入院生活が始まった。

動悸があるとはいえ、それ以外は大人しくしていれば健康そのものだ。

手術までの4日間、何をしようかと。

毎日決まった時間に看護士さんが健診に来られる。

体温に血圧、薬を渡される。

みんなとても優しい。

裏ではみんな色々難しい事があるだろうに。

そうこうしていると手術の執刀医となるお医者さんが来られた。

恐らく自分よりも若い。

このお医者さんがメインで手術を行なってくれるという。

委員長の主治医は監督役のような立ち位置らしい。

執刀医の先生は簡単に挨拶を済ませ部屋を出た。

また思う。

あの先生に実際に体を全てを預けるのだ。

正直、ここまで来たら最初のような鬼気迫る感情は湧いて来なかった。

別の意味で本当に自分が心臓手術をするのかと。

 

しばらくして理学療法師の方が挨拶に来られた。

とても話しやすく、すぐに打ち解けさせてもらえた。

その中で、どんなご趣味をお持ちですか?と。

自分は多趣味で広く浅く何も極めれないのであれこれやって、フラフラしています、と答えた。

その中で自分がやっている事の一つに理学療法士さんの娘さんが少しかじっているというものがあり談義になった。

色々やられてアクティブなんですね、と褒めてもらえたが、自分はそんなかっこいいもんではない、と謙遜した。

いや、本当にかっこいいもんじゃない。

ただ一つに打ち込めない、飽き性で、すぐ他に目移りするだけの中途半端な人間だ。

なので何一つ人に語れるものは持っていない。

こっちをやったら飽きてまた違う趣味へ。

なので家の中や物置、倉庫といろんなものであふれている。

どうしようもないハンパな人間だ。

いくつか家族と一緒に遊べたり、役にったったり、物をつくったり、独りの趣味だったり。

これ以上は増やさないようにと気を付けようと思うほどだ。

理学療法師の方は手術に向かう自分に手術後、特にお世話になる人だ。

1週間寝たきりになる患者を歩けるまでに体力を戻し退院まで並走してくれる存在だ。

とても前向きにさせてくれる人柄に安心と勇気をもらえた気がした。

もう今日からリハビリに向け体力を上げて行こうと階段の上り下りをしてもいいかを看護師さんに尋ねたが、

手術前でも転倒等、んなにかあるとよくないので却下された。

多くのことは管理外の事は自由には行動できないのだ。

そうだな、ここはジムではないしな。

こうなれば部屋でできるストレッチや筋トレくらいしかない。

時間はたっぷりある。

 

時折、雑談してくれる看護師さんとの会話が和ませてくれる。

病院の事、プライベートの事、病気の事。

手術に向かう準備もその都度話してくれる。

色んな看護師さんにそっとはげまされている感じで迷惑かけずスマートに退院したいと思う日であった。