和声の禁則とはボイスリーディングの工夫

コードの音と次のコードの音とを繋いでいくことをボイスリーディングと呼びます。この連結には工夫が要ります。その工夫が「和声の禁則」と呼ばれるものです。

どんな時に工夫が必要なのか

二つ以上の並立して鳴っている音の音程は良い響きであれば問題はありません。

 

同じコードの中で音を繋いでいくときの工夫はこれだけです。「禁則」はありません

 

しかし、コードが移り変わった場合はどうなるのでしょうか。状況が変わりますので「禁則」が生じることになります。

コードが変わったことを聴き手に知らせる

知らせる必要がなければ、工夫もする必要はありません。しかし、変化をつけるためにコードを変えているはずですから、コード進行の変化を聴き手に知らせた方が一定の効果は得られるでしょう。

 

さて、工夫を凝らすとすると、その工夫の範囲が問題となります。変わった後の音だけでよいのか。或いは後続の音の影響も考えるのか。

 

つまり、変わった直後の音程だけでよいのか、それに続く音程も考慮しなくてはいけないのか。それが、「連続音程」と「間接音程」の違いです。

音の範囲 … 連続と間接

音の範囲はビートによって決定されます。2/2と4/4或いは3/4の場合では違います。

 

全音符ではどの拍子でも小節の切れ目とコードの変わり目が一致しますから、連続音程だけが問題となります。

 

やや複雑になる2/2拍子で4分音符が配された場合を見てみましょう。

 

連続音程は、単純にコードの切れ目(小節の切れ目)の音同士の音程となります。

 

間接音程は、拍の終わりの音と次のコード(小節)の同じ関係の拍の始めの音との音程になります。

 

コードは連続していますから、次のコードへつながる弱拍の音程も同じ関係が成り立ち、考慮することになります。

 

これらの音同士の音程を変化させて工夫することになります。

 

効果をつける音の範囲は、要するに、どんなにたくさん音があってもコード内の始めの音と終わりの音であり、ビート内にいくつも音があっても同じくビートの始めの音と終わりの音だけ注目すればよいということです。

音程による禁則の違い

①8度(ユニゾンも同様)

メジャー、マイナー、チャーチモードともにダイアトニックコードは7つありますが、どのコードも8度の音程は当然ながら8度(1度)で全く同一です。コードが変わっても音程の変化はありません。それ故、連続8度は禁となります。

 

②5度

7つあるダイアトニックコードのうち、5度音程はⅦを除いてすべて同じとなります。そのため、8度の次に連続5度は禁となります。

 

③3、6度(その他の音程)

3、6度はコードによって長短の音程がありますから、コードの変化は明瞭です。ですので禁則は特殊な場合のみです。

並達について

並達(直行とも言います。)は連続ではないので、それほど厳しく禁則にしなくともよいのですが、耳にした時点で連続音程を思い起こさせますので、連続に次いで禁とされます。

 

厳密な書式でも、いつの間にか禁則が忘れられていることがあります。

注意点

連続音程の禁則は、あくまでもコード音の音程を問題にするので、対象となる音が一方でもコード音ではなくメロディー音であれば、意味を失います。そのような時は、全く考えなくてよいことになります。

 

また、禁則と言われると規則として守らなければいけないという印象を受けます。うっかり忘れていたは論外ですが。しかし、そうでない場合、書法の目的に反するときなど敢えて禁則を守らないこともあります。「モーツアルトの5度」などがその例ですね。

トライアドコードの基本形と第1転回形を使います

最低音にルート以外のコード音が来る場合を転回形と言います。

 

このページは対位法に必要な知識の補足記事です。対位法の記事はこちらからどうぞ。

 

Cメジャーの場合で見てみます。

基本形

減3和音は使いません。

第1転回形

長(Ⅱ、Ⅲ、Ⅵ、Ⅶ)短(Ⅰ、Ⅳ、Ⅴ)ありますが、全て使うことができます。

使うコードの規制

始めの小節と終わりの小節

Ⅰのコード基本形を使います。

終わりの1つ前の小節

チャーチモードは自由です。

 

メジャー、マイナーはⅤ、Ⅶを使います。

 

