集中治療室に居る間、看護師さんに頭を洗ってもらって何日経つだろう。

またあの時のギトギトが見事復活した。

50歳も過ぎれば1日でも洗髪しなければヒドイものだ。

数日で天然の脂が塗りたくられる。

でもここは病院だ。

これをどうこう言われる事はないと安心した自分が居る。

それでも、どうしても我慢できないレベルになると落ち込んでしまう。

まだ自分では自由に洗髪もシャワーもできないのだから。

でも2日前から看護師さんに言われていた。

明後日にはシャワーができますよ、と。

管もほとんど外れ、体調もよくなっている。

先生の許可がおりての看護師さんからの報告だったのだろう。

とてもとてもうれしい。

少しずつ普通の生活に近づきつつあるという事だ。

でも今回のシャワーには条件が付いている。

シャワーする間はずっと見守りが着くという事。

恥ずかしい。

いや、もうそんな事は言っていられない。

これまで毛剃りや手術、ICUでの下のお世話をしてもらい、と免疫が付いてきた気がするし、それよりもシャワーが出来る喜びが優っている。

看護師さんが迎えに来てくれ胸の傷口が濡れないよう防水処置をしてくれるという。

 

いよいよ今日だ。

シャワーの準備をしましょうか、と予定の時間通り看護師さんが来てくれ自分の体を処置してくれた。

胸の傷口には大きなパッドのような防水シートを貼てくれて万全の体制だ。

想像よりも時間がかかったが無事シャワー室に向かって案内してくれた。

どなたが見守りされるのだろうと思っていたところ、60歳代の女性の方だ。

よろしくお願いします、と簡単に挨拶を交わし、すぐ服を脱ぎシャワー室に入った。

緊張するかと思ったが、やはりシャワーの方が優ったようだ。

真っ先に頭からシャワーを浴びて、うーーーっと唸り声を上げてしまった。

またまたこれまでで一番気持ちがいいシャワーだ。

しかし体のしんどさ、傷口の具合を気にしたり、左手の自由が効かない事や、目の見え辛さで思ったように体を洗えない。

肝心の頭は、やはり2回シャンプーをなんとかやりとげた。

右手だけの不自由な洗髪だ。

左手は頭まで腕が上がらない。

ましてや指を立てての洗髪は無理であった。

今は落ち込んでいる暇はない。

とにかく全身をなんとかして洗いたい。

それだけだった。

見守りの女性は手をほとんど出さずに、自分に任せてもらっている感じだ。

でも洗えなかった背中を女性に手伝ってもらった。

タオルも何も巻かずに全裸だが、恥ずかしいどころではなかった。

精一杯だった。

女性は濡れてもいいように雨カッパのようなものを着て自分を手助けしてくれた。

少しだけおどどしたような気恥ずかしいような反応をされたが、こちらは一杯一杯だった。

なんとかこうして納得のいくシャワーを終えた。

とても、とてもさっぱりできた。

 

部屋にもどりいつもの入院生活に戻り、着替えや身の回りを整えた。

部屋に戻ったら看護師さんを呼ぶことになっておりコールした。

様子見と明日から毎日部屋でのシャワーの許可を伝えてくれた。

よっしゃーっとガッツポーズ。

また一つ前進だ。

一つずつ一つずつ、一歩ずつ一歩ずつだ。

 

 

 

こんなふうに前向きにしか綴ってないが、毎日毎日、落ち込む毎日。

自分はどうなるのだろう。

一生このままか。

考えたくはないが、多分このままなのだろう。

どれくらい改善するのか全く分からないが、基本的にこの麻痺は残るのだろう。

何分も何十分もうなだれる毎日。

どうして自分なのか。

いや、誰がなっていい訳ではない。誰もならないのが一番いい。

でもどうして自分が選ばれたのか。

何か悪いことしたか俺・・・

とても受け入れられない・・・