職場には事前に説明して休みをもらった。

同じ部署の者にも説明していた。

これまで仕事中何か異変があり倒れることがあれば、救急隊員に指定の病院を伝えてほしい旨をお願いしていた。

幸いこれまでそんな事は起きず、入院日を迎える事ができた。

会社には休職中は傷病手当金の制度を利用させてもらえるようお願いした。

何かと手続きをお願いすることになる。

どうしてもお手数をお掛けすることになるし、分からない事も多く心配だ。

この20年程はこういった事例がなく会社の担当者は経験が無いようだった。

約2週間お休みをいただくという事。

この約2週間というのも流動的になることも会社には伝えてある。

退院してすぐ職場復帰できるものかどうかは分からないと。

体調がどれくらい回復するものなのか不明なことも承知してもらった。

夕方、職場のみんなに挨拶をして会社をあとにした。

ほんの少し、生きて元気に会社に戻ってこれるだろうか、と考えてしまった。

 

 

いよいよ明日、入院日だ。

 

入院前の最後の夕食だ。

毎日毎日妻が準備してくれて感謝しながらいただく。

妻はいつものように接してくれた。

でも食事は少し豪勢だ。

自分の好きなメニューも用意してくれていた。

2週間は妻の料理が食べることができない。

こんなに長い間食べれないのは結婚して以来初めてだ。

噛みしめて食べた。

 

入院前の最後のお風呂だ。

お風呂は毎日体の汚れを落とし、癒してくれる。

入浴も1週間以上は入れないと聞いている。

ゆっくり浸かり、芯まで温まった。

思わず湯船の中で、うおーーーーーっと叫んだ。

明日、自分は胸を切り開き心臓を止め人工的に生きながらえさせ心臓も切り開き弁を修復してもらうのだ。

気合を入れ気持ちをつくった。

この2ヶ月の間、気持ちは上がったり落ちたり何回繰り返しただろう。

でも明日入院だ。

その、うおーーーーーっだ。

大丈夫、手術かから目が醒めたら全て上手くいって元気になれると言い聞かせた。

 

持ち物の準備は万全だ。

入院前の週末には必要なものは揃えられた。

入院中何か不足があっても妻が持ってきてくれると言ってくれている。

本当に心強い。

ふと思う、手術や入院で家族や身内に頼れ人が居ない場合はどうするのか。

自分は本当に幸せだ。

親身になって支えてくれる妻がいる。

元気になって妻に恩返しできるようにならないと。

 

そういえば先日は妻の誕生日だった。

これまで大したプレゼントをしてこなかったが、今回ばかりはそうはいかないと思い、ささやかだがプレゼントを贈った。

ティファニーのシルバーリングだ。

結婚前も贈ったっけ。

万が一の事があったらと考えたり、生きていても何も出来ないような体になっていたり、色々想像した。

出来る時にしておきたい。

ロクでもないかなとも考えたり。

どっちがいいのかな?

妻は喜んでくれた。

息子に嬉しそうに見せながら。

 

手術まで色々聞いた情報に翻弄された日々。

いくら状態、条件が悪くないとはいえ、リスクは付きものだと。

どんな手術にもリスクはあると。

手術の同意書にもそれを思わせる事が書かれてあったな。

妻がその事を何度も言っていた。

手術には何があるか分からないと。

でもここまで来たら引き返せないし、元気になりたい。

同意書という紙切れにサインしないと手術もしてもらえない。

勢いがないと踏み出せない。

そう、進むしかない。

入院前、我が家で眠る最後の夜。

こんな、最近毎日考えている事をやはり今夜も思いながら横になった。

一年半前から続けている眠剤を飲んで。