眼鏡と言えば、先日次男が使用している眼鏡の鼻あてが壊れ、これ直るかなぁ、いやこれは直らないよ、となり、翌日買いに行く事にした。
我が家の4人全員がこの眼鏡ショップでつくってもらっている。
これまで軽く10個以上は購入している。
先日の自分に続き、次男の眼鏡を妻と3人でショッピングセンターの眼鏡ショップに買いに行った時の事だった。
いつものように時間をかけ、あーでもない、こーでもないとサンプルの眼鏡を掛けては外していた。
色々見て40分以上は経過しただろうか。
SCのざわめきの中、少しだけ大きな声がする。
自分たちの居る眼鏡ショップのレジの方だ。
今思い返すと、数分前から段々と大きな声が聞こえていた。
見ると店員と客の一人がモメているような様子だ。
客は60代と思われる丸い感じで、ベレー帽を被って身なりに気を遣っているような男性だ。
自分たち3人、ほぼ同時に気が付き注視した。
店内に居た他のお客も気づいたようで、SC全体のざわめきの中、しばらく店内のお客は静かになった。
みんな何をモメているか聴いている。
断片的に聴いていると、その客はここで買った眼鏡のレンズ交換を要求していて、保証書が無く断られた事によって立腹しているようなのだ。
だからここで買ったんだって、お前らマニュアル通りにしかできねぇのか、紙切れ1枚で出来ねぇのか、と店員に詰め寄っている。
これはカスハラだ。
レジ前の台に置かれた眼鏡ケースを持ち、台でパンパン叩いている。
叩きながら持論を展開して、店内に響き渡っている。
店員の男性も何とかなだめるように説明を繰り返している。
女性店員も最初は一緒に対応していたが、カスハラ客の威圧により後退し、他のお客のレジ対応に回った。
2つ並んだレジは、別世界の様相だ。
カスハラ客は、また一段エスカレートした。
途中、一般の男性客が間に入り、止めようとした。
すごいな、すごい正義感だ。
でもカスハラ客は、その一般客にも矛先を向け、お前関係あんのか、と撤退させた。
そしてカスハラ客は置かれた眼鏡ケースを上からドンドンと拳で叩きつけだした。
その間、ずっと持論を述べている。
これはいくら正論を言っても通じない相手だ。
厄介で情けない。
かれこれモメ事に気づいて20分は経過したか。
さらにカスハラ客は眼鏡ケースを床に叩きつけた。
ひときは大きな音が店内に鳴り響いた。
一般客の目は冷静で冷ややかだ。
これはもう限界か。
妻に人を呼んだ方がいいな、と話すと、隣のショップに言いに行ってくる、と妻が行ってくれた。
話し終えて帰ってくると、お店の本人が言わないといけないって言われた、と。
なんだそれ、こっちもマニュアル通りだけど、どうでもいい意味のないマニュアルだな。
隣のショップ店員はずっと様子を見ていたのに、こんな返答ならお願いしても無理だ。
仕方ないので他の店員に状況を伝えに行った。
少し離れた違うレジの女性に、しかるべき人を呼んだ方がいいと状況を伝えると、すぐ電話してくれた。
いいんですか、確認せずに、自分の言っている事を確認された方が、と言うと、レジが一人で空けられないんで、と女性店員さん。
お礼を言って、すぐに眼鏡ショップに戻るも、まだまだ続いていた。
周りのお客もそれぞれ目当ての眼鏡サンプルを探して、レジの女性もお客に対応している。
あまりにも長い時間、同じような、しょーもない文句を言っているので、呆れているのだろう。
自分たちも次男の眼鏡探しを再開したほどだ。
でも大声は響き渡っている。
ふと店外を見ると、SCの上層部に見える首から名札を下げた人がモメ事の様子を見ていた。
すぐに来てくれたのだ。
でも、見ているだけだ。
よく見ると眼鏡ショップの店員と対峙するカスハラ客の延長上に、その上層部らしき人が居る。
恐らく眼鏡ショップの店員は首を動かさなくても上層部らしき人の存在は気づけるだろう。
いい位置に居る。
なんなら秘密の合図を送れば来てくれるのか、というような位置関係だ。
それでもそのまま眼鏡ショップの店員とカスハラ客の様子は変わらない。
長いな、かれこれ40分以上粘っている。
カスハラ客は、かなり大きい声でs持論を主張し、もうお前の所では2度と買わねぇからな、と捨てゼリフらしい言葉を残して体の向きを変えて歩き出した。
するとレジ前にある椅子に座っていたご婦人がスッと立ち上がり、そのカスハラ客の後を着いて店外へと出て行った。
ええぇぇーあれ夫婦か、パートナーか。
あの状況をあのご婦人はずっと黙って見ていたのだ。
そう言えば同じタイミングで来店していたな。
一言も発さず、微動だにしないまま、あの時間、状況を、、、こっちもすげぇ。
そうこうしてると警察官が2名来た。
騒動が収まり、自分たちは眼鏡のフレームを決め、レジで申し込んだ。
大変でしたね、とねぎらいの言葉を掛け、レジ処理を済ませた。
レンズは以前のままがいいと言う次男の要望で、測定無しでつくってもらう。
30分ほど時間潰しに店内を歩いていると、さらに応援の警察官が数名とすれ違い、ちょっと遅いなー、と話しながら、とりあえず安心した。
その時、フードコートを見るとカスハラ客が食事をしていると妻が教えてくれた。
自分たちは向きを変え、近寄らないようにした。
眼鏡の完成予定時間がきたので眼鏡ショップに行ってみるとフードコートで食事し終えたカスハラ客に警察官がなにやら話していた。
完成した眼鏡を受け取り、女性店員から説明を受けている次男。
ちゃんと聴いとけよ、と次男に耳打ちすると、女性店員は笑ってくれた。
男性店員も出てきて、本当に大変でしたね、と話すと、今回のお客さんは一番酷いほうでした、と疲れた様子で苦笑いしていた。
でも営業妨害ですよね、とか話しながら眼鏡ショップを後にした。
これ以上の惨事にならなくて本当に良かった。