2分・4分音符を使う場合にはⅡのコードも使うことができます。ただし、Ⅰへ向かう場合、導音を経過音として使わなくてはいけません。

 

は経過音

<2分音符の場合>

<4分音符の場合>

c.f.が上下異なりますが、同一です。解釈の違いにより別のコードを割り付けることができるという例です。

それ以外の小節

自由です。

チャーチモードでアッパーに定旋律を置き、二分音符でベースにメロディーをつける

チャーチモードとしてリディアンを使います。

定旋律

「パリ音楽院の方式による 厳格対位法」(山口博史著)

定旋律集(p.105)リディアンから取ってみました。

 

11小節です。

 

これをアッパーパートにして、ベースパートをつけていきます。

ベースメロディーの付け方

うっかりしそうな点

4小節目、Gに対しての3度音Bです。根音をGと見てⅡとうっかりやりそうですが、普通はBを根音と見ます。するとⅣのコードとなります。リディアンのⅣは減3和音となります。3度音程は使えません。

 

手直しをします。滑らかな始まりが作りにくいです。教本の定旋律にふさわしい難易度です。

 

なかなか良い形ができません。

完成

  青:8度 紫:5度 黄緑:3度 緑:6度 橙:メロディー音

 

ボイスリーディングについてはこちらをどうぞ。

 

 

ミス等がありましたら、コメントでお知らせください。

 

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アッパーに定旋律を置き、二分音符でベースにメロディーをつける

定旋律を作る

今回は定旋律を「パリ音楽院の方式による 厳格対位法」(山口博史著)という本の中にある範例(p.20)Aマイナーから取ってみました。

 

9小節です。

 

これをアッパーパートにして、ベースパートをつけていきます。

ベースのメロディーをつける

始めと終わりの小節

始まりは、ベースですからⅠ音しか選べません。

 

8度音です。次の小節の音選びでは、連続8度に気をつけましょう。また、強拍には音がありませんから5度音が来ても大丈夫です。

 

終末は、7小節目にⅠ音がありますが、掛留を使わずに作ってみます。

 

8小節目、順当には2和音を使ってもよいので、Ⅴ、ⅦとなりますがⅤだけで可能な右端のような繋ぎ方もできそうです。冒険をしてみます。

2小節目以降

  青:8度 紫:5度 黄緑:3度 緑:6度 橙:メロディー音

 

2小節目、強拍には5度が使えます。並達の規制を避けるため、反行になるような音高で選びます。

 

ボイスリーディングについてはこちらをどうぞ。

 

 

弱拍にはメロディー音を入れ順次進行が長く続くように繋いでいきます。

完成

 

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Fマイナーの進行可能音

マイナー(短旋法)はメジャー(長旋法)のスケールに加えシ#とラ#の音も使えるようになっています。

定旋律(c.f.)がバスパートの場合

シを導音にするためE♮が短旋法本来の音となっています。このため発生する増音程を解消するためにラもD♮になることがあります。

 

図では一般的によく使われる(本来の)音を黒で、それ以外の音を緑で示してあります。

 

ナチュラルスケールでは減3和音となるⅡのコードでは、Dナチュラルにすることで、基本形でも使えるようになります。

 

Ⅶのコードでは、マイナー本来としては減3和音として6の和音で使わなくてはいけませんが、ナチュラルスケールのままで基本形で使うこともできるようになっています。

 

縦の旋律ではかなり自由が利きますが、横の旋律のときには、増音程の発生に気をつけなくてはいけません。

定旋律(c.f.)がアッパーパートの場合

3度音と6度音の共存はできません。3度音と6度音の作る音程は4度音程で第2転回形ができてしまいます。1小節に2つのコードを設定しなくてはならなくなります。

 

6度音に対しては8度音を、3度音に対しては5度音とを組み合わせます。これで2つの音でも同一のコードを保てるようになります。

 

シ♮とラ♮が使えるので、どの音でも4つの選択ができますが、増音程進行にならないように注意が必要です。

音の繋ぎ方

8、5度音程は反行となるように前の音と繋ぎます。

 

3、6度音程音は並行でも反行でも繋ぐことができます。