かない。
天気予報は注意して見るようになり、早朝出勤に備えての朝食、昼食の準備と少し慌ただしくなる。
こんな時妻は、自分が早朝出勤が出来るよう食事を準備してくれる。
朝食は自宅で摂らず、その分早く家を出て雪道でもスムーズに行けるようにする。
こんな日は朝食と昼食を持って出かける事になる。
そして早く着いた職場で朝食を摂るのが定着している。
これらの準備をして早く寝るようにしている。
そして早朝。
早く起きてすぐにスマホで職場近くの会社に設置されているライブカメラ映像を確認する。
自分は数年前からこの方法で職場付近の状況を見て、早く出かけるかどうかの判断をしている。
が、恐らく同じようにこの周辺の情報を得ようとしている人が多いのだろう。
この度はアクセスが殺到しているのか、映像がなかなか表示されない。
待っても待っても表示されない。
別のカメラに切り替えても、こっちも表示されない。
みんな同じように観ているのだろう。
時間がいくらでも過ぎるので、諦めて布団から出てカーテンを開け外を見た。
真っ暗の中、屋根がなんとなく白いような、月明かりかと思いながらスマホのライトを当てる。
おいおい雪だ、積もっている。
ここが積雪があるなら、職場は確実に積雪ありだ。
目が一気に覚め、身支度を始めた。
妻も同じように起きてくれ、自分の出勤をサポートしてくれる。
おかげで無事早く家を出る事が出来た。
この時期の通常の出勤時間はまだ薄暗いが、積雪のある日の出勤はまだ真っ暗の時間に出かける事になる。
自宅近くの道路には気温が低いせいで風で吹き飛んだのか、思ったほど積もってない。
道路は乾いており、普段通り走る事が出来た。
自宅近くは行き交うクルマは少ないが、いざ国道に出ると意外と交通量は多い。
やはり多くの人が早く出勤しているのが判る。
順調に職場の近くまで来れたが、近づくにつれて段々と道路に積雪があった。
ここからだ。
ここから山を上っていく。
そして仕掛けられたように、そのふもとから、しっかりと積雪がある。
道路にアスファルトは覗いてない。
上り坂の途中で失速しないよう手前から、ややスピードを上げて突入する。
早い時間帯なので圧雪された感じではない。
結構な勾配を上りながら左へ右へと曲がりながら上っていく。
上り坂なので、どうしてもアクセルを踏まなければならず、いつ後輪が滑り出すかヒヤヒヤだ。
でもクルマの姿勢に乱れは無い。
極めて順調だ。
辺りも明るくなり、積雪状況も少し見えるようになってきたが、やはり雪質は悪く無いようだ。
調子良く全体の中腹にさしかかったところだった。
左カーブを抜けると、その先にクルマが6、7台止まっている。
先頭には大きなトレーラーか。
うわちゃー、マジかー、と言いながら自分も止まっている最後尾に止まるしかなかった。
しかも勾配は緩いが上り坂で止まってしまったのだ。
自分の経験上、良い雪質でも上り坂で一旦止まってしまうと、このクルマは上れなくなる。
近年ニュースで観る雪道での立ち往生ってやつだ。
止まるとすぐに警察の人が自分のとことに来てくれた。
こういう状況になり、数十分以上は経過していたのだろう。
自分は窓を開け、この先で見えますか、トレーラーが止まっちゃってるんですよ、多分しばらく動けないと思うんですよ、と教えてくれた。
そうですか、多分自分も一旦止まると動けなくなるんですよねぇ、と情けない声で返した。
ちょっと出てみますよ、と告げアクセルを軽ーく踏んでみた。
すると、空回り、空回り、タイヤが空回り。
やはりか、やはりダメだったか。
タイヤは空転し、前輪を軸にして後輪が微妙に横に流れた。
もう諦めた。
何も出来ない。
ため息をつき、冷静になろうと周りの様子を見た。
前方のトレーラーは巨大な鉄骨を運ぶようなタイプで、この状況下では無謀とも思える。
そして自分の目の前は軽トラだ。
その軽トラも動こうとしても自分と同じで空回り、空回り。
そうこうして後ろを見ると、どんどんクルマが連なってきていた。
S字の山道はクルマの列で埋まってくる。
あーあ、これで身動きが出来ない。
前にも後ろにも行けず、出勤どころではなくなった。
後ろのクルマはプリウスだ。
ウィーンとタイヤと雪の空回りする音が聞こえた。
後ろのクルマも上れないようだ。
いよいよ立ち往生だ。
考えればゾッとする。
こうしている間にも、下からどんどんクルマは上ってきているのだろう。
自分は先頭のクルマから数台のところに居る。
この立ち往生がいつ解消するのか見当もつかない。
どれくらいの時間待っただろうか。
辺りはすっかり明るい。
ふとバックミラーを見ると、後ろのクルマの移動するのが見えた。
恐らく最後尾から1台1台向きを替え、引き返しが出来るようになったのだろう。
気が付けば下りてくるクルマは1台も無い事に気付いた。
この状況で警察が通行止めにしているのではないか。
そのおかげで片側1車線の道路の対向車線を使い、余裕を持ってクルマの切り返しが出来てきたのだ。
そして自分のすぐ後ろのクルマもいなくなり、自分の番が来た。
自分はバックで途中の平地まで下がり、下りずに安全な所で待機した。
次々と自分の前にいたクルマも下りてきて、そして1台も通らなくなった。
しばらく考えた。
どうしようか。
自分も他のクルマと同じように下りた方が良いかどうか悩んだ。
この山には大きく2つのルートしかなく、引き返しても、もう1つのルートで上れるとは限らないからだ。
悩みに悩んだ。
そこに警察の人が通って、こっちに来てくれた。
窓を開け、すかさず自分は、このまま上がってもいいですか、と問うてみた。
警察の人は、あぁいいですけど、上がれますか、と尋ねられ、止まらなかったら行けるんで、と言い残しクルマを発車させた。
内心不安だったがクルマはすぐに上りにさしかかった。
スピードが勾配に負けないように、失速させないように、尚且つ後輪が滑らないように、ステアリング操作もゆっくり慎重に心がけて上った。
止まってしまった当初、数台が上から下りてくるクルマがあったのを覚えていた。
道はトレーラーで塞がれておらず通れるはずだ。
止まっているトレーラーを横目に、無事通れた。
タイヤは食いついている。
行けるじゃん。
晴天の空の青さと、雪の白さが眩しい、まさに心が突き抜けるような爽快な気持ちで上った。
道路の先には通行止めにしている地点が迫り、警察の人が別のクルマを誘導している。
通行止めにしているとはいえ、物理的には封鎖していないのを確認し、警察の人に頭を下げながら通行止め地点を抜けた。
恐らく警察の人は、上り口は通行止めにしているはずなのに、なぜ上って来れたのか、と不思議に思ったに違いない。
とても納得のいかない表情だった。
なにはともあれ、無事職場に辿り着く事が出来た。
改めて雪国に暮らす方達や、仕事でそこを行き交う方々を思うと、想像を絶するご苦労があるだろう。
あれ、めまいはあまり意識する事がなかったな。
これくらい意識しない時があるのかと判ったが、こうして気が付いてしまうと、めまいを意識してしまう。
クルマの運転だけを見れば、めまいについては、さほど気にならないようだ。