ここまでの運転は順調だ。
教官は一切雑談はして来ない。
それはそうだろう。
自分はこの学校の生徒でもなければ、何者かもよく分からない相手だろう。
おかげで運転に集中出来た。

交通量の多い国道を走り、次の交差点を左に曲がる指示が出た。
国道から別の国道が交差する地点だ。
長い信号待ちでも会話は無い。
このまましばらく直進しましょう、と結構自宅近くに来た。
混んでいるおかげでクルマのペースは自分に合っていた。
3kmほど直進し、左に曲がり県道へ。
1kmほどで自動車学校へ帰れる。
先ほど出発の時に出た地点に戻った。
これで終わりだと思ったら、じゃもう1周しましょう、と教官。
そうか時間はまだ半分ほどしか使っていない。
そのまま直進し、さっき走った順路に戻った。

先ほどと同じく走るペースは非常に自分に合っている。
自動車学校までは特に注意すべき危ない地点は無い。
無いと言うのは語弊があるな。
公道は、いつ何があるか分からない。
しかし、本当に何も話さない教官だ。
特にトラップも無く、もう1周して帰る道中、ちょっとこちらから話かけてみた。
このクルマいいですね、カローラってこんなに立派ないいクルマになったんですね、と振ってみた。
そうでしょう、昔のクルマとは違うでしょう、と返してくれ、また沈黙になった。
後半は話ができそうなくらい余裕が出てきたので、運転の判定的には手応えを感じていた。
無事自動車学校に帰り、指示の通り停車した。


お疲れ様でした、大丈夫ですね、問題はありません、また書類を病院に送りますので、と教官。
雑談の無い無表情な印象とは変わり、自信を持ってオッケーを出してくれたような表情に安心した。
自分は胸を撫で下ろした。
妻も後ろに来て話を聞いてくれた。
やったー、また一つ前に進んだ。
事故なくトラブルも、危ない場面もなくクリア出来たのが本当に良かった。
妻も一緒に喜んでくれた。
一緒にお礼を言い、受付に行き、今日の路上運転が終わった。

後日、また外来リハビリに行って外来担当の作業療法士さんに良い報告が出来る。
一歩ずつ前に進んでいる。