それは外来リハビリの帰りだった。
今日はいつもより渋滞がひどく、薄暗い時間帯になっていた。
時々妻と一緒に立ち寄るスーパーがあった。
ここのスーパーは店舗としては大きくなく、カートだとすれ違えない通路もある。
同じスーパーの別の店舗の方が広めで歩きやすい。
自分は狭ければ狭いほど、めまいのクラクラがひどくなる。
あまり気が進まない中、クルマを降り店へ向かった。

すると入り口の手前で妻が、〇〇さんかな、と自分達より後から来るお客さんを見ての反応だった。
それは自分の勤め先で仲良くさせてもらっている同僚の名だ。
彼とは子どもが小さい頃、家族ぐるみで何回もファミリーキャンプに行った仲だ。
薄暗く、視野が欠け見えにくい中、どこを向けばいいか分からなかった。
えっええっと思いながら違う方を向くと確かに彼だった。
仲良く夫婦2人で来ている。
おおーっ久しぶりー、元気かぁ、いつかこのスーパーで会うと思っていた、とお互いの思わぬ再開に感激した。
自分が入院して、手術して、脳梗塞をして、後遺症があり、リハビリしているという事情は会社には報告して休ませてもらっていたが、従業員のみんなにどこまで伝わっているかは全く不明だった。
自分も個人的には連絡をとるのを控えていた。
なので一体自分がどういう状態なのか詳細は誰も知らない状況だった。
どれだけ時が止まっていたのか自分でもよく分からない、この療養期間だ。
彼は涙を流しながら自分との再開を喜んでくれた。
と同時に思ったより外見は不自由のない状態に安心してくれたのだろう。
そうだ、自分は見た目には何ら以前と変わりはないのだ。
どこか自分は後遺症があるというのを周りにバレないように無理しているような気持ちが常にある。
そんな自分を涙ながらに色々話してくれる彼。
自分も近況を話し、今度自動車学校に行って運転再開を目指している事を伝えた。
すると彼は会社の上司が今入院している事を教えてくれた。
それは自分が入院して1ヶ月後くらいの事だったようだ。
上司は仕事中、お腹がしんどく調子がとても悪かったようで、耐えきれず病院に行くとそれは胃がんであった。
しかもスキルス胃がんであると。
とても驚いた。
自分はスキルス胃がんという病名を知らなかったが、とても悪い状態だそうだ。
元気だったあの人が、そんな事になっているとは。
彼もとても深刻な表情で、状態の悪さを物語っていた。

今、その上司と自分で会社は2人欠けている。
みんなどうしているだろうか。
そんな事を彼と語りながら忙しい平日の夕方に4人で再開出来た事を喜んだ。
早く買い物を済ませようか、と入り口での会話を終えた。

偶然とはいえ、彼とはいつか会えると思っていた。
妻ともそう話していた。
会社でも色々あるようだが、まさか自分が療養中にこんな事になっているとは想像もしていなかった。
回復するのだろうか。
何も詳しい事を知らない自分は、ただ静かに驚くばかりだった。
再会と上司の胃がん、それに自分の状態。
複雑な気持ちであった。