朝起きてトイレを済ませ洗面台に向かう。
療養中も出来るだけ規則正しい生活を送るよう心がけてきた。
そして仕事に復帰して1ヶ月半になろうとしている。
療養中よりは早い起床時間にも、やっと慣れてきた頃だ。
同じ時間に起きては、段々と暗くなる外の光に、確実に秋に突入した事を感じる。
ちょっと寒いくらいだな、と洗面台の照明を点け自分の顔を見る。
なぜだか毎日毎日、右耳の上辺りの髪の毛がはねている。
本当に毎日同じように浮いている。
療養中はこんな事は無かったのに。
水を付けては手で押さえ、それでもしぶとくはねている。
ふと自分の目を見る。
入院中や退院後とは違う見え方に気付いた。
目と目の間を基準にして見ると、向かって右の目が見えて左の目が欠けて見えなかった。
というより顔の左半分が見えなかった。
それが今では、左側の目が少し見えている。
視野の欠けが少しだけ改善し見える範囲が広くなったのか。
それとも慣れもあり見えてきている気がするだけなのか。
しばらくの時間、鏡に映る自分を見た。
そういえば自分の顔をじっくり見る事がなくなったな。
手入れもあまりしなくなった。
見えにくさは自身の顔も疎かにする。
この際、鏡の前で細かく顔の角度を変え、顔のパーツの見え方を確認する。
視点を動かせば各パーツは見えるが、顔全体は把握出来ない。
こんな事になったのを今だに納得できるわけないが、発症当時のような強い感情は薄れてきている。
時間だけが解決してくれるのか。
少し老けたかな、と顔を触りながら身支度を進めた。