一般病棟に移り術後の痛みもほとんど気にならなくなった。
入れ替わるように脳梗塞後の麻痺が強く感じられるようになった。
食事も美味しくたべられるのだが、麻痺した左手で箸が持てない。
自分は両手どちらでも箸が使えるので大きな苦悩にはなっていない。
両手が使えて良かったと思える瞬間だ。
でも右手で茶碗が持てない。
左手は膝の上で動こうとしないので、とても行儀の悪い不恰好な食べ方に見えるに違いない。
それでも食事が楽しみになるくらい回復してきた実感がある。
少しだけ量が足りなく感じる今日この頃だ。
妻が脳梗塞で後遺症が出た自分を気遣ってくれて色々グッズを持ってきてくれた。
目が見えにくいので虫眼鏡を買ってきてくれ、手のリハビリにと柔らかいボールも。
ボールには可愛い顔が描かれている。
これを握ったり、手の平で転がしたり。
スマホスタンドも用意してくれていた。
面会が限られる中、着替えやリハビリにと沢山準備してきてくれた。
妻が来てくれている時、丁度食事の機会があり、自分の食事姿をスマホで撮影してくれた。
左手でグッパーグッパーと連続した動きを披露し、思ったより回復している様子を見てもらえた。
自分でもこんなに動かせるようになったのは驚きで、嬉しさが隠せない。
が、それでも麻痺の影響は大きく、自分の腕が体の一部になっていない感覚は大きかった。
気がつくと右手で左手を下から支えている。
特に歩くときがそうだ。
なんだろう、右手でさ支えないと左手がブランブランな感じが気持ち悪いのだろう。
人は歩く時、自然と腕を振るが、それが恐らく出来ない。
左腕が軽いというか力が入らない。
大きく様子が変わってしまった自分に大きな大きなため息をつく。
良くなった部分もあれば、先の見えない自分に恐怖に近い不安に、またジェットコースターのような気分の浮き沈み。
自分は元気に生活がおくれるのだろうか・・・
そんな中、理学療法師さんが病室に来てくれた。
どんなですか、といつもの優しい問いかけ。
今日は病室に理学療法師さんもリハビリグッズを持ってきてくれた。
赤、黄、青、緑色の原色の木製のブロックのようなものだ。
円柱、四角柱、三角柱の形のブロックと、それがハマる土台だ。
これをやってみましょう、と理学療法師さん。
同じ形のオスメスにはめるだけの簡単なものだ。
だがこれがなかなか難しい。
理学療法師さんに肘を下から支えてもらえないと腕が上がらずコントロールできない。
非常にぎこちなくもどかしい動きだ。
よくぞ理学療法師さんも、仕事とはいえ、こんな自分に付き合ってもらえるなと思えるほどだ。
時折励ましてくれたり優しく繰り返すよう指導してくれたり、とても献身的な姿勢に感動を覚えた。
そんな理学療法師さんに回復というかたちで応えたい、そう思えた。
その様子を妻も一緒に見て撮影してくれ一緒に応援してくれた。
まだまだリハビリは始まったばかりだ。
これからどんな治療やリハビリが待っているのか。