バイオス(UEFI)を起動させ、各種設定をする機会はそうそうありませんが、パソコンに新しい機器を追加した場合や特殊なアプリケーションをインストールしたようなときには、必須とも言えるでしょう。

 

バイオス画面の出し方(Biosの起動方法)

パソコン起動時に出す

パソコンの起動ボタンを押すと一瞬バイオスのロゴが出るので、間髪を入れずF2(またはDelete)キーを押します(連打する場合もあります)。

 

高速起動に設定している場合、この方法はできません。

Windowsの終了オプションで出す

①タスクバーのWindows(スタートアイコン)を右クリックします。

 

 

②「シャットダウンまたはサインアウト」をクリックします。

 

③「再起動」を「shift」キーを押しながらクリックします。

 → パソコンが再起動します。

 

再起動後

④「トラブルシューティング」をクリックします。

 

⑤「詳細オプション」をクリックします。

 

⑥「UEFIファームウェアの設定」をクリックします。

 

⑦「再起動」をクリックします。

 → パソコンが再起動し、バイオスの画面が出てきます。

Asusの例

メモリーは、メモリースロットに挿しただけで、仕様通りの性能が出ているのでしょうか?

 

メモリーは性能アップを実感するのが難しいため、性能を引き出せないまま使っていることに気づきません。

 

メモリーは大別して、JEDECの標準規格に準拠する安定動作が売りのスタンダードメモリーと高クロックが売りのオーバークロックメモリーの2種類が存在します。

ビジネス用途ではスタンダードメモリー、ゲーム用途ではオーバークロックメモリーという感じでしょうか。

 

市販されているメモリーは、スタンダードもオーバークロックも混在しています。初心者では違いに気が付きません。購入したメモリーをただメモリースロットに挿しただけでは、製品の表示通りのクロック数では動いていないことがあります。

 

中級者でも、 メモリーを増設するときなど選定に苦労することになります。スタンダードメモリーを購入したつもりで、実は、オーバークロックメモリーだった、ということもよくあります。

 

オーバークロックメモリーには、その名の通りネイティブのクロックスピードを上げたもの以外にネイティブのレイテンシを下げたものも入ります。

 

メモリーの性能と動作

オーバークロック(OC)メモリー

オーバークロックメモリーとは、メーカーが独自にJEDEC規格にはない高いクロックに設定して動作確認が取れたメモリーです。

 

新登場のDDR5は、2020年にメモリーの標準規格であるJEDEC規格が発表されました。新といっても規格設定から4年、製品販売から3年経過しました。DDR4は規格発表から10年目となります。

 

DDR5はメモリークロック、4000(32000)~6400(51200)MHzが標準規格、

DDR4はメモリークロック、1600(12800)~3200(25600)MHzが標準規格

となっています。 (帯域幅:単位MHz)

 

オーバークロックメモリーとは、この標準規格を超えるクロック周波数のメモリーですが、単純ではありません。

 

DDR4-3600(PC4-28800)やDDR5-7200(PC5-57600)は標準規格の最大クロック数を超えていますから、オーバークロックメモリーしかありません。

 

しかし、クロックアップして、

DDR4-1600(PC4-12800)を、DDR4-2666(PC4-21300)にしたものや

DDR5-4800(PC5-38400)を、DDR5-6400(PC5-51200)にしたものも

オーバークロックメモリーです。

 

メモリークロックを見ただけでは、オーバークロックメモリーかどうかは分かりません。メモリーの仕様の詳細を見ないと(見ても)そのメモリーがスタンダードなのかオーバークロックかは分からないことがあります。

 

メモリーの動作

SPD:Serial Presence Detect

メモリーの情報をマザーボードに伝え、パソコンを起動させる仕組みのことをSPDといいます。

メモリーにはRAMとともにメモリーを動作させるのに必要な情報(プリセット)が書き込まれたROMが入っています。

 

SPDの中には動作クロックの情報が入っています。クロックスピードが、

JEDEC標準    →  SPD speed

オーバークロック → Tested speed  と表示されます。

 

