退院日の夜

退院して帰りの途中、妻の運転するクルマでケーキ屋に寄っていた。
妻はホールケーキを注文し、メッセージを店員さんに伝えた。

退院おめでとう。

チョコプレートに入れてもらった。
一時はどうなるかと思ったが、こうして自分で立って歩いている。
妻は家族の節目には、こうしてささやかではあるがケーキや料理を用意してくれる。
とてもやさしい妻だ。
夕飯がとても楽しみだ。

次男も帰宅し退院をとても喜んでくれた。
ハグも、グータッチもした。
入院中はスマホのテレビ電話で話しただけだったが、どこか大人に近づいているような感じがした。
自分が入院中、初めての美容院へ行き、注文通りに切ってもらっていた。
自分は長男も次男も生まれてからこれまでずっと髪を自分が切っていた。
小さい頃は男の子なのでそれほど気にしなくてもいいので、自分が思うように切っていた。
が、大きくなるにつれて注文が入るようになった。
その注文に応じて要求通り切ってきた。
おしゃれ坊主頭から流行りの髪型も要求され応えてきた。
途中からは、切ってやるという立場から、切らせてもらっているという感じだった。
時には動画で美容師の切り方を勉強し、真似ながら切った。
その甲斐あってか、子供たちからはこれまでクレームはなかった。
でも自分が入院となり、これを機に次男が美容室に。
床屋は未経験で、高２で行く初の美容室だった。
長男に続き次男も自分の手からひとつ離れていくのが嬉しいような寂しいような。
次男と積もり積もった話を沢山した。

夕飯の時間だ。
料理も楽しみだし、酒はどうか。
循環器の主治医からは、お酒は飲んでいいとの事だったのを忘れていない。
飲むと動悸でしんどくなるので半年は飲んでいない。
久々のビールで退院おめでとうの乾杯だ。
飲める、飲めるぞ。
料理もケーキも食べる、食べれるぞ。