宴は始まり、自分の前の席には辞めて約1年になる先輩が座った。
自分はこの先輩が在職中にめまいを発症して数日入院した事を思い出した。
在職中というのは辞める半年くらい前だったと思う。
仕事中に突然のめまいに襲われ、救急車で運ばれたのだ。
検査の結果は内耳によるものではなかったという。
原因は判らないと当時話していた事を思い出した。
自分と似ている。
その後、自分も手術を境にめまいに悩まされ、当時の事を更に詳しく知りたくなった。

色々話すと、こうだ。
以前から会社の人と折り合いが悪く、とても理不尽な扱いをされていた。
それは自分もよく知っている。
自分と一緒に受けた事も何度かある。
それが数年続き、ある日突然のめまいで、半年以上は治らなかったらしいが、今は全くめまいは無いという。
思い返すとストレスだったのかなと。
当時はめまいがありながらクルマの運転も何とかしたけど、辛かったと。

やはり自分と似ている。

聞けば聞くほど自分と重なる部分が多い。
その中で今は完治しているというところに希望が持てると、すぐさま思ってしまったが、自分と同じ病気かどうかは今となっては判らない。
ストレスというのも、自分ではそう思っても、確定できるものが何も無い。
本人が言い張っても決定づけるものは無い。
色んな考えが巡っては通り過ぎ、画像や数値で判断出来る病気とは違う難しさを、素人なりに痛感した。
でも何より、今はすっかり症状が無いというのは素晴らしい事だ。

そうしていると1時間遅れで、自分が慕っていた元同僚も到着した。
席は離れ離れになったが、また後でゆっくり話そう。

色んな話が出て、色んな人が自分にこう話してくれた。
心臓が悪くて手術して、頭もやったと聞いて、これは復帰は無理かと思った、と。
血圧が180あるんだよな、と。
これくらいで済んで良かったと思わないと、亡くなる人もいるのだから、と。
私も何個も要検査で引っかかっている、と。
血圧が高かったけど、下げるクスリを飲んで今は120くらいで落ち着いている、と。
白内障で手術したけど、みんななるらしいよ、と。
腰が悪く、何年も整体に通っている、と。
石が出来やすい体質で今もあって、爆弾を抱えているような気分、と。
痛風でビールはやめて今はウイスキーにしてる、酒はやめれん、と。
便秘が酷く週に1、2回しか出ない、と。
膝が痛くて、いつまで続けられるか、と。
親が脳外科に入院してて、あそこの病院いいよ、と。
血糖値が高くて医者から注意されてるんだよね、と。

みんな出るわ、出るわ。
改めて自分だけじゃないんだなと、どこか励ましてくれている気がした。
ここに集まったメンバーの多くが30年前後の勤続年数を誇る者たちだ。
それにしても随分と高齢化した事に、お互い若い時からの付き合いと、気持ちは若いままで、軽くタイムスリップしたような雰囲気が渦巻いた。
白髪混じりの赤くなった顔が、7ヶ月のブランクを吹き飛ばしてくれた。