和音の構成音と短9度をなし、和音の機能を阻害する音

メロディーにハーモニーをつけるという伝統的な作曲法ではなく、コードにメロディーをつけるという作曲法が、ジャズ以降広く普及しました。
ポピュラー作曲に欠かせない、コードにメロディーをつける手法用の理論が、所謂「コード理論」です。
コード理論も従前の「和声法」も全く同一の作曲概念を用います。コード(和声)と機能です。ですから、2つ理論は全く同じものです。
違うのは、メロディーにコードを付けるのか、その逆かです。技法の違いです。
 
前置きが長くなりましたが、定義に従って意味を正確に再現しましょう。スケールとコードが決まっていないと話にならないので、スケールはハ長調とし、アボイドを探す和音(コード)はⅠ7とします。

短9度の音程

テンションの置かれる音域は付加音ですから、コードの上1オクターブの音域です。
 
付加音■  コード音
 

 

その中で、短9度の音を探します。Ⅰ7の和音構成音は4つあります。C、E、G、Bです。

 

Bに対する短9度上のCは、領域を外れますからBの直上のCのみが該当音です。これは短2度音程です。この時点でアボイドではありません。ただし、曲中で実際に短9度のCを鳴らせば、機能阻害音となりえます。

 

短9度に該当する音は、D♭、F、A♭の3つです。

和音の機能の阻害

 

Ⅰ7の機能は、トニックです。トニックの中にドミナントへ解決するような音の進行(ドミナントモーションと呼びます。)があれば、そのもととなる音はドミナントとなり、コードのトニックと機能が衝突することになります。これが、機能の阻害です。

 

Ⅴ7の和音構成音は、G、B、D、Fです。進行規制音はBとFです。

 

B→C の進行は解決進行です。ですが、Bは短9度ではないために許されます。

F→E の進行は解決進行です。Fは短9度音です。アボイドとなります。Fからの解決進行は避けよということになります。「Fを使うのを避けよ」ではありません

 

3和音のVならば、FはⅤにはありませんから、F→Eの進行は普通の進行です。

つまり、3和音だけで曲が作られるならば、アボイドに該当する音は現れません。

ところが、Ⅴ7を使う場合には、であってもF→E進行は機能阻害の進行となります。

 

ジャズ等では4和音を使う進行が普通です。ジャズ以降に定番となったコードにメロディーをつけて作曲する方法では、コードの機能とメロディー自身が進行して作り出す機能との違いに気をつけなくてはならなくなりました。アボイドとは、メロディー上で機能の不整合を誘発する可能性のある音に付けられた名前です。

音そのものが使えない、修飾音としてしか使えないのであれば、avoidではなく、disableとかrefrainなどと呼ぶはずです。

 

4和音では、アボイドが生じます。使わないのも回避策ではありますが、例えば、Ⅰ7でファを使っても、ソへ上行するメロディーならば、単なる2度上行で問題はありません。メロディーをつける場合、アボイドだからと言って、メロディーを修正するばかりではなく、コードの付け替えも頭に入れて柔軟に対応しましょう。

演習

Ⅰ7以外のコードでアボイドを調べてみましょう。また、他の調でも同様に調べてみましょう。