今日のテーマは「遺伝性乳がんの診断と治療」


アンジェリーナ・ジョリーさんが乳房切除したと話題になっているので、タイムリーなお話を勉強できるってことで今日のサロンに参加させてもらいました

話としては1年前のサロンで講演されてた「乳がんは遺伝しますか?」というテーマの時とほとんど同じ内容でした

今日の講演を聞いて自分がメモしたものを書き出そうと思ったのですが、家に帰ってネットで調べてたら、今日の話とほとんど同じことが書いてあるサイトを発見したので、そこから抜粋して書き出したいと思います


☆ 遺伝子とは

ヒトの体をつくっている細胞ひとつひとつには、約20,000種類の遺伝子が含まれている
そのほとんどの遺伝子は、父親から受け継いだものと母親から受け継いだもの、2つで1組になっている
ヒトの体は遺伝子の情報を元にして作られていて、遺伝子はヒトの設計図のようなもの
ヒトが持つ遺伝子には、体をつくるための情報や体の機能を維持するための情報が含まれている

がんは大きく分けて2つの原因が掛け合わさった結果で発症すると言われていて、1つは環境要因で、もう1つは生まれつきもっている体質(遺伝要因)である
環境要因には、食生活、飲酒・喫煙などの生活習慣、細菌などへの感染、大気や生活に使用する水の質などの生活環境、放射線や発がん物質にさらされるような職場環境などがある
体質は、両親から受け継いだ遺伝子と関係している
この2つの原因を「かけ算」して、ある限界を超えたときにがんになってしまうと言われている


☆ 遺伝する乳がんはあるのか

散発性 90~95% (乳がんの母から生まれても乳がんにならない)
遺伝性 5~10% (生まれつきもっている)

乳がんや卵巣がんの発症に関係している遺伝子として、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の2つが明らかになった
BRCA1/2遺伝子に病的変異があると、そうでない場合と比べて乳がんや卵巣がんを発症しやすくなることが分かっている
乳がんや卵巣がんが多く見られる家系であっても、乳がんや卵巣がんを発症した方に必ずBRCA1/2遺伝子の変異が見つかるわけではない

最近日本人を対象にした研究結果では、BRCA1/2遺伝子の変異が検出されたのは約27%(36/135症例)で、他の国々と同程度
乳がんや卵巣がんを発症された方の既往歴や家族歴の違いによって、変異の検出率に違いがあることも分かっている
乳がんや卵巣がんの発症に関与している遺伝子が他にもあるかもしれないので、BRCA1/2遺伝子検査で変異が見つからなかったからといって、遺伝性の乳がんや卵巣がんでないと判断することはできない

BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性が、必ず乳がんや卵巣がんを発症するわけではないが、変異がない女性と比較して次のような傾向があると海外では報告されている
(1) 乳がんや卵巣がんを若い年齢で発症するリスクが高い
(2) 乳がんを発症するリスク(生涯発症リスク)は、45-84%
(3) 卵巣がんを発症するリスク(生涯発症リスク)は、11-62%
(4) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に、もう片方の乳房にがんを発症する割合は、予防的な対応を行わなかった場合、BRCA1遺伝子の変異で43.4%、BRCA2遺伝子の変異で34.6%
(5) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に卵巣がんを発症する割合は、BRCA1遺伝子の変異で12.7%、BRCA2遺伝子の変異で6.8%


☆ 子供に伝わる仕組み

がん細胞そのものは、親から子へ遺伝することはないと言われていたが、近年の研究によって、がんの発症にかかわる遺伝要因が明らかになっている
遺伝要因は、がんになりやすい体質といえ、親から子へ遺伝することがあり、家族(血縁者)の中で共有していることがある
そのため、がんの発症に遺伝要因が強く関与している場合、家族(血縁者)で複数の方にがんが発症する「がんの家族歴」が見られることがある

父親と母親から受け継いだ2つ1組で持っている遺伝子のうちの1つだけが、こども(次世代)に引き継がれる
どちらの遺伝子が引き継がれるかは、偶然によって決まるが、1/2(50%)の確率である
2つの遺伝子の片方に変異があった場合、その変異のある遺伝子がこども(次世代)に引き継がれる確率は、1/2(50%)
BRCA1/2遺伝子の変異も性別に関係なく、母親もしくは父親から、娘または息子へ、1/2(50%)の確率で受け継がれる


☆ 遺伝子検査とは

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)のがんの発症に関与しているBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に病的変異があるかどうかを調べる遺伝子検査「BRCA1/2遺伝子検査」である
(費用は約20万円)

