髪をセルフカット

自分と子どものの髪を自分が切るようになって、もう２０年近く経つ。
子どもが生まれてからずっとやってきた。
理由は、出来るだけ子どもと関わりたかったのと、自分の髪を切ってみて、これなら自分で切れるかな、と思えたからだ。
それと美容院や床屋に行くわずらわしさだ。
そんな理由を付けては自分で切ってきた。
切る方法は切る長さを調整出来るバリカンだ。
これなら失敗は少ない.。
この日まではそうだったし、そう思っていた。

入院前に髪を切り、退院して１ヶ月が経とうとしている。
切ってから、もう３ヶ月が近づき、大分伸びてきた。
いよいよ切るぞ。

洗面台と床に新聞紙を敷き、切った髪を集め易くする。
掃除機を用意し、道具を揃えた。

さぁ切るぞ。
いつもの要領で切ろうとしたが、視野は欠けて見えにくいし、左側を切る左手がイマイチ言う事を聞かない。
分かっていた事だが、とにかくやってみよう、というノリでやってみた。
視野は、やはり中心から左下と、中心の少し右上が欠けている。
見えない、どうしても見えない。
目線をそらしても、視野の欠けは着いてくる。
寸分の遅れなく着いてくる。
見えないというのは黒いのかとよく聞かれるが、黒くはなく、見えない、ただそれだけだ。
視界の中に見えないエリアがある。
非常に辛い事だ。

左手は思い通りに制御が出来ない感じと言おうか。
左腕をの前に伸ばし人差し指を自分の鼻先に瞬時に付ける動きすると狙い通りにタッチ出来ない。
自分が思っている位置に指を止められずブレてしまう。
こんな状態の左手で、左側を上手くカット出来るのか。
しかし、始めたのだから後には戻れない。
進むしかない。
鏡で見える部分はまだマシだが、難しいのは後頭部だ。
前から、およそ勘だけで切っていた。
今回もどうせ見えない。
４０分以上かけて切り終えた。
仕上りはどうだ。

丁度妻と次男が帰ってきた。
二人が自分の切った頭を見て、おかしいー、と。
見事、おもいっきり失敗していた。
自分は、ちょっと誤魔化すように切ってくれ、と頼んだが、妻は泣き出す始末。
こんなになるなら切りに行って、と。
次男も、親父がこんなになったか、と思っているのだろうか。
妻をなんとかなだめ、うまいこと言って後頭部の髪を修正してもらった。
ワイワイ言いながら段々と笑いが戻り、無事何事もなかったかのように上手に修正完了した。
うまい、うまいと褒めて次回も宜しく、と。