同室の隣の患者さんとは今だに会話を交わさない。
毎日の挨拶も出来ていない。
ていうか、fまともに顔を合わせる事が意外なほどない。
麻痺の影響で十分な会話が難しい様子で、スタッフの方とも十分ではない。
でも数日してから奥の部屋から出られる時、自分が座っていると片手を挙げてくれるようになった。
自分はすかさず頭を下げ会釈する。
下手に声を掛けるより、隣の患者さんがされる相応に応えようと、とっさの行動だった。
自分も知らない人に話しかけるのは苦手だ。
相手が話しかけてくれるのが一番いいが。
最初は妻が差し入れてくれたお菓子をお裾分けして仲良くなりたいと思ったりもしたが、ここは病院だ。
患者さんがどんな制限があるかも判らない。
ていうか、お菓やジュースを持ち込んでもいいのかも判らない。
スタッフに聞いて確認しようとも思ったがやめた。
もしダメなら炭酸が飲めなくなる。
自分はそういった持病はないので制限なしでいきたい。

ある日、言語聴覚士さんにお菓子の話をしたら、やはりおやつはダメだった。
持ち込んでいる事に少し驚いたような表情で言われた。
ヤバいなとお思いながら、ここは担当の看護士さんに確認しようと考えた。
看護士さんなら、より正確な情報が得られるはずだと。
恐る恐る担当の男性看護士さんに尋ねてみた。
あのーお菓子やジュースの持ち込みはオッケーですか、と。
看護士さんは、あぁいいですよ、とあっさりと返事をされた。
やはり自分は食事に関して特に注意する事はないようなので大丈夫なようだ。
食事に影響がないようにとの注意はあった事は言うまでもない。
ホッと胸をなでおろした病室の一幕であった。
あと、勝手に患者さんに分けるのはやめておこう。
これで自分は隣の患者さんと話すきっかけを、また失った。