ロッド・スチュワートの4作目となるソロ・アルバム「ネヴァー・ア・ダル・モーメント」です。英米はじめ、世界中で大ヒットした前作から1年、その成功を確たるものとするために大変重要なアルバムでした。結果は期待に見事にこたえる大ヒットとなったのでした。

 当時の日本盤には「欧米で予約オーダー100万枚を突破!驚異のアルバム!!」と刻印されています。ついでに「いま、この瞬間、燃える心にめぐりあう!!」とのコピーがついていますが、こちらは誰にでも当てはまりそうな少々お手軽な文句ですね。

 それはともかく、本作品は大ヒットした前作のフォーマットを踏襲したようなアルバムになっています。とりわけ、英国で1位に輝いたシングル・カット曲「ユー・ウェア・イット・ウェル」が顕著です。作曲はロッドとマーティン・クイッテントン、「マギー・メイ」組です。

 この曲はアコースティック・ギターとマンドリンを使っていて、まさに「マギー・メイ」第二弾の様相を呈しています。しかも、アルバムではこの曲の前に、「間奏」と名付けられたロン・ウッドの兄アト・ウッド作の短いギター・ソロ曲が置かれています。

 しかし、もちろんそれが悪いわけではありません。この頃のロッドのボーカル・スタイルからすれば、アルバム全曲をこうした曲調で埋め尽くしてもよかったでしょう。こうしたスタイルをこよなく愛するファンも多いはず、むしろもっともっと聴きたいくらいですね。

 アルバムはカバー曲とオリジナル曲が半々であるところも前作同様ですし、バックを固めるミュージシャンもほぼ同じです。安定のフォーマットにのって、自身の音楽をさらに深堀するロッドです。タイトルも「一瞬たりとも退屈させない!」という意気込みを感じます。

 アルバムはご機嫌なロック曲「トゥルー・ブルー」から始まります。この曲はフェイセスがバックを務めており、まるでフェイセスのアルバムに入っていてもおかしくない楽曲です。ソロとバンドの使い分けがだんだん曖昧になってきていることを感じます。

 この曲を含め、A面4曲のうちの3曲はロッドとロン・ウッドの共作で占められています。しかし、あとの2曲はさほどフェイセス然としていないところが面白いです。B面にはオリジナル曲は1曲のみ、それが件の大ヒットした「ユー・ウェア・イット・ウェル」です。

 カバー曲ではまずボブ・ディランの「ママ、ユー・ビン・オン・マイ・マインド」です。またまたディランのカバー、それもディラン・バージョンは当時はまだ未発表だった曲です。相変わらずの選曲センスです。ロッドはディランの曲を英国風にアレンジするのが本当に得意です。

 B面にはロン・ウッドがアパートをシェアしていたこともあるジミ・ヘンドリクスの「エンジェル」、エッタ・ジェイムズで有名になったブルース曲「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」、そしてサム・クックの名曲「ツイストで踊りあかそう」です。ロッドの出自が知れるいい曲ばかりです。

 本作品も英国で1位を獲得し、米国でも2位と大ヒットを記録しました。フェイセスとの関係がどうしても気になってしまいますが、この頃のロッドのボーカルの素朴な魅力が十二分に発揮された、もう一つのアルバムとして、渋い魅力を放っていることは間違いありません。

Never a Dull Moment / Rod Stewart (1972 Mercury)



Tracks:
01. True Blue
02. Lost Paraguayos
03. Mama, You Been On My Mind
04. Italian Girls
05. Angel
06. Interludings 間奏
07. You Wear It Well
08. I'd Rather Go Blind
09. Twistin' The Night Away

Personnel:
Rod Stewart : vocal, guitar
Ronnie Wood : guitar, pedal steel guitar, bass
Martin Quittenton : guitar
Ray Jackson : mandolin
Gordon Huntley : steel guitar
Ronnie Lane : bass
Spike Heatley : bass
Micky Waller : drums
Kenny Jones : drums
Neemoi "Speedy" Aquaye : congas
Dick Powell : violin
Ian McLagan : organ, piano
Peter Sears : piano, celeste
Brian : piano