血液サラサラ

こちらに転院して以来ずっと飲み続けている薬がワーファリンだ。
循環器の病院で脳梗塞を起こしてからはずっと点滴で血栓を溶かす作用のものを入れていた。
こちらに来てからその点滴は入っていない。
一切管には繋がれていない。
その代わり錠剤でその代わりを飲んでいる。
血栓をつくりにくくする、所謂血液サラサラにする薬だ。
朝食と一緒に提供され、きちんと飲んだか必ずチェックされる。
転院時、特に詳しく説明があった訳ではないが軽く話があった。
自分の父親が長く飲んでいたっけ。
心臓の病気で数年間飲み続けていた。
一日も欠かす事はできず、飲み忘れは怖い。
血栓ができやすい患者には必須の薬であろう。
まさかそれを自分が飲む事になろうとは。
でもこれは応急的なもので、しばらく飲み続ける、という事らしく、一生ではない。
なので出血をともなう怪我や事故はご法度だ。
血が止りにくいとの事もあり、歩行にも十分注意するよう言われていた。
その為、階段や外の散歩もスタッフの方には気を遣われただろう。

ある日こんな事があった。
リハビリで握力を測定する事になり、測定器を渡された。
とても久しぶりに手にしたが、自分はどれくらいだったか記憶にない。
指示に従い右手から握ってみる。
思いっきり握った。
４０kg以上はあったかな。
以前よりどうかは分からないが、こんなもんだろうと納得した。
男性の自分は、こういった測定についムキになってしまう。
ふと、これ大丈夫なのかなと頭によぎってしまった。
過度の力みで血管が切れてしまわないかと。
頭の血管が切れる脳出血でも起こさないだろうかと不安になってしまった。
一瞬の不安をよそに左手の測定を指示された。
自分は恐ろしくなり、それなりに力を入れたが、一杯には力を入れることが出来なかった。
でも、それなりには入れたつもりだ。
結果、２０kg。
右の半分だ。
こんなもんか。
随分麻痺の影響があるもんだな。
気を落とすが、左手の麻痺した感覚からすると、こんなものかとも妙に納得出来るものだった。
自分の想像の範囲内ではあった。

ワーファリンを飲んでいる時は過剰に不安になってしまったが、実際はどうなんだろう。
個人差もあるだろうし、血管の状態もあるだろう。
結局何事もなかったので安心した。