我が家には金魚が3匹居る。
玄関で鉢に入れていて、家族を癒してくれている。
ピンポンパールという品種で、体が短くぷっくりして、とても可愛い。
顔を正面から見ると目、口、目と一直線に並んで、とても愛らしい。
そばに行けば水面から顔を出し、口をパクパクさせ餌をねだる。
短い体を左右にゆらしながら泳ぐ姿を見ていると時の流れを忘れさせてくれる。
最初はエアポンプ無しで飼っていたが、自分が退院してすぐにエアポンプと一回り大きい水槽を購入した。
飼い始めて一年半近く経過して体が大きくなり、狭く感じるようになって、快適に泳いでくれるようにと考えたからだ。
この購入時は自分が退院してすぐ家族で病院近くのホームセンターに出かけ、購入したものだ。
自分はホームセンターの商品に囲まれた中を酷いめまいの中、次男の肩に手を乗せ、支えてもらった。
この時はまだ、このような環境で めまいが強くなってしまう事を自覚できていなかった時だ。
退院後、色々と出かけるうちに、めまいが強く感じる条件が分かってきた。
そうとは知らず、退院後すぐにホームセンターに行ったのが、これまでにない酷いめまいの理由だ。
フラフラ、クラクラしながら店内を彷徨った。
なんとかエアポンプと水槽を購入し、早速新居に金魚を引っ越しさせた。
優雅に泳ぐ金魚達の姿にニヤつく自分。
そんな中、3匹のうち1匹が体が斜めになり、片目に異常があることに気付いた。
それは日に日に酷くなり、数日後、死んでしまった。
何がいけなかったのか。
自分は死んだ金魚を庭の隅に埋めてやった。
家に来て1年半の生涯であった。
その後、ふと金魚をボーッと眺めていると、2匹になった金魚が3匹に見えるのだ。
玄関のガラスから入る光と水面に映る光の反射からか、金魚の色、鱗が見えてくるのだ。
金魚が3匹居る。
何度見ても見えてくる。
死んでしまった1匹の蘇りか。
自分は妻にもその現象を伝えた。
とても不思議だが、それは昼間ならいつでも体験できた。
毎日体験できた。
無邪気に泳いでいるように見える金魚は何を思っているのだろう。
今日も近づくと餌をねだる金魚達。
思い返すと、まだこどもだった小さな金魚が、今では大きくなった。
赤2匹、黒1匹の3匹だったが、赤1匹が居なくなり、黒が段々と赤に色を変えていく様子も見れた。
そして今、赤2匹になり、居なくなった生まれかわりのように感じる。
と同時に、自分の心臓手術で脳梗塞になってしまった自分に重ねた。
一度、心臓を止め、人工心肺で仮に生きた時間があった自分に、一度は死んだと思いながら今、生きている。
死んでもおかしくない脳梗塞。
生かせてもらっている自分が、この金魚達を見ていると、とても偶然とは思えない。