今回の外来リハビリからドライブシュミレータの使用が始まった。
外来担当の作業療法士さんから、そろそろ始めていきましょうか、と予告されていた。
自分の体の状態を診ての判断なのだろう。
それだけで前進していると実感できるのが嬉しい。
更に入院中からずっと気になっていた、あのステアリングがどういうものなのかを体験できるのだ。
じゃドライブシュミレータにいきましょう、とリハビリ室内にある6畳くらいの部屋に案内された。
この部屋は4室くらい並んで設置されており、これまで3室は入ったことがあったが、このシュミレータがある部屋だけが入った事がなかった。
どんなものだろう。
自分は完全にゲームを体験する感覚になっていた。
一体どんなものかといえば、PCで組まれたもので、24インチくらいのモニタが3つ連続して横に設置されていた。
正面と、左右の視野で横に広く風景が表示されている。
正面のモニタの前には例のステアリングが固定されており、まさにクルマのゲームにはもってこいののセッティングだ。
いや、ドライブシュミレータだ。
足元にはペダルが3つ並んでおり、アクセル、ブレーキ、クラッチのABCが揃っている。
クラッチまであるとは驚きだった。
外来担当の理作業療法士さんから、座ってみてください、と促され、早速座りステアリングに手を乗せた。
そのステアリングにはGTのロゴが。
グランツーリスモだ。
若い頃、欲しいと思っていたものがこんなところで、こんな状況で体験出来るとは思ってもみなかった。
すっかりゲーム感覚だ。
しかし自分は冷静に、ゲームのアイテムでは違和感を感じる人も多いのではないだろうか、と考えた。
特に年配の方が対応できるのだろうか。
実車より小さな径のステアリング。
おそらく凄くクイックに反応するのではないだろうか。
ペダルも3つが狭く配置されており、実車感覚ではない。
レースゲーム用に開発されたものなので、こうなるのは必然だ。
むしろ自分には楽しく思えて刺激的だ。
じゃ最初は簡単な訓練からやっていきましょうか、といよいよシュミレータをスタートする。
ゆるい右カーブを走りながら、あちこちに表示される赤と緑のランプを見て、瞬時に反応出来るかをみるものだ。
赤が表示されたらブレーキを踏み、緑だとアクセルを踏んだままにする。
緑が表示されてアクセルを離してもミスだし、ブレーキを踏んでもミスとなる。
数分間走り、いくつものランプの点灯を見てどれくらい正確に早く出来るかをみていくというものだ。
早速始まった。
キーボードを操作し、スタート画面からゲーム、いやシュミレーション画面に切り替わった。
アクセルを踏むと走り出し、始まる。
ブーンと意外に低い音に回転が悪いエンジンの設定だ。
アイテムに対して凄く違和感がある。
それにグラフィックが二昔前のように見える。
容赦なく点灯するランプに反応しながら走らせる。
自分の車が道のどのあたりを走っているのか分かりづらい。
クルマの後ろのグラフィックは無く、運転席から見ているように設計されている。
よく見るとサイドミラーにも通り過ぎる周りの風景が表現されている。
意外に車を曲がりながら走らせるのが難しかった。
最初は短めの時間での訓練だ。
2分くらい走り、結構飲み込めた。
外来担当の作業療法士さんと感覚的な話をして、そんなに違和感なく出来る様子に、大丈夫そうですね、と。
次は長めの時間で7分くらいやります、ちょっと長いですけど頑張って下さい、と。
さっきの内容と同じく、時間だけながい、意外に長い約7分の訓練だった。
とても単調な画面と操作で途中、集中力が切そうになるのが分かった。
そして1回だけ、緑の点灯なのにブレーキを踏んでしまったのがあった。
この操作結果をデータとして記録しており、どれくらいの反応スピードかと正確性かを数値化して画面表示された。
すると何回かブレーキを踏んでないとの指摘があった。
自分はAT車の場合、ブレーキは左足で行い、右足はアクセル、左はブレーキとしている。
自分は若い時、
-1やレースに魅了され、レーシングカートをやっていたこともあり、両方の足を使う事が定着していた。
それが原因で、ブレーキを踏んだ時、アクセルが踏まれているとブレーキが反応しないプログラムになっているらしいのだ。
つまり、赤ランプが点灯して瞬時に左足でブレーキを踏むタイミングが、右足をアクセルから離すのが早いのだ。
ブレーキをより早く反応して踏めるのは良いはずなのだが、そうはこのシュミレータはプログラムされてはいないようだ。
自分は仕方なく右足だけで操作するように切り換えた。
このやり方でもう一度やってみた。
操作ミスなくやり通し、問題ないレベルの数値結果が出た。
これでドライブシュミレータの初日を終えた。
自分はゲーム感覚だったが、早く走ることが目的ではないのがもどかしい。
外来担当の作業療法士さんは言う。
サーキットも選べるんですよ。
患者さんで1回やると、もう1回やらせてくれっていう人もいますよ、と。
そうだろう。
好きな人、出来る人もいるだろう。