9年という
あまりにも短い生涯を
駆け抜けた弟。
今でいう発達障害や知的障害が
あったのだろうけれど
当時にはそんな言葉はなく
私たちにはただ
「少し変わった、
こだわりの強い男の子」だった。
そんな弟には
驚くような特技と情熱があった。
ひとつは大好きな「お相撲」。
幕下力士の名前まで
完璧に暗記していた。
もうひとつは「車」。
街を走る車の車種を、
一目見ただけで
次々と当ててみせた。
一度行った場所には
迷わず行ける記憶力もあった。
けれど、「行くこと」だけに
集中してしまうため
帰り道が分からなくなってしまう。
朝早くに
家を抜け出してはいなくなり
家族みんなで慌てて探し回る……
なんてことも、しょっちゅうだった。
平日の放課後は
兄と交代で
弟の面倒を見ることが
りりこの役目だった。
「今日は友達と遊びたいのに……」
弟の存在に縛られ
自由に遊べない毎日に
幼いりりこは
密かに不満を募らせていた。
時には弟を連れて
友達のところへ
行くこともあったけれど
みんなとは少し違う
弟の言動に
子ども心に「恥ずかしい」
と感じてしまう自分もいた。
そんな
自分に対する罪悪感と
自由になりたいという
小さな自我。
幼いなりの葛藤を抱えながら
共に過ごした放課後の時間。
けれど
弟はいつだって天真爛漫だった。
屈託のない笑顔で
周りを和ませ
そこにいるだけで
どこか場を明るくしてくれる
不思議な存在だった。
あの冬
あまりにも早く
空へ旅立ってしまった弟。
あんなに
車とお相撲が大好きだった
弟は今、、、、
生まれ変わった世界で
自由に思いきり
大好きなものを追いかけて
素敵な人生を
送ってくれていたらいいな――。
大人になった今も
街で車が通り過ぎるたび
私はあの天真爛漫な
笑顔を思い出している。
(ことらの記事は後に限定記事にいたします)
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