定格電圧は、DDR4では1.2V、DDR5が1.1Vです。

定格であれば、SPD voltage、オーバークロックの場合、Tested voltage です。

 

マザーボード側でもメモリーのクロックスピードは制限を受けます。インテル製のチップセットを採用しているマザーボードではオーバークロック非対応のものもあり、これらへ高クロックのメモリーを挿してもマザーボードの許容するクロックスピードでしか動作しません。

こうした場合に対処するため、メモリーには複数のSPDが同梱されており、マザーボード側からのクロックスピードの制限に対応して、メモリーがマザーボードの互換性リスト(バリデーションリスト)にあれば、メモリーをマザーボードに挿すと対応するSPDが読み込まれ、PCが起動、メモリーが動作するようになっています。

メーカーによってはオーバークロックのプリセットであっても、SPDとして登録することで動作可能にしている製品(定格電圧の場合)もあります。

 

オーバークロックメモリーは、バイオスでクロックスピードを設定しない限り、マザーボード側で選択したSPDのクロックスピードとなり、製品で謳っている速度では動作しません。

 

メモリーとマザーボードの相性を判断する場合には、メーカーの製品情報のページでメモリーとマザーボードの互換性の欄をチェックします。

動作スピードの確認

クロックスピードをOS上で確認するには、タスクマネージャーのパフォーマンス、メモリーを実行します。

動作クロックの確認はメーカーごとに違いはありますが、バイオス画面でも見ることができます。

オーバークロックの設定

インテル製のCPU、チップセットのMB(マザーボード)の場合は、バイオスのXMPの項目を Disabled から Enable に変更します。

 

AMDの場合には、最近のマザーボードであれば「EXPO」の項目を、

古いマザーボードでも、

ASUS製であれば、「D.O.C.P.」、

Gigabyte製であれば「E.O.C.P.」の項目を Enable に変更します。

メモリーに複数のオーバークロック設定がある場合には、クロックスピードを選択できることもあります。

メモリーのマニュアル設定

マザーボード(チップセット)がオーバークロックに対応している場合にのみバイオスで設定することができます。非対応の場合にはメモリーのマニュアル設定が開きません。

 Frequency  この欄にはクロックスピードを入れます。

 Voltage  この欄には電圧を入れます。

 Latency  この欄にはレイテンシを入れます。

項目と設定方法はメーカー毎に違いますから、各メーカーのマニュアルを参考に値を設定します。

マニュアルで入れた値が最優先となります。

注意点

相性

マザーボードとの相性問題は、その特性からオーバークロックメモリーの方がスタンダードメモリーよりも発生しやすいようです。

保証

現在売られているメモリーは永久保証(条件付き)のものがほとんどですが、メーカーの仕様にある動作クロックでの運用がメーカー保証の対象です。

メーカーの仕様クロック以上に速度を上げたり、電圧を上げたりして使っている場合に起きた故障は保証外となります。レイテンシも独自に(詰めて)設定した場合も同様です。

 

XMPやEXPO設定で動作させる場合には、保証の範囲です。(XMPやEXPOはメーカーが設定しています)

まとめ

オーバークロックメモリーのクロックアップは、ユーザーがバイオスで設定する必要があります。

 

独自のオーバークロックで安定して大幅な性能アップができた場合、電圧のアップが伴います。電源周りの貧弱なマザーボードでは、はなから実行は不可能です。強力な電源周りを持つマザーでもマザーとメモリーの寿命を縮めていることは理解しておきましょう。

 

メモリーのオリジナルオーバークロックは、高性能なパソコン(ハイエンド)での性能アップの最後の手段です。ミドルレンジ以下のパソコンで行ってもほぼ効果はなく、無意味です。メーカー保証範囲内に留めるべきでしょう。

メモリーが高速に動くどうかは、クロックスピードだけでは決まりません。実際にデータにどれだけ速くアクセスできるかが重要です。

 

レイテンシ

 

