体の痛みは無く元気になった。
あるのは視野の障害と左手の麻痺、アナログ時計が読めない知能の変化だ。
その左手には変わらず点滴がつながっている。
昨日の外出からまた入院生活が続く。
主治医から言われたのが転院先の脳神経外科内科の病院がコロナ蔓延により新患の入院受け入れを止めているという。
受け入れが再開されるまで、ここで引き続き入院しておくという事だ。
いつまでか分からないここの入院をどう気持ちをつくるれるか、それが不安だった。
リハビリも自分が思う質、量とも足りているとは思えず、言われるように早く本格的に取りかかりたいという気持も芽生えてきた。
とはいえ、入院は転院しても続くのが憂鬱な気分だった。
とにかく退屈だ。
与えられた自室で出来るリハビリもすぐに飽きた。
指導も受けずに勝手に運動する訳にもいかないし。
そんな中、打ち解けていると思わせてくれている看護士の○○ちゃんが健診にきてくれて話をしてくれる。
こちらも構える事なく話が出来る。
入院中でそう思える事ができるのは気持ちが安らぐ。
本当に心強かった。
しかも親身になって自分の事を考えてくれ、妻にも同様に接してくれ、妻も信頼していた。
ある日その〇〇ちゃんが妻に、心臓手術は相当なストレスで、しかも脳梗塞を起こし麻痺もあるので、できれば心療内科にいってみられたほうがいい、と伝えられたという。
この事は数ヶ月経ったあとに的確なアドバイスと痛感した。
あとにも先にも、こう勧めてくれた人は〇〇ちゃんだけだった。
体が回復してきたと実感できると、それなりに動けるようになった。
許される範囲で業院の廊下を歩き、体力回復になるようにとの許可が出た。
早速ウォーキングを始めてみる。
ダラダラ歩くのではなく腕を振り、ある程度の速さで歩く。
出来る。
歩ける事が更に回復の実感を得られた。
しかし、めまいの症状がひどく、とても辛くしんどい。
それを振り払うように歩いた。
ある日廊下で理学療法士さんと会い様子を聞かれた。
こうして軽くでも運動しているとお腹が減ってくると談笑していると話していると栄養士さんを呼んでくれた。
入院時より体重が落ちている事や、食事が足りない事を伝えると食事の量を増やしてくれるという。
この栄養士さんも話しやすく、普段会う事がないスタッフにもかかわらっず、とても気さくに対応してくれた。
ここの食事は美味しい。
消化器系の病気ではないからか、病院食は美味しくないという食事ではなく美味しいので、とても嬉しかった。
毎日同じルーティーンを過ごす日々。
ルーズな夜中とラジオ。
夜中のトイレ。
緻密に動く壁紙。
夜中に見るアナログ時計。
何時か分からずしばらく頭を抱える。
洗面台の鏡に映る自分の欠けた顔。
真夜中の歯磨き。
拘束された感覚の左手。
眠くなくてもいつの間にか眠れる毎夜。
まだ暗い朝7時の健診。
夜勤明けの看護士さんに感謝。
朝食を配膳してくれるスタッフとの挨拶。
部屋を清掃してくれるスタッフとの挨拶。
自分のお世話をしてくれるスタッフに感謝。
全てのスタッフに感謝。