BRCA1/2遺伝子検査は、一般的な採血によって行われ、血液に含まれる細胞(白血球)からDNAを取り出し、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異があるかどうかを調べる

BRCA1/2遺伝子検査は、対象者別に2つに分けられる
1)すでに乳がんあるいは卵巣がんを発症している方で、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の可能性がある場合
2)家族(血縁者)の中のどなたかが、BRCA1/2遺伝子検査を受けて、変異が見つかっている場合

BRCA1/2遺伝子検査を受けることを選択肢の1つとして考えているときは、遺伝カウンセリングで相談することができる
遺伝カウンセリングでは、遺伝子検査の方法や費用の説明、遺伝子検査を受ける意義、遺伝子検査で分かることや分からないこと、遺伝子検査を受けることによる利益や不利益などについて話し合われ、自分や家族が遺伝子検査を受けるかどうかを決断するための支援が行われる
場合によっては、複数回の面談を重ねて遺伝子検査を受けるかどうかの決断をされる方もいる
遺伝子検査を受けることを決めて、その結果が出たときどのように受け止めたかを確認し、今後の方針について話し合う
遺伝子検査を受けないことに決めた場合も同様に、今後の方針について話し合う

遺伝カウンセリングで扱われる内容は遺伝子検査に限定されるものではなく、気になることがあったり、乳がんや卵巣がんの遺伝が心配だったり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群についてもっと知りたいと思ったら、遺伝カウンセリングを利用することができる


☆ 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とは

乳がんや卵巣がんの発症の原因として遺伝要因が明らかになったとき、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)」と診断される
BRCA1/2遺伝子の病的変異は、家族(血縁者)で共有されることがあるため、家族(血縁者)の複数が、乳がんや卵巣がんを発症することがある
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)では、遺伝要因が関係していない一般的な乳がんや卵巣がんと比較して、次のような特徴が見られることがある
(1)40歳未満で乳がんを発症する
(2)両方の乳房に転移ではなく、独立して乳がんが発症する
(3)血縁者に3人以上が乳がんの発症者がいる(2世代以上にわたって乳がんの発症者がいる)
(4)卵巣がんの発症者がいる
(5)乳がんと卵巣がんの両方を発症する
(6)男性の血縁者に乳がん発症者がいる
(7)トリプルネガティブ乳がんである

NCCN(National Comprehensive Cancer Network)の臨床ガイドラインより
海外では、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の医学的管理として「18歳から月1回の自己検診、25歳より半年から年1回の医師による診察と年1回のマンモグラフィおよびMRIを用いた検診」が推奨されている
卵巣がんについては、リスク軽減卵巣卵管切除を選択しなかった場合に、「30歳から半年に1回のCA-125測定と経腟超音波検査を検討する」と言われている

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と診断された患者さんの乳がんの手術では、乳房温存療法が可能であってもあえて乳房切除術が選択肢として提示されることがある
その他にも、乳がんを発症する前に乳房を切除するリスク軽減(リスク低減)乳房切除術がある
年齢や出産の希望などさまざまな状況に配慮した上で、卵巣がんを発症する前に卵巣や卵管を切除するリスク軽減(リスク低減)卵巣卵管摘出術が選択肢として検討されることもある
リスク軽減卵巣卵管摘出術は、卵巣がんの発症リスクを減らすだけでなく、乳がんの発症リスクも下げることが分かっている

日本においても、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)における個別化した医療が広がりつつある
このような個別化医療の選択肢は、十分な説明を受けてから自分の自由な意思で決めることができるが、リスク低減のための予防的な手術は保険適応にならないこともあり、医療機関によってはすべてには対応できない場合がある

※今現在、日本ではそのような手術はできないが、いずれはできるようになると言われている
 まずは臨床試験扱いとして行われるため、費用はどれくらいかかるか分からない
 

☆ その他

予防としてのタモキシフェンの内服(閉経前)や卵巣切除は保険診療だが、乳房切除は保険診療外である
カウンセリングの初診料だけでも5000円程度かかる
H大HPでも20~30人カウンセリングを受けているが、検査を受けるのはその半分程度
OPEまではしないという人が多い

自分の娘や姉妹もなりやすいのか、遺伝性乳がんとは何か、どうしたら受けられるのか、という質問が多いのが現状である



アンジェリーナ・ジョリーさんはお母様や叔母様を乳がんで亡くされて、自分も遺伝性のものじゃないかと調べたところ陽性反応が出て今回の手術に踏み切ったんでしょうね
とても大変な決断だったと思います
日本でも早く、保険適用が認められて、リスク軽減予防切除ができるようになる日がくることを心から願います


※もし間違えてるところがあったらご指摘よろしくお願いしますね