命令を受けてから実際の行動が起こるまでの待ち時間のこと

メモリータイミング

メモリーの仕様には、下のように、CLの後に数字を4つ並べたものがあります。この数字の列は、メモリータイミングを表しています。

メモリータイミングはたくさんあり、重要度から3つの群に分けられています。そのうちの第1群のファーストタイミング4つです。

CL 18-181843

4つの数はそれぞれのレイテンシです。単位はclockです。

- clock -

メモリータイミングでのクロックとは、メモリーのクロック周波数の1サイクル分です。

実時間は、 1÷クロック周波数 で求められます。

それぞれの数の意味

ファーストタイミング

 tCL(CAS レイテンシ)-tRCDtRPtRAS 

tCLCAS(Column Address Strobe Latency)

  | read/write命令 → | データ転送…

最も重要なタイミングです。

Column位置アドレスを指定し、データの読み書き(read/write)を準備する時間。

単にレイテンシという場合にはこの値を指します。

「CL=18」と簡略に表示されているものもあります。

 

tRCD(Row Address to Column Address Delay)

 |activate命令 → |read/write命令 …

データを読み書きするバンクとRow(行)位置アドレスを指定するのにかかる時間。

 

tRP(Row Precharge Time)

  | precharge命令 →|

データ処理の終わったRow位置アドレスへデータの書き戻し(=Rowアドレスの選択を解除)にかかる時間。

 

tRAS(Raw Address Strobe Latency)

 |activate命令 → read/write命令 データ転送 precharge命令 → |

バンクとRow位置アドレスを指定し、データの読み書きが終わるまでの時間。

 

ファーストタイミングに関連して以下のレイテンシも触れておきます。

 

tRC(Row Cycle Time)

 |activate命令 → read/write命令 データ転送 precharge命令 →|

データの読み書きのRow(行)1サイクル分の時間。

 

※メモリー(チップ)の中の位置は、Row(行)とColumn(列)で順に指定されます。

 Row(行)位置アドレスの管理は〔メモリー〕バンク(ページ)が行います。

 バンク → Row → Column (何ページの何行目の何番目か)

 

RAMチップ

 

CR:命令(コマンド)の発行時間(コマンドレート)

CR(Command Rate)コマンドレート

コマンド(命令)発行の際のクロック数です。

1Tとか2Tで表示されています。Tの代わりにNで表示されることもあります。

命令(コマンド)を送るには1クロック使います。1Tは1回送っていることを表し、2Tならば2回送っていることを意味します。

True Latency(真のレイテンシ)

実際にかかる時間(True Latency)は、計算で求めます。

 

実際にかかる時間=(メモリータイミング)÷(クロック周波数)です。

クロック周波数

クロック周波数はメモリー周波数の1/2です。

実際のメモリーでは、きっちり1/2の値にはなっておらず、製品ごと実際の駆動している周波数で表示されます。

計算用にはメモリー周波数を使う方が分かり易いので、

 

CL × 2000 ÷ メモリー周波数(ナノ秒) を使います。

メモリーの性能はクロック周波数の高さだけでは決まらない

DDR4-2666 は、標準では CL=19 です。

19 × 2000 ÷ 2666 = 14.25… → 14.25ns(ナノ秒)

 

DDR4-2666 より高クロックな DDR4-3200 は、標準では CL=22 です。

22 × 2000 ÷ 3200 = 13.75 → 13.75ns

 

DDR4-3200 は、DDR4-2666 よりも高速であることが分かります。

 

では、DDR4-2666 のレイテンシを1つだけ減らしてCL=18 にすると 

18 × 2000 ÷ 2666 = 13.50… → 13.5ns となります。

 

13.5ns      >    13.75ns

 

CL=18 DDR4-2666 > CL=22 DDR4-3200

 

CL=18 DDR4-2666 のメモリーは、タイミング的には、CL=22 DDR4-3200のメモリーと同等以上の性能を持つことがわかります。

 

 

メモリーの性能は実際にかかる時間真のレイテンシも含めて比べないと実力は分かりません。