こんな場面が来るとは思わなかった入院当時。
入院中、主治医と相談員さんの面談した時に言われた事。
病院まで勤め先の人に来ていただければ、私たちから状態の説明をしますよ、仕事にはこういった配慮が必要ですよとか、自分を復職に向けてバックアップしてくれる体制があると。
その時の自分は、とてもそんなふうに考えられなかった。
これで辞められる大義名分が出来たと。
それが今日は病院の1室を借りて外来担当の作業療法士さんと産業保健総合支援センターの方、会社の人、自分の4者面談だ。
自分の為にこんなに人と時間、場所を巻き込んで話をしていく事になるとは、思ってもみなかった。
申し訳ない気持ちと、有難い気持ちでいっぱいだ。
外来担当の作業療法士さんから言われた予定時間より30分は早く来て下さい、の通り早く病院に行った。
練習した自分のクルマで、練習したルートで無事一人で来る事が出来た。
外来担当の作業療法士さんと挨拶を交わし、4者面談の部屋へ移動した。
いつものリハビリ室と廊下を挟んで向かいの部屋だ。
広い、4人で話をする広さではないというのが第一印象だ。
でもこれなら近くに座らなくていい。
距離をおいて座れる。
プロジェクタに映し出された画像を見て下さい、と外来担当の作業療法士さん。
外来担当の作業療法士さんはPCで自分の目の動きを説明する動画を作成していた。
これは以前に外部の医師による診察で、目の動きを診た時のものだ。
目の前のペンを追うよう指示され、右から左へ動かした目の様子だ。
自分では見る事が出来ないその様子を、PCで説明する為のものだった。
そこには小刻みにガクガクしながら右から左へ移動する眼球が表現されていた。
動くものをスムーズに追う事が出来ないと訴えていたのが、この目の動きによるものなのか。
自分の目はこんなふうに動いているのか、とショックを受けた。
どうりで動くものが見え辛い訳だ。
これは主治医にも言わなかったが、動くものが質の悪い動画のようで、パラパラ漫画を見ているような感じだ。
それは画質が劣化しているのではなく、コマ数が少ない感じなのだ。
人間の視覚は1秒間に約30コマに相当すると言われており、今の自分には15~20コマ程度に感じる見え方だ。
30fpsから15~20fpsに落ちた動画を見せられている視覚だ。
こんなのは落ち込むには十分だ。
この感覚はネットの滑らかではない動画を観ているようで、クルマの運転にも支障が出そうだ。
視野の欠けだけではない、動画のコマ不足も重なり、不安でいっぱいになる。
特に対向車のクルマが目で追えない事が凄く気になっていた。
自車と対向車のスピードの感覚は相当なものだ。
発症前とは明らかな劣化を感じる。
当時、外部の医師に少し話したが、いいじゃないですか、見えなくても、と返された。
そんなの気にしなくていいよ、という意味合いだったと思うが、当人には深刻だ。
でも確かに。
気にしてもどうにもならない。
気にしないようにしてきた。
ただ、この眼球の動きを司る器官が損傷しているのか、と考えてしまう。
いや、気にしないでおこう。
そうこうしていると、産業保健総合支援センターの方が来られた。
直接自分が会うのは2回目だ。
最終確認として外来担当の作業療法士さんと産業保健総合支援センターの方から確認された。
会社の人と話をしていく上で、これは言わないでほしいとかはありますか。
いいえ、ありません、分かっている事は全部お話ししてもらって結構です、と答えた。
入院中はこれが自分には出来なかった。
自分の状態を会社の人に知られる事が。
でも今は違う。
全部このスタッフの方に任せられる気持ちになっている。
あとはどうなっても、それはしょうがないとも思えるようになった。
こんな後遺症があるのだから、誰も責められない。
どうなろうと、その時考えよう。
少しだけ以前の自分とは違う一面を感じれた瞬間だった。