言語聴覚士さんのリハビリを終えると早くも夕方になろうとしていた。
病棟の自分の病室周りはとてもザワザワしている。
常に人が行き交い、病室のドアもオープンだ。
病室の目の前にあるテーブルや椅子にも常に人やスタッフが使用している。
テレビもあり、ここでゆっくり過ごしている患者さんもいる。
病院の静かなイメージとは違い人の話し声が響く。
自分にとっては全く気にならない。
寂しく感じる事はないので良かったと思っている。
ここでしばらく入院生活を送るのだ。
夕方になりリハビリを終えた患者さんが病室に戻ってくる。
少しだけ静かになる時間だった。
自分はテレビを付け夕方のニュースを観た。
恐らく多くの患者さんが同じような行動なのか、人の動きが少し落ち着く。
自分の病室は2人部屋だ。
背の高い棚を隔てて隣の患者さんのベッドがあり、ベッドやテレビを観ているか限り姿を見ることはない。
隣の患者さんは高齢の方かな。
車椅子があり、歩行は困難のようだ。
スタッフの方と話すことも少し困難なようだ。
コミュニケーションはとれるがスムーズではない様子だ。
耳も少し遠い感じで聞き取りにくいやりとりをされていた。
こんな様子に自分は最初の挨拶以降話すきっかけを失った。
ここに入院したての自分はテレビの音声を聴きながら身の回りのセッティングを始めた。
着替えや服を引き出しや棚に収め、テーブル周りにリハビリグッズ、スティックを置いた。
しばらくの間、自分はここで過ごすのだ。
夕食の時間になり離れた所からウィーンと電動の音とかチャカチャと食器の音が混ざる。
スタッフの方が病室に夕食を持って来てくれる音だ。
食事が入った大きな棚のような電動移動する配膳車のようだ。
忙しく一人ひとりの食事を持って来てくれる。
その人それぞれに合わせた食事も用意されているだろう。
病院とは本当に大変な職場だろう。
一人ひとりに声を掛けてくれながら配膳される。
食事を見ると、とても品数の多い夕食だ。
見た目もいい。
早速いただく。
とても美味しい。
前の病院といい、こちらも美味しくいたがける。
食事の音が病室内外に響く。
10分くらいで食事を終え、事前にわたされていた食後の薬を飲み、自分で配膳車までお膳を下げた。
あっという間の食事時間だった。
自分でお膳を下げれない患者さんの分はスタッフの方が下げる。
とても忙しい様子だ。
こうして1日3回繰り返されるのだ。
あとは就寝まで自由時間となる。
風呂、シャワーは今日はなし。
毎日入りたいが、またしばらくの我慢だ。
夜は前の病院からの流れで妻に電話を掛ける時間だ。
転院したこの病院での出来事を話し、家や息子の様子などの聞いた。
15分ほどの会話に妻との話に少しだけギャップを感じる。
まるでタイムスリップしたかのような変な感覚だ。
あれからどれくらいの時間、日数が経っているのか、カレンダーを観てもピンとこない。
こんな感覚を間日感じながら過ごす日々だ。
夜10時になり一段とフロアが静かになる。
与えられた寝る前の薬を飲む。
眠剤だ。
これを飲むと気持ちは落ち着く。
眠れないことがないので安心感がある。
しかし妻から言われていた事がきにかかる。
眠剤は依存度が高いので、これがないと眠れなくなる傾向があると。
それは怖いし、自分が困ることになるが、今はこれに頼りたい。
消灯され暗い部屋でテレビが眩しく光を放つ。
自分は入院を始めてNHKオンリーになってしまった。
民放放送のCMが耐えられなくなってしまった。
あとは面白くないバラエティ番組が受け付けなくなった。
部屋に居る時間は今はNHKに固定されてしまった。
自分が眠気を感じる間も無く眠りにつく少しの時間を、またこの病院でも送る事になった。
ここでも夜中のトイレに行く習慣ができている。
眠剤のおかげか、トイレを済ませてベッドに戻ってもすぐに眠れた。
こうして転院した病院での生活の一日目を終えた。